第二話@山田 花子の病院生活 #Ⅰ#
第二話に突入しました。
「以上で520円です。」
売店でお菓子、飲み物、ノート、鉛筆を買った。これがあれば、大丈夫。私は水無月さんにもらった、千円札でお金を払って病室に帰った。
病室には太郎(仮)がスナック菓子の袋を開けている所だった。これから、ずっと、一緒なのか…と思うと顔が勝手にしかまるので、それをどうにか我慢して、私はベッドに腰をかけた。
「あのぅ、…太郎(仮)さん。」
私の小さな呼びかけにピクリ、と太郎(仮)が反応した。即座に私の隣に座ってくる。
「なぁに? 花子(仮)ちゃん。」
私は太郎(仮)をベッドの端のほうに押しやりながら質問した。
「太郎(仮)さんはいつ、目が覚めたんですか。」
太郎(仮)は私の質問にサラッ、と答えた。
「二ヶ月前。僕の体に異常事態が起きたとき。呼吸が荒くなり、熱が出るし、湿疹も出てきた。その瞬間だった。僕の息が止まったんだって。そして、目が開いた。もう、先生は僕が死んだ、と判断した時に。水無月さんが教えてくれたんだ。」
太郎(仮)はベッドから丸いすに移動して、話した。太郎(仮)もまだ、体力はないらしく、点滴をつけての移動だった。
「そうなんだ…、私のときは?」
「花子(仮)ちゃんもだよ。呼吸が荒く、熱が出て、湿疹がぽつぽつと出てきてた。ただ、僕と違ったのは死、と判断されてしばらく、目が開かなかったこと。先生は僕のことがあったから、まだ、完全な死、とは判断されなかったんだ。で、先生達が部屋を出て、しばらくすると君の目が開いたんだ。」
ニコニコといつもの表情の太郎(仮)、だったのだけど、さきほどの話を聞く限り彼も私と同じ気持ちなのだろう。しかも、私が目覚めなかった二ヶ月間、彼は一人だったのだ。私の時には太郎(仮)が居たけれど。
「ね、花子(仮)ちゃん、僕さ、いつかこの病院を出て行くことを考えると、僕と君が一緒に出て行くのが妥当だと思うんだ。一緒に記憶を探してくれる?」
太郎(仮)の目が真剣になる。私はふぅ、と息をついて、微笑んだ。別に微笑む気はなかったのだけど、何か優しく快く返事をするためには微笑むのが一番、だったから。
「もちろん、喜んで。」