第一話@ #Ⅰ#
私はもう一度、記憶喪失だと元気良く発表する太郎(仮)をまじまじと見た。
太郎(仮)はどこかの制服を着ている。ちなみに、ブレザーだ。そして、どちらかといえば、可愛い方の美少年ではないだろうか。
「どうしたの? そんなに見つめちゃって…照れちゃうなぁ。」
両手を頬に当てて、恥ずかしそうにもじもじする。私ははぁ? とわざわざ、声を出して疑問を声に出す。
太郎(仮)はチェッと舌打ちをした後、突然、真面目な顔になって立ち上がった。丸椅子がガタッと音をたてた。
「花子(仮)ちゃん、ちょっと待っててね。先生を呼んでくるから。」
太郎(仮)が病室から出て行くのを見届けるとふむ、と病室を見渡した。真っ白な壁に私が寝ていたベッドの反対側に一つあるだけ。本当にだだっ広い部屋だ。反対側のベッドには太郎(仮)が寝ていたのだろうか。
しばらく、ベッドの上からキョロキョロと周りを観察していると病室の横開きのドアが静かに開いた。そして、太郎(仮)と黒縁めがねの白衣の男性とナースの格好をした女性が入ってきた。
「先生、さっき、目が覚めて起き上がったんです。俺、ちょっと、焦って早く、先生に報告しようと思ったんですけど…。質問攻めだったもので。」
太郎(仮)の報告に無愛想そうな男性が軽く、頷いて渡しに近づいてきた。まじまじと男性は私を観察した後、ふむ、と呟いた。
「どうやら、顔色も良いし、健康状態は良いようだ。田中君とまったく、同じだな。三年も眠っていたとは思えない。」
男性の言葉に私はパカッ、と口を開いて、閉じなくなった。パクパクと何かを言おうとして何もいえなかった。
「先生、どうしましょうか。点滴は必要ないですか? でも、やっぱり、このまま、点滴をつけたままの移動としておいたほうが良いでしょうか。田中君と同じように外出は控えておきましょうか。」
女性の言葉に男性はそうしよう、と頷いて私の方に向き直った。
遅くなってしまい、すいません。
次回の更新はいつになるかは謎ですが、どうぞ、宜しく。