第一話@山田 花子(仮)と田中 太郎(仮) #zero#
はじめまして、葉山 樹と申します。
どうぞ、よろしくお願いします。
ある日、私、山田 花子(仮)は記憶喪失になってます。いや、だからこそ、(仮)が付いてるんですけど。さて、この目の前の人は誰なんでしょうか。なーんとなく、ここは病院っぽいですけど…ね。私は真っ白なシーツのベッドに横たわってたし、本当にさっきまで。医者っぽくない普通のどっかの制服を着た男が一人。
「あのぉ…誰ですか。」
私のおどおどした質問に男が首をかしげた。
「あれ? 覚えてないの?」
男の顔はニコニコと笑っている所からして可愛らしい。私はその笑顔に苦笑いを返した。
「ご、ごめんなさい。覚えてません。えーっと、私の名前はどうして、山田 花子(仮)なんですか?」
枕もとの私の名前らしきものが書いてあるプレートを指差した。そこには少々、丸っこい文字で山田 花子、の横に(仮)が書いてある。これは確実におかしいだろう。
「…んーっと、知らない…。」
可愛らしく指を頬に置いて首をかしげた。私はガクッと肩を落とした。どうやら、彼は私と知り合いではなさそうだ。
「じゃあ、あなたのお名前を教えていただいても?」
私のまた、おどおどの質問に男が微笑んだ。白い歯を見せて可愛らしく質問に答えてくれた。
「田中 太郎(仮)で~っす! よろしくネ。花子(仮)ちゃん。」
私はまたまた、ガクッと肩を落とした。一気に男がチャラくみえる。
「えっとぉ、ど、どうしてあなたも(仮)が付いてるんですかね…?」
私の尋ねに男が更に元気良く言った。
「記憶喪失、だからでーすっ!!!」
「ま、まじか…。」
初めてなものでぎくしゃくですけど、どうでしょうか。
むぅ…、大丈夫ですよね。たぶん、はい。
次回もよろしくお願いします。