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王立魔法学院の司書  作者:
長い一日
8/21

状況はなんとなく解りました。……で?

「……つまり、あなたは学生で、本の整理を得意としているわけですね?」

 あたしの話を聞き終えたエリックは、宙に視線をさまよわせた後、深い溜め息を吐いて確認するようにそう言った。

「得意、というわけではありませんが、他の生徒よりは多少詳しいと……」

「では、たぶん、それでしょう。あなたが引っ張り込まれた条件は」

「…………は?」

 条件?

「さっきの場所見て解ったかと思いますが、私、今、本の整理整頓に困っておりまして。思わずぼやいてしまったんです。本を整理する人手が欲しい、って」

 そんな、理不尽な。

 だったら、なんでプロである松沢先生じゃなくて、多少詳しいとはいえ全くの素人のあたしが喚ばれるのだ。

 松沢先生が三十五歳のおっさんだからか?

 まて、松沢先生のとこ、赤ちゃん産まれたばっからしいから、喚ばれなくてよかった、と思おう。うん。

「…………それで?」

「たぶん、それを聞いてた()がいたんでしょうね。それで、あなたがここに引っ張り込まれた、のではないか、と」

「引っ張り込まれた……」

 ……そんなに簡単にできるものなんだろうか、異世界召喚。

 いや、今の話聞くと、『喚ばれる人の条件』は、この人の意向によるものらしいけど、『喚ぶこと』自体にはこの人の意志も力も関わっていないような……

 いやむしろ、単に愚痴をこぼしたくらいで、世界を超えて人を喚ぶようななにものかを従えている方が問題なんじゃないのか?

「本当に、申し訳ありません。そういう訳なので、今の私の知識と力では、あなたを元の場所に帰してあげることはできません」

「帰、れ、ない?」

 状況が状況だし、テンプレでもあるので、そう言われるのは覚悟してた。でも、あっさりと、他人事のような言われ方をされると、何か腹が立つ。

「あ、えーと、とりあえず、あなたをここに引き擦り込むのにかかわったモノたちには、その時の状況を保全しておくように指示は出しましたので、術の解析ができれば、あるいは返すことができるかもしれません。……あくまで、希望的観測ではありますが」

 それでもいちおう、帰そうという努力はしてくれるようだ。

「ところで、ですね。ここはごらんのとおりごちゃごちゃと足の踏み場もないような状態なので……」

 言われて辺りを見回す。

 ……足の踏み場もない、というほど散らかってはいないようだけど?

 首を傾げてみせるとエリックは言い直した。

「あー、ここベッドが一台と、寝具が一組しかなくてね」

 あ、寝場所の話か。うん、何歳か知らないけど、男の一人暮らし(使い魔と思しき何かはいるみたいだけど)に女の子が泊まり込むわけにはいかないよね!

「食事も(面倒なんで)ベッドでしているような状況なんですよ」

 そういえば、今、お茶を出すために、本だの書類だの何かの道具だのを適当な感じで移動させてたっけ……

 何かボソッと付け加えられたひとことは、聞かなかったことにしよう。

「で、部屋の数だけはふんだんにあるところに心当たりがあるので、そちらに移動しませんか? 食事もここよりはずっとましなものが出されると思いますので」

 そう言えば一つしかない窓から見える外は薄暗くなっている。いろいろあったせいでか忘れてたけど、小腹が空いたような気もする。

「あ、はい。申し訳ありませんが、仲介お願いします」


 ……で、『転送陣』とやらを使って連れてこられたここは……

 長ーい廊下を延々歩いて辿り着いたここは……

 やたら豪華な居間みたいな部屋を抜けてきたここは……

 いったいどこなのー!


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