本にまみれて暮らすのが夢でした。……が。
右を見ても壁一面の本棚。
左を見ても壁一面の本棚。
真正面も壁一面の本棚。
さらに本棚に収まりきらない本が床にあふれてる。
なあんて素敵な……
……いやいや。現状を認識しろ、自分。
なんで目の前にある本たちは、みんな茶色っぽい革装丁なんだ?
それに、匂いも嗅ぎ慣れた紙とインクの匂いじゃないし。
一冊や二冊ならレトロでステキ、って思うとこだけど。
そういや、床もなんか見慣れない……石? に、なんか模様が描かれてる。
その床に思いっきり膝ついてるけど、ぶつけたような気配はない。
それに、この明かり。少なくとも見慣れた蛍光灯のじゃない。だって、影がどこにもできていない。
少なくとも、うちの学校の図書室の書庫じゃない。
「***?」
不意に後ろから声を掛けられた。いや、後ろに誰かがいるのは、薄々感じてたけど。
おそるおそる振り返ると、そこには、灰色のチュニックの長い袖をまくったロン毛の少年が、机の上に積み上げた本の上に手を置いて(崩れそうになるのを押さえて?)佇んでいた。……うん、机の上も本でいっぱいだし、後ろの壁も、ドアがある部分を除いて、一面の本棚だ。
どこかにメガネを落としてしまったせいで表情はぼんやりとしか判らないけど、どうやら彼もなんか戸惑っているような雰囲気。
「***、****?」
……うん。お約束の『チート』ってやつはついていないらしい。少年も『目の覚めるような美少年』ってわけでもない(ようだ)し。ちょっと残念。
それにしても、言葉が通じないのは困るなあ。
こんなに本があるのに、読めないってことだしな。