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王立魔法学院の司書  作者:
長い一日
12/21

着替えを用意されました。……あとは晩ご飯食べて寝るだけ、なんですよね?

「身長の割には胸あるわねー。あ、そうだ。何歳(いくつ)?」

 着ているのが男性(エリック)の服なので、レナ魔導師長に連れられて女性の服に着替えるために別室に移動している。

 ここで、『いくつ?』という問いに胸のサイズを答えたら……たぶん通じないんだろうな。単位とか、ブラのカップサイズとか。

「……十六、です」

 なるべく落ち着いた声で応えようとしたのに、レナ魔導師長は『かわいいー』と身悶える。

 あたしの地声は高い。嫌な言い方だが、いわゆる『アニメ声』『萌えボイス』というやつだ。高い分よく通るので、伝達事項がある時などは重宝される。二年生なのに書庫の案内をやらされたのも、たぶんそのせいだ。

 エリックが普通に対応してくれていたので、こちらでは珍しくないのかと思ったのに。

 あたしは着せ替え人形になる覚悟をしつつ、そっと溜め息を吐いた。


「十六かぁ……じゃあ、この辺は除外ね」

 そう言って、テーブルの上の一角に並べられていた数枚の服を取り上げ、脇へ除ける。

 こちらの服は、一見洋服と同じように見えるけど、要所要所に紐を通せるようになっていて、サイズが調節できる。……まあ、一番外側に見えるのが床を掃きそうなアレだし。

「何色が似合うかしらねー。髪の色が黒だから、明るい色の方が映えるわよねー」

 中に着る生成りのチュニックのような服を着せ付けたあと、レナ魔導師長はずらりと並べた中着と上着の選定に入った。

 着替え終わったら食事、ということになっているので、なるべく早く決めてもらいたいな……


「ふふ。うんざりって顔してるわね? でも、丸洗いされないだけましなのよ?」

 顔映りがどーの、刺繍がどーの、と、とっかえひっかえ体に当てられた後、やっと決まったらしい組み合わせの服を着せつけながらレナ魔導師長が言う。

「……丸洗い?」

 どういう状況か、なんとなく想像はつくものの、恐ろしげな響きを持つ言葉に首を傾げる。

「そう。寄ってたかって裸に剥かれて、ざぶざぶ洗われるのよー」

 うふふふふ、と低く笑いながら手際よく服を着せつけていく。

 想像通りの状況だけど、それを語るレナ魔導師長の目が遠い。

「皮が剥けるんじゃないかと思うくらいごしごしこすられてー、呼吸困難なほどお湯掛けられてー、首の骨が折れるんじゃないかと思うほど髪の毛引っ張られてー」

 ……受動態で話してる、ってことは、経験談なのかな?

「洗い終わった後は何枚もの布でごしごしこすられるのー」

 ……この世界には『ふわふわバスタオル』は存在しない、と。脳内にメモしとこう。

「髪を乾かすのが一番大変なのよー……って、あなたは楽そうね」

 はあ。ぱっと見男の子に見えるショートヘアですから。冬場はともかく、夏はタオルドライで十分です。ここにはふわふわタオルはなさそうですが。

 ……でも、エリックもジルナルド殿下も長めの髪だよね?

 髪長ければ女性とは限らないのでは?

 途中ですれ違った人たちはどうだったっけ?

 ……胸から上が視界に入らなかった気がする。むしろ足元しか見ていなかったっていうか……

 まあいいや。その辺は長期滞在が確定してから改めて考えれば。

 それよりご飯だゴハン。

 どんなメニューかなー。やっぱりコース料理? ナイフやフォークがずらっと並ぶのかなー。

「さあできた、っと。あとはこの髪をまとめて、軽くお化粧して……」

 できた、と言いながらもあちこちにある飾り結びの結び目を調整しつつ、さらなる苦行へとあたしを送り込む言葉を口にする。

「あっ、あのっ! ……この後は、食事して……寝るだけ、なんですよね?」

「そうよ。とりあえずは」

 とりあえず。不穏な予感のする言葉だ。

「……食事の席に陛下が同席するかもしれませんからね」

 勘弁してください。

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