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王立魔法学院の司書  作者:
長い一日
10/21

偉そうな人に会いました。……で、この人は何者ですか?

「だって君、不審者(てき)には容赦なかったじゃないか。命さえあればいい、傷なら後で治せばいいからって、大量の礫を飛ばしたり、火の粉ぶちまけたりしてさ」

 けっこう過激だな、エリック。怒らせないようにした方が、いいかな?

「あと、服が破けちゃうのは、目的じゃなくて結果。変な趣味持ってるような言い回ししないでほしいな」

 いったい何をやっていて『服が破けちゃう』ような結果に。ああ、ツッコみたいけど、ツッコんだら聞いてはいけない答えが返ってきそうな……

「あなた、人をいたぶって喜ぶ、というあまり芳しからぬ趣味をお持ちでしょうが。これを変な趣味とは言わないだなどとは言いませんよね?」

 ……ここまでのやり取りから鑑みると、たぶん、いたぶられる対象は、主にエリックなんだろうな。……『ぶんげーぶのをとめたち』がここにいたら、涎垂らして喜びそうだな、この二人。美丈夫はおっさんでも美形だし、エリックも……そこそこ整った顔だ。人種が違うのでそう見えるだけかもしれないけど、『をとめ』の『腐女子フィルター』を通せば美形度なんか天井なしに上げられるからな。

 などと意識を飛ばしていたら、ひとしきり言い合いは終わったようだ。

「……で、この落とし物の彼女をどうしたいんだい?」

 美丈夫があたしの頭を撫でる。もしかしなくてもコドモだと思ってるようだ。最初に感じたよりも、もっと年少の。

「とりあえずは、今夜の寝床と食事を。……あと、着替えも要るか」

 言いながらあたしの頭から美丈夫の手を剥がす。

 いろいろとお手数をかけます。

「とりあえず、でいいんだ?」

「……そうですね。彼女が帰還を望んでいるようなので」

「わかった」

 短く応えると、机の上に伏せてあったベルを鳴らす。すると、あたしたちの後ろのドアが開いて、侍従っぽい格好(灰茶色の縁取りのあるローブでベルトにいろいろぶら下がってる)の人が入って来た。

「魔導師長を呼んでくれ。あと、この子を今夜泊めるから、部屋と夕食の用意を」

 魔導師長、という言葉に、エリックの肩がぴくりと震える。……エリックが『前魔導師長』って呼ばれてたから、彼の後釜、ってことだよね。なんでそう警戒するんだろう?

「では、私は戻ってこの子を呼んだ魔法の解析をするので」

 口早にそう言って、侍従(推定)の人に続いて部屋を出ていこうとする。

 ちょ、置き去りするなら、せめて紹介くらいしてって!

 同じことを思ったらしい美丈夫が、エリックの肩を掴んで引き止める。

「ちょっと待て。せめてこの子の名前くらい聞きたいんだが?」

「名前? ……ああそういえば紹介がまだでしたね。殿下が余計な茶々を入れてくださったおかげで」

 ひいい! エリックの口調がなんか黒い!

 っていうか、今『殿下』って言ったよね。変換ミスでなければ、この人って、やっぱり、王族?

 いや、待て。『陛下』だの『猊下』だののところでないだけマシだと思え自分。だって『殿下』なら、国に何人もいるもの!

「ミーフュ、こちらは女王陛下の****をなさっている、ジルナルド殿下」

 女王陛下の、何、だって? よく聞こえなかったぞ。該当する役職がないのかな?

「先王陛下の第七? 第八? 王子であらせられました。で、王子、こちらが異世界から落ちてこられた青井弥冬(あおいみふゆ)嬢。……これで紹介はよろしいでしょう?」

 簡単すぎる説明でその場を逃れようとするエリックの袖を掴む。

「よろしくありません! ジルナルド殿下は、女王陛下の何をなさっているんでしょうか!? 聞き取れなかったんですけどっ」

 それに王子が何番目かも曖昧に流したよね?

 七番目とか八番目とかって、何か微妙でどうでもよさそうな順番っぽいけど。

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