第7話
授業が終わったことを知らすチャイムが鳴ると、さっそく浩司が話しかけてきた。
「とりあえず、ホームルームが終わったら、いつものファミレスに行こうぜ」
「了解」と俺はぼそっと言った。
「おい、テンション低いぞ」
「浩司がテンション高すぎなんだろ」
「そりゃこれから面白そうな話しが聞けるんだから、テンションも高くなるだろ」
俺はやれやれといった感じで首を振った。
俺と浩司はホームルームが終わると、いつも部活の帰りによく溜まっているファミレスに向かった。浩司はテニスの大会についてや、自分の彼女とケンカしただとか、たわいない話をした。
俺は音楽室での出来事を浩司にどう話そうかで頭が一杯だったので、「へぇ〜」とか「ふうん」とか気のない返事を返した。
そうこうしているうちに、ファミレスに着いたので、俺と浩司は店の中に入り、それぞれお気に入りの料理を注文した。
「さて、そろそろ本題に入ろうか」と浩司はわざとらしく声に抑揚をつけて言った。
「わかったよ。でも、その前に海鮮ペペロンチーノを食ってからな」
「腹が減ってはなんとやらってか。じゃあ、俺もさっさとハンバーグステーキを食っちまうかな」
俺は飯を食いながら、直美のことを考えていた。金曜日になったら、本当にまた会うことができるのだろうか。考えれば考えるほど心配になってくる。金曜日が待ち遠しかったが、それと同じくらい不安もあった。
「そろそろ詳細を話せよ」と浩司は急かすように言った。
俺は一人で考え込んでいたらしく、気づくと浩司は飯を食い終わっていた。俺は急いで海鮮ペペロンチーノを食べて、音楽室での出来事を話した。
俺は直美とまた会う約束をしていることなど、重要な部分は話さなかった。それでも、浩司は少し大げさなリアクションをしながら話しを聞いていた。
「なんか変な話だな。話しを聞く限り、如月さんってやっぱり変わってるな」
「まあ、普通は初対面でいきなり好きな音とか聞かないからな」
「たしかにな。でも、俺はてっきり如月さんに告白してフラレタ話しだと思ってたんだけどな」
「だから、告白なんてしてないって最初に言っただろ」と俺は怒ったようなフリをして言った。
「と言いつつも、やっぱり告白したパターンかなと推測してたわけよ。すまんすまん」と浩司はすまなそうに手を合わせて言った。
俺は初対面のやつに告白するほど軽いやつじゃないぞと思ったが、あのとき何度か好きですと言いかけたので、強くは否定できなかった。
「まあ、いいけど」
「実は慎吾に俺の彼女の友達でも紹介してやろうと思ってたんだよ。前にも彼女でも作れって言ったしな。そんで学校に来たら如月さんの話しがでたから、もしかして告白でもしたのかなと思ってたんだよ」
俺は少し女の子を紹介してくれるという部分でテンションが上がりかけたが、すぐにそれを打ち消した。
「それは悪かったな。いまは如月さん以外、興味ないんだ」
浩司はコクンと頷いた。
「そうみたいだな。なんか如月さんの話しをしてるときの慎吾は楽しそうだったからな。それにしても、なんでそんな難しいとこに行くかね」と浩司はしみじみ言った。
「いいんだよ。男は妥協できないんだよ」と俺は強く言った。
浩司はハイハイといった感じで何度も頷いていた。