第3話
俺は楽しそうな浩司を見てイラッとしたが、その理由の大半は羨ましいからで、これは妥協してでも彼女を作ったほうがいいかなと思ったが、一瞬でその思いを打ち消した。
そんなことを考えていると、部室にはほとんど人がいなくなっていた。俺は急いで帰る支度をして学校の校門を出ようとすると、急に雨が勢いよく降り始めた。ひとまず学校に戻り、空から降ってくる雨粒を眺めていた。その雨粒たちは俺が帰ることを真っ向から否定しているように見えた。
「この雨粒め! まったく、ついてないな」と俺は呟いた。
しばらく雨は止みそうになかったので、俺は傘を求めて部室に戻った。たしか、傘が置いてあったような記憶があったので、それを使おうと思っていた。
部室に戻ると記憶にあった傘はなく、人もいなくなっていた。俺は一瞬途方に暮れたが、教室に行けば傘が置いてあるかもしれないという名案が浮かび、自分の教室に向かった。
校舎には人がほとんどいなくて、とても静かな雰囲気に包まれていた。いつも人がたくさんいるところに人がいないと、なんだか神秘的な感じがするのだから不思議なものだ。
俺はゆっくり教室に向かって歩いていると、微かだが音が聞こえてきた。なんだろうと耳をすましていると、なにかの音楽だということがわかった。普段だったら、そんな音は気にせずに真っ直ぐ教室に向かっていただろう。ただ、そのときは外が雨で帰ることもできなかったし、校舎も神秘的な感じがして、未発見の土地を探索しているようなソワソワとした気持ちだったので、俺は興味本位でその音楽が聞こえるほうに向かった。
次第に音ははっきりと聞こえるようになり、それがピアノの音だということに気づいた。音楽室はまったく違う場所にあったし、その方向からピアノの音が聞こえてくるはずがなかった。
俺はますます興味が湧いてきて、本当に探検家になったようなドキドキとした気分で歩いていた。すると、目的地には第二音楽室と書いてある教室があった。誰でも学校には一度も入ったこともないし、そんな場所があることすら知らないところがあるものだ。俺は少し緊張しながら教室のドアを開けた。