第2話
「なあ、これからどうする」と俺は浩司に言った。
「今日はこれから用事あるから帰るわ」と浩司はだるそうに言った。
浩司はクラスでも一緒だったし、部活の中では一番仲がいいやつだった。
テニス部では個人技のスポーツというせいもあるのかもしれないが、みんなでつるんで何かをするということがあまりなかった。仲が悪いというわけではないが、野球部やバスケット部みたいな団結力はなく、各々で親しいやつと遊ぶということが多かった。
「そっか。しょうがないな」
「今度、また遊ぼうぜ」と浩司はすまなそうに手を合わせて言った。
「それにしても、三年が引退したから、部室も広く感じるな」
浩司は深く頷いた。
「ただでさえ狭い部室なのに、三学年も入るかって感じだったしな」
俺は満員電車のようになっていた部室を思い出して、ちょっと気分が悪くなった。部室ではみんなそれぞれワイワイ盛りあがっていた。
「俺らもあと一年したら引退だな。そう考えると、一年なんてあっという間な気がするな」「考え方にもよるけどな。俺はまだ引退なんて当分先のことのような気もするけどな」
「そんなもんかね。まあ、どっちでもいいんだけどさ。それより、今日もすることないし、つまんないな」
浩司はなぜかクスクス笑った。
「慎吾、発言が高校生とは思えないぞ。高校生っていったら、人生の中でも一番楽しい時期だろ」
「テニスをしてるとき以外、生き甲斐を感じないんだよ」と俺はふざけた感じで言うと、浩司はますます笑った。
「おいおい、もっと他にも楽しいことは一杯あるだろ。わかった。慎吾は彼女を作れ。そうすれば、楽しい高校生活になるぞ。よし、決まった」
「よし、わかった。じゃあ、いまから彼女作ってくるわ。ってできるわけないだろ!」
「いや、わかんないよ。意外にすぐできるかもしれないじゃん。慎吾は好みがうるさすぎだから、もうちょっとストライクゾーンを広げれば、すぐに彼女だってできるさ」と浩司は冗談だか本気だかわからないような感じで言った。
「俺は妥協しない主義なんだよ。しかも、かわいい彼女がいるやつに言われても説得力がないっての。さては、用事って彼女と遊ぶんだろ」
浩司はあきらかにヤバっていう顔をした。
「さて、そろそろ用事があるから帰るかな」
「さっさと帰ってしまえ」と俺は皮肉を込めて言った。
「悪いな。また今度遊ぼうぜ。あっ、それと彼女はリアルにいたほうがいいと思うぞ」
「うるさい。早くかわいい彼女のところにでも行け!」
「まあまあ、落ちつけって。今度、女の子でも紹介してやるからさ。じゃあ、またな」と浩司は言い、急いで部室を出ていった。