第12話
突然ですがこれで最後です!
なんと完結しました!
そこには少し小さいが、きれいに整備された公園があった。
滑り台があり、砂場があり、ブランコがあり、鉄棒があり、ジャングルジムがある。
しかし、木々に囲まれたその公園は、そこだけ世界とは切り離されたような異質な雰囲気があり、時間がゆったりと流れているような場所だった。
その周りにはベンチが三つ並んでいて、一番手前のベンチに腰をかけた。
「私、この場所が好きなんだ。ここにいるとなんだか自分のことを見つめられるっていうか、心に絡まったいろんなものをほどいていけるんだ」
直美はどこか遠くのほうを見つめていた。俺はそれを見ていると、直美のことをまだ何一つ知らないんだなと実感した。
「なんかわかる気がする。俺もこの場所好きになったよ」
直美はそのまま遠くのほうを見つめながら頷いた。
「ねえ、用事って何だったの?」
「……留学するんだろ」
「そうだよ」
「留学する前に言わなきゃいけないことがあったから」
俺は直美が興味津々といった感じで見ているので、その先を言おうかどうか迷った。
「なになに」と直美は急かすように言った。
俺はええい当たって砕けろと思い言った。
「直美のことが好きだ。留学したら遠距離になるし会えなくなるけど、俺はずっと直美のことが好きだし、付き合って欲しい」
「当分は日本に帰って来ないけどいいの?」
「それは覚悟できてるから大丈夫」
「わかった。じゃあ一ヶ月後に帰って来るから、そのときにまた告白してね」
直美はいままで笑いを堪えていたのか、口を押さえながらクスクス笑っていた。
「はっ! 一ヶ月後」と俺は思わず叫んだ。
「そうだよ。短期でピアノを習いに行くだけだもん」
あのやろう。デマ情報を教えやがってと、浩司への怒りが込み上げてきたが、そういえば後半のほうに何か言っていたなと、いまになって思い出した。
俺は緊張が一気に抜けてガックリとうなだれていたが、ケラケラ笑っている直美を見て、なんで早く教えてくれなかったのだという怒りがまた込み上げてきた。
「気づいてたんならもっと早く教えろよ」
「ごめんごめん。途中でおかしいなとは思ったんだけど、すっごい真剣な顔だったからついついね」
「ついついねじゃない――」
その瞬間に唇にやわらかいものが触った。俺は直美とキスをしているということを理解するのにしばらく時間がかかった。直美は唇を離して、少し距離をとって言った。
「お詫びのしるしと、私の答え」
「お、おう」と俺は激しく動揺して言った。
「私、慎吾とキスしたときの音が二番目に好きになったかも」と言い、ニコッと笑った。
「俺は一番好きになるかもしれないな」
直美が笑っている姿を見ていると、世界が短調でつまらないものではなく、少なくともいまこのときはお互いの心のスペースを共有しているのだと実感できた。
世界は人の考えかたや気持ちで、どのようにも変化していくのかもしれない。そうじゃなければ、俺がいま見ている世界がこうも変わっているのには説明がつかない。
公園にはハハハと笑っている二つの音が重なり合うように響いていた。
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