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魔導の誘う救世譚  作者: かっこう
第一章
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3

 やっぱり面倒くせぇ。俺は結局先輩があまりにも必死に問い詰めてくるので、《破魔の目》とかについて説明するはめになっちまった。

「《破魔の目》っつうのは、結界とか罠とかを見破れる魔導ですね」

「すご〜い。そんな魔導もあるんだあ。……あれ? でも立花君〈陣〉展開してなかったよね?」

 あれ〜と首をかしげる先輩。

 か、可愛い。子どもっぽさと可憐さによく似合った破壊力抜群の仕草だ。

「え〜っと、展開はしましたよ。眼球に直接ですけど」 

 小首をかしげていた先輩の表情が驚愕に変わる。

「う、うそ……人体へ直接〈陣〉を展開できるってことは……」

 なんか驚いてばっかだなこの人。

「ま、そういうことっすよ」

「……」

 今度はまじまじと俺の顔を見つめてくる先輩。

「……学園長が言ってた〝凄い〟ってこういうことだったの?」

 いや、俺は学園長じゃねぇから知らんけど、先輩の視線が全くそらされないから居心地が悪い。

「ま、まぁ結界があるってわかっただけで、その先にあるはずの校舎とかは見えないんでたいしたこと無いっすよ」

「ううん、それでも十分凄いよ。たぶん一年にはいないんじゃないかなぁ、この結界見破れる子」

 一年には、ね。

 麗華れいかさんあたりなら見破れるだろうし、その麗華さんをして化け物といわしめる人たちが何人もいるらしいから不思議なことじゃない。けど、なんで一年にはいないんだ?

「なんで一年にはいないんですか?」

 御堂先輩は苦笑する。それもまた絵になってるんだから凄いよなあと思う。

「一年の子はね、才能が偏ってるの。例えば、早さだけなら二年生のトップに匹敵する子とか、防御系の魔導なら二年生のトップに匹敵する子とか、ね」

 それは……どうなんだ?

 俺は一月前に魔導師になったばかりだからよくわからん。でも、二年のトップに匹敵するような奴がいるならこの結界だって見破れないことは無いんじゃないか?

「それでも一人くらいいそうなもんですけど」

 そうやって聞いてみたんだが、先輩は呆れたような笑みを返してきた。

「そう思うのは無理もないけど……本当にいないんだよ。あのね……あ、もう着いちゃったね」

「え? ああ、ここが学園長室ですか」

 気づけば学園長室は目の前にあった。学園長室と厳めしい字で扉の上に刻まれている。

「じゃあ、あたしは行くね」

「あ、はい。ありがとう」

「ううん、気にしないで」

 先輩が俺に背を向けて歩き出す。途中で振り返って手を振ってきたので振り返しておいた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 俺は今第六校舎——別名男子寮——にいた。

 思わず大きなため息が吐いてでる。

 ありえないだろこの学園。二時間程前学園長室で最後の手続きが終わりこの学園の正式な生徒になったので、第一校舎以外も見えるようになった。

 俺の予想を遥かに超えてぶっ飛んでた。

 だから、全部第一校舎より大きいってどういうことだよっ!? 何に使ってんの!? とかいろいろと一人でつっこみながら男子寮まで歩いてきて、精神的にかなり疲れてしまった。

 俺はもう絶対に驚かないと覚悟を決めて部屋に入ったものの、

「——広すぎるわっ!?」

 いきなりつっこんでしまった。

 いやだっておかしい。外から見た扉と扉の間隔にあってないぞこれ。あきらかに広すぎる。

 ——魔導か? 魔導で広くしてるのか。

 それでも……広すぎるな、いくら何でも。

 五人くらいで料理できそうなキッチン。五人は座れるソファがあるにもかかわらずまだまだ広さに余裕があるリビング。キングサイズのベットが小さく見える寝室。さらに、十人は入れるんじゃないかという風呂。脱衣所からしてリビングの三分の一くらいあるし、

ついでにトイレも広い。

 ありえないだろうこれは。学生が住む場所じゃないよね?

 名家の人たちがいんのはわかるけどこれはやりすぎだろう。

 しかも俺の引っ越しの荷物全部運び込まれてるし。

 ……この学園で細かいことを気にするのはやめるか。魔導師って連中は大概ぶっ飛んでるんだきっと。

 部屋の広さを考えることをやめにすると、今までつっこみに集中しすぎてて気づかなかったが腹が鳴った。時間を腕時計で確認すると十二時五十七分だった。朝食ってねぇし腹も減るわな。

 キッチンの冷蔵庫の中をのぞいてみる。

「お〜、この学園は食材までサービスかー」

 三日分くらいの食材が入ってた。これなら、うん、今日は野菜炒めにしよう。

 俺はこれでも料理が出来るんだ。

 あれ? でも米は……あったあった。米は冷蔵庫の隣の棚に置いてあった。

 俺は今日の夜の分までの米を研ぎ、魔導式炊飯器で炊く。魔導式炊飯器はごはんが二分で炊ける優れものである。どんな魔導が使われてるのか気になるもんだ。

 すごいもんだよなあ、ボタンを押すと同時に機械が〈陣〉を展開し魔導を発動するっていうんだから。もちろん機械は〈魔素〉を保有してないので、定期的に〈魔素〉を魔導師が補充する必要があるが。

 そんなことを考えつつできあがった野菜炒めを皿に盛りつけ、ごはんをよそう。

 キッチンで立ったまま食べ終えてから皿を洗って片付ける。

 荷ほどきは面倒だからやらないとして、暇だ。やることが無い。

 俺はぼけ〜として夕飯までを過ごした。

 メシも食ったし明日の仕度して風呂入ってから寝よ。

 俺は今日学園長からもらった時間割を見る。

 国語、魔導学、魔導学、魔導実技、魔導実技、魔導実技

 大丈夫なのかこれ。魔導ばっかなんだけど。国語が場違いなんだけど。

 いや、そうだ。ここは日本でトップの魔導教育機関。

 そもそも普通の高校とは違って学ぶものが違うんだ。魔導以外はおまけなんだろう。

 中学までとは随分違うけど、よく考えれば最高だこれ。毎日こんな感じの時間割だし。

 勉強大嫌いだもんな俺。魔導がいっぱいあるのはうれしい。

 しかも、魔導学も魔導実技も教科書が必要ないから、持っていくのは国語の教科書だけ。準備が簡単だ。

 俺は紙袋に国語の教科書を入れてリビングのソファの上に置く。

 そのまま荷物の中から着替えを引っ張りだして、風呂に向かう。

「ふぅぅ〜。気持ち良かったぜ」

 俺は風呂から出て、寝室のキングサイズのベッドにダイブする。ちなみに洗濯物は脱衣所にあった魔導式洗濯機につっこんできたぜ。ボタンを押すだけで全部やってくれるんだ。

 それにしても、気持ちぃぃぃぃぃぃ!

 ふかふかだよこのベット。寝心地が最高だよ!

 ふかふかのベットで今日のことを思い返してみる。

『大好きよ……また後でねっ』

 思い浮かんだのは麗華さんの今日の朝の電話での言葉。

 ……また後で、ね。

 そこにはかったように携帯の着信音が鳴り響く。

「はいはいっと」

 携帯を開き電話にでる。

『もしもし宗一、私よ』

「なんすか麗華さん」

 なんとなく用事なんかないんじゃないかなあと思いつつも用件を尋ねると案の定、ころころと笑いつつ、

『用件なんてないわよ。ただあんたと話したかっただけ。今日はもう直接は逢えないしね』

 なんて言う。

 麗華さんらしいなあ。

「じゃ、何の話をします?」

『そうねえ……』

 早く寝ようと思ってベッドにダイブしたんだが、結局俺は麗華さんと三時間も話していた。

 

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