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語り部の伝承

 空、誰しもが一度は夢見る地上とは異なる別世界。


 風は流れ、雲は行き、太陽が時節顔を出す。


 季節折々の表情があり、見る者を飽きさせない壮大な魅力がある。


 また、時刻が逆転すればその表情を一変させ、新たなる魅力へと引きずり込む魔性の美。


 そんな幻美である空に惹かれた男は、ある時を境に空を毎日見上げるようになった。


 朝、日が上らずまだ薄暗い時。


 昼、灼熱の陽光が地を灼いている時。


 夜、月光が森を照らし異形な生物のように見せる時。


 雨の日も、


 雪の日も、


 雷鳴轟く梅雨の日も。


 彼の休む日はなかった。


 毎日、毎日、幾度も幾度も天高く広がる空を見上げる。


 まるで何かにとり憑かれたかのように。


 否、その様相は待ち人をただ迎えようとするかのように。


 だが、彼を罵る声は日に日に増えていった。


 狂人、と揶揄され


 恐人、と恐れられ


 凶人、と疎まれ


 そんな彼はある日、唐突に姿を消した。


 人々は困惑した。


 野犬にでも食われたか、などと鎮魂の意も糞もない言葉をかける者もいたが大多数の人々は概ねそれに近い感情であった。


 ある少年の一言を聞くまでは。

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