常夏の駅と夢境超特急
ゲートを潜ると、そこには不思議な空間があった。
ハワイや沖縄のような常夏の景色だ。
大きなヤシの木に、きれいな青い海と空、
その中にある小さなカフェに、リンドウは立っていた。
一見洒落ているカフェに見えるが、よく見ると、本来、店の出入り口があるであろう場所に線路がある。
バナナ隊長「ここは、世界と世界をつなぐ狭間なんだ」
すでにリンドウは考えることを放棄していたため、混乱はしなかった。
???「おやおやおや?ひょっとしてお客様ではー!?」
店の奥から突然少女の甲高い声がした。
???「ムネフサじゃん!! 久しいね!」
リンドウは自分の鼓膜がなくなるのではないかと思うほど少女の声は大きかった。
リンドウはバナナ隊長に安静に座らせられていたが、その店のカウンターからひょっこりと、少女がでてきた。
褐色の肌に、青い瞳、ハワイアンな服装に、深い金髪。
年齢はリンドウの妹くらいだろうか。
バナナ隊長「この子を治療したいんだ。本部まで頼む。」
???「わかりました!私にお任せを!・・・ってその子、夢主じゃ?」
バナナ隊長「ああ、何か夢に異常があったみたいでな。」
???「そっか。」
少女はリンドウの方に話しかけた。
「はじめまして。私はココヤ! 常夏の駅、駅長です!」
すぐにリンドウも自己紹介をした。その間に、ココヤは魔法のような眩い光で、リンドウの傷を治した。
ココヤ「消えたのは痛みだけだから、本部に行って治してもらってね。」
ココヤは、笑窪のできた、笑い方でリンドウを元気づけた。
バナナ隊長は常夏の駅で、リンドウにこの世界のことを説明した。
「いいかい?率直に言うとこの世界はね、君たちの世界でいう夢と呼ばれる世界だ。厳密にいうと少し違うが、そう思ってくれて構わない。」
ココヤが、二人にココナッツのジュースを持ってきてくれた。
バナナ隊長は一気に飲み干す。
「我々の仕事は、この世界を守るために、夢を見る君たちを、悪夢から救っているんだ。ここからは君たちのことを我々の用語で夢主と呼ぶよ。」
リンドウはようやくココナッツのジュースを飲み始めた。
「悪夢というのは、君が先ほど見た、女の悪魔のような奴らのことだ。奴らは、僕らの世界を滅ぼそうと、夢主を殺している。」
ココヤが時刻表を眺めている。
「君たちが夢を見ることで、我々は存続し、我々が悪夢を退治することで、君達も生きていられる。放っておくと君たちは夢の中でも死ぬんだよ。」
ココヤが線路の方を見て、すぐに時計を見た。
「本来なら、夢主は我々が記憶を消す手筈になっているんだが、どうも君は消えないみたいだ。」
リンドウはココナッツのジュースを飲み干して、話を聞いていた。
「私が君の元に来るのにも時間がかかってしまったし、君を使って、悪夢どもが何か企んでいるのかもしれない。」
バナナ隊長はそういうと、椅子から立ち上がった。
リンドウはそこで聞いた。
「あの悪魔、俺の妹を知っていたんです。ひょっとして、俺の妹も、この世界にいるんですか?」
リンドウの妹は、植物状態にある。そこで彼女も夢を見ているのではないかという想いもあった。
しかしバナナ隊長はこう答えた。
「わからない。奴らが知っていたのならそうかもしれないが、奴らの中には、夢主の記憶を頼りに、変化するような奴もいるからな。」
そして最後に呟いた。
「全てを知られているのは、獏だけだ。」
ここでココヤが割って入った。
「お二人さん、もう列車が来ますよ。」
リンドウは線路に方を見た。
ワープゲートが線路上に現れ、中から近未来な新幹線が出てきた。
駅のホームには、音楽も流れている。
どこぞの鉄道999のBGMに少し似ている
バナナ隊長「さぁ本部へ行こう。」
リンドウとバナナ隊長は、ココヤに別れを告げて新幹線に乗った。
座ったのは、すごい豪華な椅子だ。
最後にココヤの声が響く。
「二人ともまた会おうねーー!」
駅の音楽と共に、機械の放送が流れる。
「夢境超特急ただいま発車します」
列車は走り出し、ワープゲートをくぐると、七色に光る世界を走り出した。