悪夢の始まり
リンドウは誰もいない神殿をあるく。
羽虫一匹もいない。
「誰もいないなぁ」
昨日雨でも降ったのか、穴の空いた天井の下には水溜りがある。
水たまりを見ると柱の影に人らしきものが見える。
「誰かいる!」
リンドウは慌ててその場所に行くが
そこにあるのは洋風な世界観に似合わない
ツノの生えた地蔵だった。
「なんだよ、これ」
あまりにも気味悪いため、リンドウは後ろに後退りした。
「イテっ」
何かにつまずいた。
振り返るとそこにも地蔵があった。
しかも今度は頭が割れてゾンビのようになっている。
「なんなんだよもう 夢なら意味がわからないぞ」
リンドウはその場から離れ、神殿の奥へ進んだ。
奥へ進んでも同じような空間をずっと歩いている。
だんだんここが神殿なのかも怪しくなってきた。
「誰かいませんかー!?」
天井の穴から日光の差す廊下にリンドウの声がただただ響く。
もちろん声が返ってくるとは、期待していないが__
「ケヘッ」
何かの声がした。
「なんだ今の」
声は柱の後ろあたりからしたようだ。
「またさっきみたいなことになるんだろ」
リンドウはそう思いつつ柱の後ろをのぞいた。
しかし、柱をのぞいてみても、何もない。
やはりあるのはツノの生えた不気味な地蔵だ。
溜め息をついて、他の場所にも探してみようと振り返ったその時、
「お兄ちゃん。」
そこにはずっと寝たきりだった妹が、元気な姿で立っていた。