第一章 【01】 転生
【2025年9月より、第一章を投稿時よりも読み易く、より面白くなるように、一話から順に順次、推敲と改稿をしております。ご了承くださいませ】
〈ヒビキ視点〉
かつて、異なる世界において。
『ヒビキ』と、呼ばれた青年が。
『こちらの世界』での始まりを。
回想すると……
いつも、行き着くのは。
決まって、同じ記憶である。
記録の底。
原初の澱。
ぶくぶくと、水底から。
湧き上がる、気泡のように。
暗く深い、闇の底から。
水面へと。
自我が、浮上していくことで。
世界を覆う、薄膜へ到達。
境界を突き破る。
(……っ!?)
外部から、刺激を感じて。
思わず目蓋を、見開いた。
(……っ! あっ、うああ……っ!)
途端に。
流れ込んでくるのは。
膨大な、情報の奔流である。
「……ぷっ」
衝撃に、驚いて。
思わず、泣き叫んでしまう。
「ぷぎゃあああ! ぷぎゃあああっ!」
意味などない。
わけがわからない。
ただ、くるしい。
こわい。
ここはどこ。
いやだいやだ。
こわい、だれか。
(……た、たすけて……)
そんな、誰もが抱くであろう。
生物的な、原始の『恐れ』を。
恥も外聞も、抱くことはなく。
盛大に。
全力で。
世界に、ぶち撒けていると。
「……ん。よしよし」
やがて。
応えてくれた、声とは。
「はいはい。大丈夫ですよ〜」
受け入れて。
抱きしめてくれた、存在とは。
「うふふっ。いい子、いい子〜♡」
新たな世界の、『洗礼』を受けた。
異世界からの来訪者……ヒビキの。
記憶に、刻み付けられたものとは。
「……う、あ、あー? ああ゛ー?」
「ええ。そうですよお〜。いつだって、いつでも、いつまでも、ママはここに、いますからね〜♡」
じっ……と。
こちらを見つめて。
愛おしげに、目を細める。
少女の、微笑みであった。
「……あうう……」
陽だまりのように。
頭上から、降り注ぐ。
暖かな、視線と。
穏やかな、声音を。
全身に、浴びることで。
「……う、ううぶ……」
問答無用で。
絶対的な。
安堵に、包まれたヒビキは。
根源的な『恐れ』など、綺麗さっぱりと。
忘却してしまった。
「……ぶ……ぶうう……」
すると、無意識のうちに。
口元から、溢れ出るのは。
赤子の、喃語じみた。
無意味な音の、羅列である。
「……ぶふう〜?」
なにせ、まだ。
このときのヒビキの自我は。
揺蕩う、微睡のなかにあって。
夢の中で「……ああ、これ夢だな……」と。
半ば、目覚めているような。
意識はあっても。
自我が曖昧な。
明晰夢と呼ばれる、状態なのだ。
「……」
よって、一定の知性から生じる。
視覚情報以外の、付加価値など。
抱けるはずも、ないのだが……
「……うー」
それでも。
つい、見惚れてしまうほどに。
この世界の『始まり』において。
ヒビキを迎えてくれた、少女は。
「うふふふっ♡」
それはそれは……
神々しく。
見目麗しい。
天使のような。
美しい、少女であった。
「あううー、あー、あー」
本能に吸い寄せられた、視線と。
意味などない、発声の礫を。
一身に、受けながら。
「……おや?」
可愛らしく、コテンと。
小首を傾げた、少女の見た目は。
十を少しを、超えた程度である。
「おやおやおや? 如何されました、ヒビキくん? 今度はずいぶんと、ご機嫌ですね〜♡」
まだ、『幼い』と形容して。
間違いない、外見でありながら。
「うふふふっ♡ ヒビキくんが嬉しいと、ママはもっと、嬉しいですよ〜♡」
何故か。
自らを『ママ』と称する、謎の少女は。
サラサラと。
本物の陽光を、受けることで。
白い大海原のように、光り輝く。
直毛の白髪を、揺らしている。
(……き……れい……だ……)
他にも、シミなど一つも見当たらない、雪花石膏のように艶やかな白肌や。
大きく見開かれた、紅玉の瞳。
その縁を飾る、驚くほど長い睫毛に。
筋の通った、気品のある鼻梁や。
可憐に咲く、薄桃色の唇といった。
それら、優れた個々の部品を。
美の女神が、ひとつひとつ。
丁寧に、配置することで。
神秘性すら、感じさせる。
圧倒的なまでの『美』を。
幼い少女に、授けている。
「うふふっ♡」
そんな、完全無欠の。
万人が認める、美少女が。
慈愛に満ちた、笑みを浮かべて。
ヒビキを、見下ろしているのだ。
(……ん?)
そのことに。
ようやく違和感を覚えた。
「……うあっ!」
思わず、動揺が声として。
口から、溢れ出てしまう。
「……」
そうしたヒビキの反応を……じっと。
宝石のような、紅瞳で。
瞬きを、挟むことなく。
凝視していた、少女が。
「……っ! え、い、いま、もしかして……」
喜色に満ちていた、表情に。
新たな驚きを、追加した。
「わ、私を、見つめてくれていましたか!? ほら、ほらほら! ヒビキくん、見えますか!? ここですよ!? ママですよ~?」
「……ぬう、まことで御座るか、マリアン殿」
直後に……ずい、と。
視界に、入り込んできたのは。
少女を覆い尽くすほどに。
大きな影である。
「どれどれ。ちと、某にも、見せてくだされい」
野太い声音から、察するに。
おそらくは、男性。
まさしく、巨人のような。
見上げるほどの、大男が。
のっそりと、腰を折ることで。
ヒビキを、覗き込んでいるのだ。
「あ、ちょっとテッシンさん! 邪魔しないでくださいよ!」
すかさず、声を荒げた少女が。
ヒビキの視線を占拠する、大男を。
邪険に、追い払おうとするものの。
「ふはは、固いことを申されるな。少しぐらい良いではないか」
不機嫌を、ものともせずに。
呵呵と、笑い飛ばす大男は。
やはり、無精髭を生やした。
壮年の男性である。
(だ、れ……?)
肌具合から察するに。
年齢は、四十を超えているだろうか。
表情に敵意こそ、見受けられないが。
眼光が、異様に鋭い。
そのため、対峙する者の背筋を。
自然と正すような、凄みがあった。
両腕を覆うのは、黒鋼の籠手。
両足を包む、傷だらけの脛当。
胴体に備えるのは、漆黒の地金に金箔が施された、軽装鎧であり。
腰元には、大小ひと振りずつとなる。
使い込まれた『刀』を、佩いていた。
(なん……だ? こいつ、ら……)
穢れない純白の布地を、金刺繍で彩った。
気品漂う貫頭衣を身に纏う、幼い少女と。
まるで、戦場から抜け出してきたような。
荒々しい無骨な武装を着用する、大男は。
ヒビキとしては、いずれも。
見覚えのない、人物である。
(……おやこ、か?)
すわ、両者の体格差から。
そんな感想を、抱いたものの……
(……いや……なんだ、あれ……つ《・》の《・》……?)
大男の、額には。
少女には、ないものがあった。
それは頭角。
額の両脇から、皮膚を貫いて。
天へと伸びる、紛れもない『角』である。
加えて肌色も、西洋人であるらしい、色素が薄い少女とは異なって。
大男はヒビキの見慣れた、東洋人の象牙色である。
(……)
流石に、意識が曖昧だった当時は。
そうした、論理的な思考によって。
結論に至っては、いなかったものの。
それでも……直感として。
なんとなく。
理解していた。
(いや……この、ふたりは……ちがう……)
おそらく、親子などではない。
それどころか同じ、人種ですらない。
見たままに、例えるならば。
人と鬼。
二十年以上をニホンという国で過ごしてきたヒビキの常識では、ありあえない、組み合わせである。
(やっぱり……これって……ゆめ、なのか……?)
思考が安定しない。
自我が定まらない。
波打つ水面のように、ゆらゆらと。
自己と世界の境界が、曖昧だ。
(……だめだ……もう……なにも、かんがえられない……)
気まぐれに。
浮上していた意識が。
水底へと、沈んでいく。
(……ねむ……い……)
そうしたヒビキの。
自我の薄れた、無垢なる瞳を。
見下ろす大男が、愉快そうに。
笑みを、浮かべていた。
「くかかっ、良し、良し、良き面構えだ。意識が定まっておらぬとはいえ、年端もいかぬうちから、某を睨み返すとは、中々の肝の座りようよな。きっとこの御仁は鍛えれば、良き武士になれるで御座ろう」
「ちょっとテッシンさん! だからあんまり、顔を近づけないでくださいよ! ヒビキくんが怯えてしまったらどうするつもりですか!? 殺しますよ!」
「ぬはは! それもまた、一興よな!」
「んもうっ!」
物騒な、少女の物言いなど。
欠片も、意に返すことなく。
興味深そうに。
ヒビキを覗き込む、大男であるが……
「……ぷひー」
すでに、自我を手放した。
ヒビキの意識は、はやくも。
別の対象へと、移動していた。
「ぷー……ぎー……」
それは、こちらを見下ろす都合上。
世界からヒビキを、独占するかの如く。
紗幕のように、垂れ下がっていた。
少女の長く艶やかな、白髪である。
「ぎー……」
紅葉のような、手のひらで。
頬に当たっていたそれを。
むんず、と掴むなり。
「……あむあむ」
口に含んで。
咀嚼する。
「……あっ♡」
当然ながら。
美しい白髪は、唾液に塗れて。
生理的な、不快感すら。
伴うはずだが……
「……んもうっ、こらこら、ダメですよ〜っ♡ めっ、です♡ めっ♡」
少女は、笑っていた。
ダメダメと、言いつつも。
本当に、嬉しそうに。
心から、幸せそうに。
輝くほど、微笑んでいた。
「……むう、マリアン殿。その様子ではもしや、御仁は、腹を空かしておられるのでは?」
しかし、大男の指摘によって。
「……っ!」
すぐに笑顔を、崩した少女は。
「あ、ああ! なるほど!」
あわあわと。
露骨なほどに、狼狽して。
「ご、ごめんなさい、気づくのが遅れてしまって! すぐにご飯を、あげますから……テッシンさんは、あっちへ行ってください!」
「うむ」
頷いた、大男が。
すぐにその場を、離れると。
「……んっ、よいしょっ」
躊躇うことなく。
むしろ、慣れた手つきで。
少女は、白地に金刺繍がなされた。
気品ある貫頭衣を、めくりあげて。
「……ふう。流石に、外は少し、冷えますね……」
ヒビキの眼前に。
小さく膨らんだ、胸元を。
惜しげもなく、曝け出したのだった。
「あー……」
「はいはい。もうちょっとだけ、お待ちくださいねっ♡」
内側からの、じんわりと。
水分を滲ませた、胸巻きを外すと。
全体的に、色素が薄い少女において。
そこだけは、色が濃くなった。
蕾のような、突起が。
外気に触れて……
「……んっ」
ピクン、と。
少女が、震えた。
「ぷぎー! ぷぎー!」
すると、視覚か。
あるいは、匂いか。
はたまた、本能なのか。
とにかく『何か』を、察したヒビキが。
勢いよく、喚き始める。
「はいはい♡ お待たせしましたねー♡」
すると、によによと。
少女の笑みが、深まって。
「それではたっぷりと、召し上がってくださいねーっ♡」
甘い芳香が漂う、少女の蕾に。
涎を垂らすヒビキが、自然と。
花蜜に群がる、虫のように。
引き寄せられた。
「あむ……んくっ! んくんくっ!」
「……んっ♡ よしよし、いい子いい子、いい子ですねー♡」
それは、当時のヒビキにとって。
必要不可欠な行為。
それを与える少女自身も。
当たり前と認識している、生理現象。
とはいえこれより、数年後。
当時を思い返せるようになった、ヒビキが。
羞恥のあまり、悶え苦しむのは。
また別の、お話であった。
【作者の呟き】
初手搾乳プレイ。
こういうのは後になるほど触れにくくなるから、初っ端にぶち込んでおいたほうがいいですよね!(ただ作者が書きたかっただけです)




