表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/181

第一章 【00】 ブギーテイル 〜不器用な愛の物語〜

 第1話 序 【00】 ブギーテイル 〜不器用な恋の物語〜


〈???視点〉


「ねぇねえママ、また『あのおはなし』を、きかせてよ~」


 それは、どこにでもある光景だった。


 空に昇った月が、薄雲をまとう夜半である。


 灯りの消された、寝室にて。


 寝台に横たわる子どもと、それを寝かしつけようとする、母親との会話である。


「もう、またあのお話? いいから寝なさい、明日は早いのよ」

 

「ね~ぇ~。おねがいぃ~。おねがいだからぁ~」


 おねだりの笑みを浮かべながら。


 服袖を掴んでくる、かたくなな、我が子の抵抗に。

 

「……はあ。まったく」


 母親は、嘆息を吐き出した。


 こうなったらこの子はもう、意地でも、要求を押し通そうとするだろう。


 ならば、明日の朝も早いのだから。


 さっさと自分が折れてしまったほうが、時間の節約だ。


 そう、割り切って。

 

 母親は、寝台から離れていた腰を。


 我が子の枕元へと、下ろした。


「少しだけですからね? ちゃんとはやく寝つきなさいよ」


「うん、わかったぁ~♪」


 優しく額を、撫で付けられて。


 年端も行かない幼子は、満面の笑みを浮かべている。


(ああ……なんて、可愛らしい)


 愛おしい、我が子を見つめて。


 頬を緩めながら、ふと母親は考えた。


(でも……私はいったいあと何年、この子の無邪気な笑顔を、こうして見守れるのでしょうねえ……?)


 親が思っている以上に。


 子の成長とは、早いものだ。


 さらに時間は、有限であり。


 子どもが子どもでいられる時間は、殊更に短い。


 そう考えると……


(……この時間を、大切にしてあげないと)


 自然と、湧き上がった。


 親としての情愛を。


「ねぇ~ママぁ~。はやくはやくぅ~」


 幼子は、つゆとも知らずに。


 不満げな表情で、服裾を引っ張りながら。


 催促を繰り返してくる。


「はいはい」


 苦笑して。

 

 母親もまた、覚悟を決めた。


(うん。どうせやるのなら手抜きじゃなくて、徹底的に、満足するまで付き合ってあげよう)


 そして彼女は、ゆっくりと。


 記憶の糸を、手繰ってゆく。


「えっと……この前は、どこまで話したのかしらねぇ……」


 記憶を手繰る。


 記録を辿る。


 以前、この子に語り聞かせた物語を。


 母親もまた、かつては両親にねだっていた、この世界に伝わる昔話を。


「……そうねぇ、むかしむかし、あるところに……」


 幼子に、語り聴かせながら。


 母親は思い出していく。


 ある者はそれを、勇敢な英雄譚だと言っていた。


 ある者はそれを、心踊る冒険譚だと言っていた。


 ある者はそれを、数奇な悲劇譚だと言っていた。


 聞く者によって、十人十色の表情を見せる。


 奇妙で奇天烈な物語。


 そして今、まさに。


 幼子に対して物語を綴ろうとする、彼女が受けた印象とは。


 多くの人々が羨むような、常人からかけ離れた英傑や。


 天才たちよる、輝かしい物語などではなくて……


 もっと身近で。

 

 ありふれた。


 くだらない、陳腐な。


 それでいて激しく、情熱的な。


 まごうことなき、『愛』の物語であった。


       ⚫︎


 これは臆病な彼と彼女が。


 これは一途な彼女と彼が。


 出会うための、不器用な愛の物語(ブギーテイル)……



【作者の呟き】


 ということで、三度目の正直を地でいく愚かな作者による、【転生版】ブギーテイルです。


 初めましての読者様はどうぞよろしく。


 またお前かよいい加減にしろ、の読者様は本当に申し訳ございません。


 そして両方の読者様に。


 至らない拙作ではありますが、作者の好きを詰め込んだ物語なので、どうぞよろしくお願いします。


 そして拙作から光るものなどを感じていただければ、ポチッと評価ボタンをひとつ、よろしくお願いいたします。


 m(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ