5月 転校生に噛まれたぁぁぁぁぁぁぁ
朝のチャイムが鳴り、カララと弱々しく扉を開く音がした。
「今日は転校生を紹介するぞー……」
ありきたりな言葉を並べるのは俺たちのクラス担任
目頭 魚先生だ。
魚先生のお母さんがどうやら大の某魚キャラの大ファンらしく、こんなふざけた名前になってしまったのだとか。
生徒からは「先生ー、転校生というビッグイベントなのに相も変わらず目が死んでいますよー」
「はいそこー先生は転校生なんて何億と見ていてもう見飽きたので放っておいてくださーい」と、いう感じに死んだ魚のような目をしている先生と有名で割と人気だ。
「はい先生の目が死んだ魚のようだということは一旦置いといてー。転校生とは仲良くするように、んじゃどうぞ」
魚先生がぶっきらぼうに合図をするとクラスの視線が少しずつドアへと向かった。
「こんにちは」と、男にしては少し高いなぐらいのイケボを発しながら高身長黒髪イケメンが入ってきた。
すると、一斉に女子達の熱い視線と黄色い声援が巻き起こり、反対に男子達は興味を示す人もいれば明らかにガックリと肩を落胆させる人もいた。
俺はというと慌てて片想い相手の方に目を向け、彼女はいつもと変わらず眠そうに窓の外を見ているだけだったので安心する。
彼はそんなみんなの様子を気にもしていないようで黒板を擦るチョークの音でさえクラシックに聞こえるような優雅な手つきで名前を書いていた。
「僕は転校生の月見 ルカ。ヴァンパイアだけど皆と仲良くなりたいと思ってるから気にせず話しかけてくれると嬉しいな!」
女子の何人かは倒れてるのではないかというほどの眩しい笑顔を添えて、彼はとんでもないことを口にしていた。
「ヴァンパイア……?」
「厨二病か?」
「超イケメンなのに痛い奴……ちょっと萎えた」
などと口々に疑問と意見を漏らすクラスメイト。
無理もない、高校一年生でやるギャグではないと俺は先ほどメロメロだったのに冷め切った目をしている女子達に同情の視線を送った。
「あれ? もしかしてみんな信じてない?
先生ーきちんと説明してくださいってお話ししたの忘れましたね?」
「そうやってーみんな大人になるんだー」
「先生も信じてなかったんですね……。
では、説明させてもらうよ」
そういうと月見さんは耳に付けていた金ピカで十字架の形をしたピアスを外してみせた。
するとみるみる耳がとんがり、なんだかよく分からないけれど目や鼻などの五感が自然と月見さんに惹かれる。なんなんだこれ……頭がぐらつく。
周りを目だけで観察してもみんな同じような顔になっていた。
「すごく美味しそうな匂いするな」と、月見さんはなぜかこっちに向かってきた。そして俺の前で止まる。
「君だ。ちょっとヨクなると思うけど我慢して?」
月見さんの顔がどんどん近づく。でもそれを拒むことはなぜかできなかった。
待って待って待って何が起きてるんだ、近、ちょまじで近い!! あっ顔良。
カプッと音と蜂に刺されたような痛みが首に。
「あぁ初めてだ。こんなに美味しいと感じたの」
月見さんは何も教えてくれない。だんだんと全身に甘い痒さが広がっていく。自然と声が漏れている気がした。でもなにもかんがえられ、ない。
「って何してんだぁぁぁぁぁ!!」と、俺は思い切り腕を振り落として月見さんの背中に強打!!