平凡な男子高校生 尽と愉快なお友達
「豆腐君ー! 血ちょーだい!」
「豆腐君。君は本当に危なっかしいな」
「ねぇねぇ、いつになったらこっち見てくれる?」
「酷いなぁ、ボクはこんなにも本気なのに」
ーーただ平凡な毎日を望んでたのに
俺の人生どうしてこうなったんだぁぁぁぁ!!
俺の名前は尽。
みんなからは漢字が似ていて地味な性格だからとの
ことで凡と呼ばれている。
失礼な話だが、あだ名を付けてもらえるぐらいは
クラスとの関わりはあるので特に不満は無い。
両親がいる普通に温かい家庭で
趣味の合う面白い友達がいて
勉強も運動も地味に普通に出来て
特に困っていることは無い、なんてことない日々。
それが俺の毎日。
「おーっす、おはよ!
んだよ、まーた1人でブツブツ語ってんのか凡?」
「えっ声に出てた?」
「バッチリ」と、俺に
ピースサイン〜ニカッと笑顔を添えて〜
を向けてきた彼は安西元気。
周りからはバンザイだの案外元気だのと
聞いてるだけで暑くなってくるあだ名の持ち主。
それでも俺にとってただ一人の大切な友達だ。
「うわっ痛いやつじゃん……
真夏さんに聞かれてないかな……」
俺は恐る恐る窓際の中間あたりの席に目をやった。
「こっからじゃ耳に入らないから安心しろよっ」
「あ、あはは、確かにそうだな。ありがとう」
もう一度確かめるために俺は真夏さんをチラ見した。
そこには名前に似合う太陽に照らされながら
黒く美しく輝く可憐で麗しい髪を
風でなびかせる白い肌のーー
「……」
「もしかして口に出てた」
「もしかしなくても口に出てた」
「……」
「だ、大丈夫だ! 引いてない! 人間誰しも好きな人ならそんぐらい誇張されて見えるからな……多分」
「気を遣わなくていいよ……」
「お前気持ち悪いな」
「ごめんさっきの取り消し、豆腐メンタルがお味噌汁の具材になりそう。優しさをください」
「悪い悪いっ。まー10年も片想いしてりゃ
そんだけ拗らせててもおかしくないさ。
もうこの際玉砕してきちまえよー」と、彼はトントンとボクの心臓部分をノックした。
「豆腐が崩れる前提で話すのやめてくれる?
俺は冷奴派なんだ」
「オレはグジュグジュの方が好きだな」
「なんの話だよ」
「お前が始めたんだろー?」
「元気が急に理解できない単語を並べるから脳が
ヒートしたんだよ」
「だーかーらー、さっさと告白してこいって
言ってんの! 彼氏がいる訳じゃないんだろ?」
「聞いたことはないけど……」
俺と真夏さんは幼稚園からの幼馴染で
奇跡的に小、中、高と同じ学校に通ってきた。
そりゃ昔は仲良かったけど、中学生になってからは
全く話さなくなっちゃったし今更俺が話しかけても
え、なに、気持ち悪っ……もしかして今まで
ストーカーしてきたの?
とか思われたら俺はもう二度と豆腐が食べれられる体じゃなくなってしまう!!
「有難いアドバイスありがとう。イケメンの助言はとても心強い。しかしだな元気君。
僕はまだ好物豆腐でいたいんだ……許してくれ」
「だからさっきからなんの話をしてんだよ。
まあいいや、あんまりモタモタしてると真夏さん
可愛いんだから取られちゃうぜ?
せっかく幼馴染っていうちょー有利なカード持ちなんだから頑張ってこいよ」
元気はヒラヒラと手を振り自席に戻った。
そりゃ俺だって可愛い真夏さんと青春送れたら最高の人生なんだろうけど、正直今の生活に不満はないし
平和な毎日が一番だ。
そう思ってたのに……。