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97 錬金術を学びましょう 1

 マロンは4年に進級したときステップで空いた時間をすべてを錬金術関係に振り分けた。Sクラスの中で錬金術に進む者はマロン以外はいない。錬金術はそれだけ人気がない。魔力をそれほど必要としない割に習得が難しい。さらに錬金材料が高いことも上げられる。要は手がかかる割に収益が少ない。


「マロン、どうして急に錬金を受けることにしたんだ」担任のプーランクが声を掛けてきた。


 マロンは知人から錬金釜と道具を譲り受けたことと、辺境で薬草を見つけたことを説明した。もちろんリリーから譲り受けたことやレシピの書かれた記録帳は秘密にした。


「ほーー、珍しいな。今度見せてくれ。錬金学の基礎講義は俺だからな。錬金釜の持ち込みは可能だというより自分専用の錬金釜はいずれ準備してもらうつもりだったから良かったな。古い錬金釜は魔力の馴染みがいいが、以前の使用者の癖が残ることがあるから使いづらいこともある。俺が見てやるよ」


頼もしい先生の言葉にマロンは安心もするが1000年以上前の錬金釜を見せることに不安があった。「云われは知らないがもらい受けただけ」で押し通すつもりだ。


 4年に上がりSクラスの顔ぶれが少し変わった。女生徒が婚約や婚姻で数人退学している。下のクラスには家の都合や成績の下降で退学していくものが増えていた。学園が上がれば専門性が高くなり私的に使う金額も増える。お茶会のためのドレスや開くための会場代や紅茶やお菓子、茶器などは主催になると学園内の時は設備品でよいが、学園外になれば生徒の持ち出しになる。


学園では3年まで通えば貴族としての基礎教育はほぼ終了するので、平民や下位貴族などは4年に上がらず、行儀見習いとして格上の貴族家に侍女として働き始める。または婚姻先に学びに通うようになる。


 エリザベスはセドリックと正式に婚約するとローライル家に通いながらユリア夫人から侯爵夫人の仕事を学ぶことになる。


「学園だけは最後まで学びなさい。貴女が自由に楽しむ時間を大切にしなさい。学園の友人は生涯の友になるし、人脈は広い方が良いわよ」


ローライル家のごたごたが落ちつくのを待って、ユリア夫人はエリザベスをゆっくり育てることにしているようだ。これからはさらにエリザベスと共に過ごす時間は少なくなる。そろそろ自分の就職を考えなければならない。王都のタウンハウスにいつまでもお世話になるわけにはいかない。


リリーから譲られたお家がどんなものか分からないが、土地さえあればどうにかなるかもしれない。辺境から離れるのはさみしいが、いずれは自立しなければならない。ジルやスネの事を考えると辺境で仕事に就くことも考えないとならない。


「錬金術師は昔「詐欺師」と言われていた。「石から金塊を作る」と言って多くの人を騙した者がいた。人は石に金を魔力で覆った金塊を作り売りつけた。魔力の悪用だな。すぐに「詐欺師」は捕まり処刑された。それが一人ではなく結構な数の錬金術師が関わっていた。


その暗黒時代から数百年錬金術は正しい評価を受けることがなかった。200年前の流行り病にオイスター伯が錬金薬を作り我が国の窮地を救った。そこで改めて錬金術は見直された。


ここに来た者の中には一攫千金を狙ったものが居たらすぐに立ち去るがいい。錬金術では金塊を作れない。金塊を作るには金を含んだ多量の石と魔導師ほどの魔力を使っても1キロの金塊にはならない。


錬金術ほ多くの知識と微細な魔力操作を必要とする。2代前の王女の病、難病と言われた魔力詰まりなど回復魔法では治らない病の薬が作られている。時間つぶしの講義なら錬金術の選択は勧めない」


普段いい加減な所を見せるプーランクの厳しい言葉にマロンは驚いた。他の生徒も驚きを隠せない。錬金術は魔力はある程度必要。貴族ならほぼ問題ないが、材料は道に生えている雑草や薬草から「ドラゴンの鱗」「人魚の涙」「火山の火鼠」「深海の真珠」・・と際限がない。


基礎的な実習ではそこまでの高価な材料はいらないが、誰もが一度で成功するわけではない。繰り返し錬金するには材料を買うしかない。さらに錬金釜とそれに付随する道具などはそれぞれが個人持ちになる。流す魔力を錬金釜に馴染ませるためだ。魔力は属性によっても癖が違うから他人の魔力が入った錬金釜は使いずらい。


貴族と言えど跡取りでない子息・令嬢に大枚を使う家は多くはない。だからこそ真剣に学ばなければお金を溝に捨てることになる。しかし、学園で錬金術師の2級以上の資格を取れば市井で薬屋を開くことが出来る。さらに特級であれば国の錬金術師として安定した職場と給金が貰える。


市井で薬屋を開くには自腹で材料を準備しなければならない。それらを冒険者に依頼したり錬金ギルドに入ることで材料をギルドで購入することになる。貴族の多い錬金ギルドは高額な手数料を取ることで有名だった。薬師は薬師ギルドが差配しているので錬金術師には素材を下ろすことはない。

同じ薬でも材料や作成の手順が違う。値段も効果も違う。それぞれ棲み分けがなされている。


マロンは錬金釜も道具も譲り受けている。魔力の違いがどう出るか分からないがマロンが新品を全部買いそろえるなど不可能だった。薬草さえ薬草箪笥のおかげで買わずに済む。


「公爵家の次男、ハリソン・マッカロニーと言う。君はどうして錬金術師を目指しているの?女の子は珍しいからつい声を掛けたんだ」


マロンの隣の席の男の子が声を掛けてきた。栗色の髪に黒い瞳背は高いが瘦せ型の生徒だった。他の生徒のささやきが聞こえる。


「マッカロニーって、薬種商会と関係あるのか?・・」

「マッカロ薬種商会は叔父が経営しているんだ。いずれはそこで働く予定だ」

「さすがだな。もう就職場所が決まってる」

「すげー」


「男爵家の長女、マロン・オットーです。親戚から錬金術の道具を譲り受けたので挑戦しようと思いましたので」

「親戚なら魔力も近いから道具は上手く使いこなせるかもしれないな。それにしても親戚の家族に錬金術を継ぐ者はいなかったんだな」

「そうです。わたしは直接譲られたわけではなく工房に残された物をいただいただけですから、基礎から学ばないといけないのです」

「ふ~ん、そうか。僕はおじさんが錬金術師だから興味を持ったところだ。道具はおじさんが揃えてくれてあるんだ」


 周りの生徒が聞き耳をたてている。後から知ったが20名の生徒で女性は3人。錬金術初心者であるが身内に錬金術関係者がいるのが半数ほどだった。マロンはリリーと言う先生がいたから興味を持ったが、そうでなければ錬金科を選ばなかった。プーランク先生の話は錬金術の歴史から成り立ちついて眠くなるような講義が数日続いた。


「座学ばかりの講義内容にそろそろ飽きてきただろう。錬金術に一番に必要なものは材料だがそれを生かせるかは魔力操作だ。ドカンと魔力を流せば錬金釜内で爆発をする。爆弾等を作るときには特に慎重に。さらに高ランクものほど魔力の流し方に工夫がいる。学園では錬金術で出来る初級品を色々作成していく。ここに鑑定スキル持ちはいるか?・・いないようだから出来たものはここにある鑑定器で出来を確認してくれ」


「最初は何を作るのですか?」

「君たちは貴族だからナイフで薬草を刻んだことがないだろうからまずは傷薬からだな」

「傷薬は街の薬師が作ったのと同じですか?」


「良い事に気が付いたな。錬金薬と薬師の作る薬の違いは何か分かるか?」

「薬師は魔力を使わない」

「そうだな。他には?」

「回復ポーションは錬金で作られた物の方が効果が早いし効能も高いと知り合いの冒険者が言っていた」


「そうだ。回復魔法は魔法師が居なければ使えない。料金も高い。貴族の君たちでは分からないだろうが多くの庶民はそう簡単に回復魔法を受けれない。薬師の薬は魔力が関係しないから誰にでも同じ効能が得られるが効果が緩やかで錬金薬より低価格になる。錬金薬は魔力によって効能も効果も変わる。だからこそ鑑定器で薬のランクを決めている」


「属性魔法で変わるのですか?」

「そうだな。中級ぐらいは変わらないが水魔法や木魔法などは調薬に向いている。土や火は金属関係に向いている。風と土は貴金属に向いている。しかしある程度は属性魔法に縛られることはない。君たちが特級錬金術師になるときに考えればよい」


「特級錬金術師・・なれるかな?」

「馬鹿、成れねえよ。特級になるには魔導師ぐらいの魔力が必要になる」

「なるほど・・魔導師になれるのに錬金術師を目指すのは変わり者しかいないな」

「今始まったばかりのヒヨコが特級を目指すな。高すぎる目的は挫折する。せめて中級ポーションが作れることを目的に小さな目標を立てなさい」


まずは調薬に慣れるために薬草の見分け方から始まった。まだまだ錬金釜の登場にはならない。

お読み頂きありがとうございます。

読者様の応援が作者の何よりのモチベーションとなりますので、よろしくお願いいたします!

誤字脱字報告感謝です (^o^)


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