61 3年が始まった
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3年になると朝Sクラスに生徒は一度集まるもその後は専門科にそれぞれが移動していく。アルファリアとレイモンドは仲良く二人で移動教室に向かう。前期は各科の基本を学ぶ。ハリスから貰った「経済科」の本がとても役に立つ。小試験を良い点を確実に積み重ねればステップにつながる。
しかし聞きなれない書式や文章、記号に専用用語にマロンは苦戦した。さすがにおばあ様の教えにはなかったことだった。役所に出すにも書式は守らなければならない。今まで商業ギルドのレシピ登録は皆大人がやっていてくれた。ずいぶん楽をしていた。これからは自分で登録や手続きをやっていこう。
ハリスはこれを学びながらも騎士科の訓練に参加している。今年1年で学院は卒業する。デビュタントを済ませればもうすぐ成人になる。いつまでもマロンたちと遊んではいられない。
「お兄様はデビュタントのパーティーに私を誘うのよ。婚約者がいないから仕方ないけど、マロン、代らない?」 突然エリザベスが言い出した。
「代わるわけないでしょう。デビュタントの相手は婚約者か家族と決まっていると、サービナ夫人が言ってたでしょ。エリザベスさんはハリスさんの未来を潰す気ですか?」
「ええ、そんな気はないけど、マロンは姉妹みたいなもんでしょ。だめなの?」
「ユデットさん、エリザベスに淑女教育をお願いします」
「うふふ、ハリス様は喜ぶかもしれないわね」
「ユデットもそう思う?」
「鈍いエリザベスさんにも分かるほどですか?」
マロンを置き去りに二人は楽しそうに話し込んでいる。その時マロンはエリーナの顔色が悪いのに気が付いた。マロンがエリーナの側に行く寸前にエリーナは椅子に倒れ込んだ。慌ててマロンは駆け寄り意識があるのを確認した。
「マロンさん、救護室に運ぼうか?」
「レイモンド、運んであげて」
アルファリアの声に頷いたレイモンドは軽々エリーナを抱き上げ救護室に向かった。顔に血の気はなかった。アルファリアはレイモンドと共に歩き、その横をエリザベスとマロンが付き添った。
救護室の先生がすぐにエリーナを寝台に寝かせレイモンドたちに教室に帰るように声を掛けた。マロンはどうしようかと思ったが、ここに残ることにした。
「お兄様からセドリック様に伝えてくるわ」
エリザベスはそれだけ伝えると上級生の教室の階段を上っていった。救護室の先生はピーチ先生と言って治癒魔法の使い手だった。マロンの頬の傷も一瞬で直してくれた。
「これで二度目になるわね。この子は?」
「3年のSクラスのエリーナ、、公爵家の令嬢です。顔色が悪く、急に椅子に倒れ込みました。頭など打っていませんが意識はありましたが、、」
「随分痩せているし、魔力が乱れているわね。精神的なものかもしれないわね。何か悩み事があるのかしら?エリーナ、、もしかしてあなたの頬を叩いた公爵夫人の娘?」
「はい、エリーナは1年の頃からロゼリーナの我儘に振り回されていました。この間のことも随分心痛めたようです」 ピーチ先生はエリーナの顔を覗き見た。
「あの子と同級生ということは双子よね。随分似ていないわね。魔力の色が違う?」
「ロゼリーナは魔力がほとんどないと言っていました」
「そうなの?ローライル家は氷魔法の家系だから、魔力量は多いはずだし色は青が含まれるの。エリーナは魔力が多すぎたのね。あっ、気にしないで、彼女の顔色が戻ってきたわ」
そう言って先生はエリーナに声を掛けた。エリーナはぼんやりと目を開けここが何処か分からないようだったので、マロンが簡単に説明をした。エリーナと先生が少し話したころにドアを叩く音がした。
「5年セドリックです。妹に面会に来ました」
いつもの穏やかな声でない。よほど慌てたんだろう。先生の許可後セドリックとハリスとエリザベスが救護室に入ってきた。
「大丈夫ではないけど、病ではないわね。ただ、魔力の流れが気にかかるわ。手紙を書いたから親御さんに渡してちょうだい。かかりつけ医に見てもらって。食事もとれていなかったようね」
「もともと病がちだったので、朝顔色は悪いと思ったのですが、、」
「彼女が大丈夫と言ったんでしょ。お兄さんが悪いわけではないわ。今日はお家にこのまま帰った方が良いけど、保護者を呼びますか?」
「いえ、わたしが家に連れて帰ります」
「お兄様大丈夫です。家には、、」
「エリーナさん、お祖母様の所で休みませんか?わたし、ユリア夫人にお会いしたいです。この間お借りした本もお返ししたい」
「お兄様、お祖母様の所に行きたいです」しばらくセドリックとエリーナは見つめ合ったが、セドリックが折れた。今日の残りの講義を休講の手続きをしたのち馬車でユリア夫人の屋敷に向かうことになった。
ハリスは未婚女性と馬車に婚約者でない男性と乗り込むのは良くないからと付き添いを申し出た。狭いが5人が一度に乗り込んで移動した。さすがにエリーナは一人では馬車に座って居られずエリザベスとマロンが両側から支えていた。
御者はエリーナの事を気遣いひざ掛けやクッションを用意してくれていた。ユリア夫人にはセドリックが先ぶれを出してあったので、屋敷の入口にはユリア夫人まで出迎えに出ていてくれた。セドリックは簡単にユリア夫人と話をするとエリーナを軽く抱き上げ侍女の案内で奥に進んだ。
日当たりの良い部屋に案内され、今準備したばかりの寝台にエリーナは横になった。
「今は静かに休みなさい。話はあとからでいいわ。マロンさん、エリーナの側にいてくれるかしら」
マロンはそのつもりで来たので、寝台の横に椅子を動かし、エリーナの手を握った。エリーナもマロンの手を握り返した。静かな寝息がエリーナから聞こえてきた。
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「エリーナを気遣っていただいてありがとうございます。セドリックお送りしなさい。話はそのあとで」
「お祖母様、救護室の先生から父へ手紙を預かってきています」
「分かったわ、それはこちらから送るわ」
「ユリア夫人、マロンはエリーナさんに付き添うと思います。一度寮に荷物を取りに行かせたいと思います」
「よろしいのですか?エリーナは喜びますが」
「マロンはそういう子です。私の時も側にいてくれました」
「わたしが寮の方の手続きを済ませます。寮に住んでいたので分かっていますから。侍女を一人お借りしても良いですか?帰りの馬車にマロン一人では心もとないでしょうから」
ユリアはハリスの言動に感心した。貴族令嬢の立ち位置を良く理解している。こんな人がエリーナを守ってくれたら安心だと思うが、思うようにはいかないのが恋心だ。エリーナは倒れるほど何を悩んでいるか分からないが、しばらく私のところで療養すればいい。
「エリーナはもっと強く母に言えばいいんだ。ロゼの事ばかり贔屓にする母親など要らない」
「セドリック!」
「ロゼは3年になってCクラスに落ちたのです。「エリーナが手伝ってあげないから」「自分ばかり勉強ができるなんて利己的な姉だ」「エリーナがいなければロゼ一人が公爵令嬢でSクラスに入れたのに」など平気でエリーナに向かって言うのです」
「別邸に移ったんじゃないの?」
「エリーナがいなければ前のように家族三人で本邸で暮らせると言い出してエリーナの部屋を別邸に移そうとしました。さすがに父が止めましたが」
「あの子は切り捨てることが出来ないのね。そのせいで誰も幸せにならないことが分かっているかしら」
「父は、罪悪感だと言っていました。母の辛さに気が付かなかったから」
「そうはいっても、公爵家の当主なのよ。家も納められないで家門を抑えられるの」
「わたしが頑張ります」
「セドリック、あなたは逆に強すぎて相手の心に添えないわね」
「強いことはいけないのですか」 セドリックの声が響く。
「セドリック様、人は誰も強くありたいと思いますが、すべてが貴方のようにはいきません。私の母は、わたしと兄と父を裏切りました。兄はとうに母を諦めたようですが、わたしは随分悩みました。その時マロンが言ったのです。「母親以外の多くの人が貴女を思っていてくれることに気が付いて」と。
弱いことは罪ではありませんが、弱さに飲み込まれてはいけません。セドリック様のように一直線にぶつかることが出来ないものは一度逃げてもいいのではありませんか。逃げて英気を養って再挑戦すればいいのです。エリーナさんには休養が必要です」
エリザベスがセドリックを諭すように声をかけた。
「セドリック、励ましも度が過ぎれば圧力になる。セドリックが母やロゼリーナ嬢に強く出れば、それはエリーナに向かうんだ。分かっているか?強いお前には何も言わないだろう」ハリスが追撃する。
「うぅ、、確かに俺には何も言わないから、母たちは現状を納得していると思っていたが、ロゼがCクラスになったことで焦ったんだろう」
「公爵令嬢は二人いても良いだろ。ロゼリーナさんは随分こだわるんだな」
「ロゼリーナは公爵令嬢ではありません。母の養子ということで実家の侯爵令嬢が本当です」
「セドリック、わたしは聞いていませんよ。オルリール公爵家の養子ではないの?」
「お祖母様は父から聞いていませんか?」
「何も聞いていないわ」
セドリックの話に私は驚いた。確かにエリーナとは似ていないが、マリーナールが確認して、引き取ったのだから間違いないと言っていたはず。ただ、エリーナの事を放置するのが納得できなくて、息子と言い争いになって私は屋敷を出た。息子にも妻とは距離を置いて欲しいと言われたせいもある。
だから親子鑑定してからと言ったのにこんな間違いが起きる。今更籍を抜くことは出来ないだろう。自分の子だと思い込んでいるマリーナールも哀れだが、その母に実子にもかかわらず責められるエリーナが可哀そうすぎる。
「セドリック、ロースターに言づけて頂戴。「エリーナは私が預かる。家族ごっこがしたいならセドリックに早くに当主を譲りなさい」セドリック、わたしはまだまだ頑張れますからね。貴方の手助けは出来ます」
セドリックはわたしに似たのかもしれないわね。もう少し年を重ねればよい当主になれる。のんびり隠居などしていられない。いざとなればこの屋敷を息子に渡し本邸に戻っても良い。マロンを連れてエリザベスとハリスが帰っていった。うちの孫は良き友に恵まれたことにユリアは女神に感謝した。
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