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52 二年ぶりの辺境領

Sクラスの教室に入る地一番にエリーナが声をかけてきた。

「エリザベスさん、マロンさん、お祖母様に会ってくれてありがとう。とても喜んでいたわ。マロンのおばあ様とどのような学園生活だったかあの後色々聞いたの。わたしたちの今と一緒ね。悩んだり躓いたりしながら成長するのね。


 お祖母様がお祖父さまとの結婚に悩んだとは思わなかったわ。だって、とても仲が良かったから。分からないものね。エリザベスさんは婚約者はいるの?」


「いないわね。父の所に話はあるかもしれないけど、学園の間は無理には話は進めないと言ってくれたのたわ。兄がいるから私は比較的自由が許されていると思ってる」


「わたしは妹と母のことがあるから、急がないわ。それより兄の方が心配。兄は生真面目過ぎて融通が利かないから、その辺を理解してくれる人がいいな」


「セドリック様は自分で見つけるわよ。男性だもの女性よりは時間の余裕があるでしょ」


 貴族女性は20歳を超すと行き遅れと言われるらしい。高位貴族ほど早く婚約者を決め、結婚前から婚家に通い家政の仕事を覚える。別に結婚してすぐに当主交代する訳でもないのに、女性だけ理不尽ねと言えば婿に入る男性も同じだと言われた。


「マロンさんはお父様の亡くなった妹によく似ていたのに驚いた。お祖母様は最初に会った時思わず叔母様の名前を言いそうになったと言っていたわ。髪の色も瞳の色も同じなの」


「世の中には他人の空似、世の中には三人は似た人がいると言いますから、でもユリア様は素敵な方でしたから嬉しいです」


「エリザベスさんとマロンさん共に遊びに来て欲しいと言っていたわ。なんか、思い出の品を見せたいみたい。あんなに嬉しそうなお祖母様を見たのは久しぶりです。わたしやロゼが病弱だったから家の家政をお祖母様が代行していたの。

 やっと今の屋敷でゆっくり出来るようになったのは最近のこと。これからはわたしも父の手伝いをしていこうと思っているの。兄が結婚してくれるまで仕方ないわ」


 家庭の事情は人それぞれ。高位貴族は大変だとマロンは思った。それからもユリアに誘われお屋敷に訪問することになった。ユリアは本当におばあ様が好きだったことが分かった。おばあ様の隠れ崇拝者はいたらしいが、あの頃のおばあ様は気を張り詰めていたから誰も声を掛けれなかった。


 それに実家に問題があったからおばあ様は最初から結婚はする気がないと言っていた。ユキの話をマロンは思い返した。マロンと暮らしていたおばあ様はおっとりとした優しいし、ちょっと失敗もする可愛い人柄だった。そんな話もユリアは楽しそうに聞いてくれた。マロンの「古代語」は手紙を渡せたことでほぼ終了してしまった。


 しかし古代は魔法陣が発達した時代だと聞いた。古代は平民にも少なからず魔力があった。だからこそた平民でも魔法陣を書いて魔法を発現していた。おばあ様の本の中にも魔法陣の本が入っていた。おばあ様は魔力なし(魔力が少ない)ことを随分気にしていたんだと思った。


冬の長期休みが近づいた頃、エリザベスから辺境行きの誘いを受けた。

「マロン、今年の冬、わたしは辺境に帰ろうかと思うんだけど、一緒にどうかな?お兄様は一人なら騎乗で帰るけどマロンたちも帰るなら馬車で帰ると声を掛けてくれたの」


「わたしも義両親に会いたいと思っていたから、ご一緒してよいかしら?」

「よろしくてよ。では荷物はマロンのバックでお願いします。荷物が軽ければ馬も助かるでしょ」


 二人は笑いながら王都の土産についていろいろ相談した。そんな時、ハリスから不穏な話が入ってきた。ピンクが辺境の伯爵家の息子の家に行くことになった。婚約とか顔合わせではないらしい。「魔物でも出たら驚いて聖魔法が発現するかも」と以前言っていたのをマロンは思い出した。


 ピンクの彼女は本物の魔物など見たことがないはず。魔物を目の前にして冷静に行動など出来るはずもない。辺境の伯爵家の息子は彼女の言葉を信じているのだろうか。彼は魔物恐ろしさを知っているはずなのに。危ないことをしないでほしい。


 コユキの情報をユキが纏めると「辺境に魔物の暴走が起こるからそれを「聖女」として癒す」と言っていた。魔物の暴走が起きないように適宜辺境の騎士や兵士、冒険者が討伐している。そう簡単に魔物の暴走は起きないと思いたい。ピンクの言葉は不確かだが何かあるかわからない。


 ピンクは直接ハリスには何も言っていない。同じクラスの辺境の子息を利用している。子息の方はピンクにお熱のようで、なんでもピンクの言うことを聞いているらしいが、さすがに実家(伯爵家)には魔物のことは伝えてない。


 王都の人間が魔物の恐ろしさを知らない。下手に手を出して、魔物が興奮したらどうするの。不安しかない。ハリスにはピンクの事を伝えておいた。マロンたちはピンクより早く辺境に戻ることにした。三人とも講義の単位は取れているので、早期休暇に入っても問題ない。ハリスはエリザベスが辺境にいるときはそうやって


 馬車に揺られながら、ハリスはマロンからピンクの話を聞いては「良く分からない女だな」と首をかしげていた。もちろん、「転生者」ということは伝えていない。  


 辺境への道はいつもと同じように宿に泊まり数日かけて雪が徐々に増えていた。しかし馬車道はしっかり除雪されている。


「まったく、父はエリザベスの為に道の除雪をしてある。息子が騎乗で帰るときはほっとかれているのに。まあ、馬も馬車も助かるから良いんだけど」


「お兄様は雪道を走ってきたのですか?」


「そうだよ。辺境の男は雪などに足を取られるのは恥だと言っていたな。セバスさんが頑張ったかも」


「お兄様、セバスさんが訓練だとか言って、兵士や騎士に除雪させたのが正解ね」


 馬車の窓から懐かしい石造りの高い塀が見えてきた。門番が大きく手を振っている。エリザベスとマロンは馬車の窓から体を乗り出し手を振った。「淑女教育は?」と目の前のハリスが呟やいたがマロン達は無視をした。


 馬車が門を通り過ぎるのに合わせ大きな門扉が開いた。馬車は速度を落とすことなく領内に入った。そのまま高台の屋敷に向かった。屋敷前ではマーガレットが侍女を従え出迎えてくれた。マーガレットはハリスとエリザベスに挨拶を済ませると「おかえりなさい」とマロンを抱きしめてくれた。暖かなぬくもりにマロンは家に帰ってきたと実感した。


 その日の夜は帰宅祝いの晩餐を楽しみそののち談話室に移動しピンクことマリアマリアの話をハリスがダウニールとオズワルド、セバスにした。


「随分荒唐無稽な話のようだが」最初にダウニールが声を発した。


「私もそう思ったのですが、マロンの話から、魔物による惨劇で聖魔法を発現し人々を癒す「聖女」になって王子と結ばれる運命だと思っているようです」


「マロンはどう思う」


「現実とは結果が違うのですが、「エリーナの死」公爵令嬢のエリーナさんが魔力過多症で生死をさまよっていたのは本当のことです。しかしこの話は外には出ていない話です。


「レイモンドの兄弟の仲違い」第三王子は確かに上の兄たちに劣等感を持っていたようですが、今はとても仲が良いです。「陣取りのおかげで兄たちと楽しく過ごせるようになった。僕は視野が狭く考えが浅いことに気が付けてよかったと言っていました。


「エリザベスの母親」エリザベスの母親の離婚ことも知っていました。公にはされていないはずです。

公爵家のエリーナの双子の妹のロゼリーナは病弱で母親のもとにいたとなっているのに孤児院から引き取られたことを知っていました。

過去の出来事をなぜ知っているのかわかりませんが、すべてが間違いでないのが気味が悪いのです」


「私もそう思いました。まるで人の運命を知っているような自信に満ちた言い方でした。マロンがいるからSクラスに入れず王子と出会えないと、マロンを責めていました」


「この時期に「魔物の暴走」などと言われれば心配になります」

「三人はそれを心配して帰ってきてくれたのか。今年はなぜか大物の魔物が少ないんだ。気にはかけているが心配はないと思う」


「伯爵家の息子がマリアマリアに夢中なんだ。あれで学園の男子には人気があるらしい。まあ、マロンに向かって言うようなことは言っていないらしい」


「調べたのか?」

「もちろん、寄子が不幸になるのは気が進まない。どうも男生徒にすり寄っては、「あなたのための助言」をして歩いているらしい」


「「あなたのための助言」?」

「ある男性とには、「あなたは悪くない。あなたの努力を私は知っている」それでその男性とは彼女に夢中になった。みたいなことが多々あるみたいです。女生徒には効果がないらしくロゼリーナと火花が散っているという話です」


「あの二人はタイプが違うけど王子狙いですから、相性は悪いでしょうね」

「あの、「聖女」「モブ?」「に・ほ・ん・ご」「り・ば・しー」「てんせいしゃ」という言葉を聞いたことがありますか?」


「マロン?」

「図書館で彼女に話しかけられたとき、意味の分からない言葉を言っていたのです。でも彼女には大切な言葉のようで何度か言っていました。「古代語はに「にほんご」のはずなのになぜ違う」私は「もぶ」だと何度も言われました。「母親が長生きしたから学園の入学に間に合わなかった」などともいっていました」


「よくわからないが、伯爵家の動向は注意しておこう。何があってもこの爺とオズワルドに任せろ」

「マロンたちは私が守ります。一人で森や街に出るのではないぞ」


 そこにお茶を持ったマーガレット入ってきた。男性にはお酒を女性とハリスにはお菓子を並べてくれた。そして真っ白なアイスがガラスの容器に入っていた。


「マロンのレシピから厨房長が完成させました。皆様に食べてもらいたちと願っています。帰ってくることが分かってから張り切って挑戦していました。あとで感想を言ってあげてください。マロンはこちらにいる間に新しいものを考えてあげて、タウンハウスの調理長といろいろあるようですから」


「だからか、やけに寒い季節に冷菓を作ると思ってはいたが、美味しいし、使用人も喜んでいるから良いのだがな。わはは」


 マリアマリアの話が一区切りついてマロンはほっとした。マロン一人では背負えない。ここにはみんながいてくれる。何事もなく学園に帰れることを願うばかりだ。




お読み頂きありがとうございます。

読者様の応援が作者の何よりのモチベーションとなりますので、よろしくお願いいたします!

誤字脱字報告感謝です (^o^)


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