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49 マリアマリア  1

 マロンが古代語に没頭している間に中期試験がやって来た。

「マロン、大丈夫か?寮でも古代語しかやっていなかっただろ。試験問題盗もうか?」

「ユキ!いつから悪い子になったの。もうクッキーあげないからね」


 10本のコユキがマロンの前で頭?を下げている。ついでにホワイトまでマロンに頬にすりすりしてくる。どんな親でも子供には良い親なんだろうと思い、試験問題を盗まないように忠告してクッキーを渡した。


「ユキは優しい子供たちがいて良かったね。大切にしなさいよ」

「分かってる。最近はロゼは静かにしているね」

「試験前だからね」


「あの子頑張らないとAクラスから落ちそうだよ。エリとは違うね。同じように家庭教師がついていたのに努力が足りないのかな?あの子、孤児院に預けられていたから、母親が甘やかししたんだ」


「えっ、体が弱いから別々に育ったんだとエリは言っていたわ」

「侍女たちの話と違うね」

「ロゼにコユキがついて行ったの?」


 コユキの1本がピコンと跳ねた。コユキにも人の家族の秘密は探らないようにと教えなければならなかった。ユキ自体が人の常識に疎いのだから、マロンが気をつけないといけないと反省した。中期試験はどうにか解答できたので、後期試験には気をつけないといけない。中期試験が終わった頃に珍しく学園に編入してきた女生徒がいた。Aクラスに編入した庶民の女生徒だった。


「ピンクブロンドの可愛い子」

「頭が良い」「魔力が多い庶民」

「誰にでも優しく笑顔が可愛い」

「男爵家に引き取られたばかりの初々しい女生徒」、

「貴族のマナーができていない「

「異性に馴れ馴れしい」、、

「珍しい聖魔力持ち」


 ロゼとは違う意味で華やかな編入生らしい。聖魔力の持ち主だが平民として育ったので、魔法の発現はこれからだそうだ。子爵家当主が平民の娘に産ませた子供、母親が死に子爵が実子として引き取った。本妻には跡取りがいるので問題がないらしい。本当にユキたちの情報収集は凄い。


 正妻から見たら自分の息子の一つ下ということは妊娠中の浮気。さらに実子として迎えれば相続権が生まれる。平民と暮らしている間も援助していたのだろうから心穏やかではない。貴族教育を一年ほど受けての学園に編入。成績が良いことはすばらしいが貴族の最低限の作法も身に着けていないようだ。


 もちろんマロンとのかかわりはない。ロゼリーナのように姉を使って文句を言うこともない。ユキから聞いたこともそれほど気にせずマロンは日常を贈っていた。それが図書館に向かうためSクラスを出た瞬間、待ち構えたようにピンクのふわふわの髪をなびかせた可愛い女の子から声を掛けられた。


 Aクラスの編入性はSクラスでも有名で「ピンクちゃん」と言う名で呼ばれている。髪の毛がピンク色だけでなく、多くの男生徒に粉を掛けているからだ。「恋多き令嬢」をピンク令嬢と言う。たた、ピンクちゃんは令嬢でないので、「ピンクちゃん」と呼んでいるとユデットが言っていた。


「あの、辺境のエリザベスさんはいますか?」

「どのような御用でしょうか?」


「彼女、母親に捨てられ心を病んでいるから、私が癒して差し上げたいと思いまして」

「エリザベスさんと知り合いですか?」


「いいえ、私には彼女の辛さが分かるんです」

「そうなの。でもエリザベスさんは心など病んでいませんよ」


「貴女には彼女の辛さが分からないわ。そのせいで性格がひねくれ皆とも上手くいっていないはずよ」


 ピンクちゃんはなんで知り合いでもないエリザベスの事を決めつけるのだろう。エリザベスは母親に捨てられたというよりエリザベスの方が見切りをつけたのが本当だ。


「ハリス様もそんなエリザベス様を持て余しています」

「そんなことないわよ。二人は仲良くタウンハウスで暮らしているわ」


 マロンとピンクが教室の前で言い争ってるのが聞こえたのか、エリーナ達が顔を出した。「どうしたの?」と問いかけてくる。


「なんか良く分からないんだけど彼女がエリザベスさんは心の病でひねくれているというの?」

ピンクはすぐにSクラスから出てきた人に声を掛けた。

「あなたは誰ですか?」


「わたし?エリーナ・ローライル」


「何で生きているの?エリーナは魔力過多で死んでいるはずでしょ。あなたが死んだからロゼリーナは孤児院から戻ってきたはずよ」

「随分失礼な人だね。君は貴族のマナーも知らないのか?」


「あなた、レイモンド、第三王子よね。上の二人が優秀すぎてで辛い思いしているのよね。わたしからの助言です。「レイモンドにはレイモンドの良い所があるわ。人は比べたらいけない。貴方は努力家で真面目ですいずれ王になる器になります」

「「????」」


「おい、講義が始まるぞ。教室に戻れ。おまえはピンク、、マリアマリアだったな。Aクラスに戻れ」


「錬金術のプーランク先生、私をSクラスに変えてください。わたしは皆さまのためになります。わたしがいた方がSクラスはよりよくなります。特にこの方よりましでしょう」


 ピンクはマロンを指さした。人に指をさすピンクの姿に全員が固まる。人を指さし何かを語るなど子供でもしない。先生を含め全員が呆れてピンクを見た。


「そんなに見つめないでください。恥ずかしくなってしまいます。どんなに慕われても、わたしはいずれ聖女、王族としか婚姻できません」


「「?????」」

「ああ、全員が頭がおかしい」と思ったとマロンは感じた。Sクラスの者は顔を引っ込め教室に戻っていったが、ピンクはいまだに教室の前に立っていた。


 マロンは不思議に思った。エリザベスの母親の事を知っているものは少ない。エリーナが魔力過多で療養していたこともあまり知られていないはず。なぜ中途半端に知っている。知っている割には結果が間違っている。


 裏に誰かいるのか分からないが、ピンクはダメだろう。エリーナがマロンの肩を叩いて教室に戻っていくと他の級友もプーランク先生に追い立てられ戻っていく。ピンクはそのままSクラスに入ろうとするも入り口が開かない。


「どうして入れないのよ。おかしいでしょ。わたしはSクラスのはずなのに。貴女がいるから入れないのかしら、モブの癖に、早く消えなさいよ」


 何を言っているのか分からないが「ピンクはロゼより危険」とマロンは認識した。騒ぐピンクを捨て置き図書館に向かった。


 マロンが図書館に向かった後でもSクラスの前で騒ぐので、ピンクは教師に連行されAクラスに戻された。こんな事を繰り返していたら級友とも上手くいかないのではないかとマロンは思った。


エリーナは「死んだはず」と言われ気分は良くない。ロゼリーナがピンクに何か話したのかもしれないと言っていた。


 レイモンドは俺は臣下降籍するのは決まっているし、王になるつもりはない。王太子はもう王族の仕事を引きついている。自分にそんな気概はないし、器も欲しくない。ましてたとえあのピンクが聖女?になっても嫁にはしない。兄達にも気を付けるよう伝えると話した。エリザベスは丁度廊下に出てこなかったので不快な思いはしていない。良かった。


 よほど教師に指導されたのかその後はSクラスに突撃しては来なかった。しかし、なぜかマロンは彼女に図書館で出会った。図書館など縁がなさそうなのにマロンの座る席に座っていた。古代語の本を開いている。読めるのだろうか?


「あら、あなたあの時のモブ、なんであなたが古代語の本を持っているのよ」

「祖母からの贈り物です。今古代語の翻訳を試みているのです」


「モブができるわけないわ。古代語は「日本語」なの。わたししか解読できないはずよ」

「にほんご?」


「そうよ」

「今開いてる本は読めるの?」

「読めるわけないでしょ。ここにあったから開いただけ」

「それ、古代語の本」


「何言ってるの。こんな文字知らないわ。英語や韓国語、中国語でもないわ」

「・・・つまり古代語は読めないんですね」

ピンクは口惜しいのか静かな図書館でぶつぶつ言いだした。


「ロゼはいたのにエリーナは死んでいない。王子は落ち込んでいないわ。Sクラスに入れない。やはり入学式から学園にいないと上手くいかないのね。母親が長生きしたのがいけないのね。

 トランプもリバーシーはもう登録されているし、プリンやマヨネーズまであるなんて、きっと私以外の転生者がいるせいで話が変わったに違いない。あんたリバーシーの登録者は誰か知ってる?」


「声が大きいですよ。「り・ば・し・ー」?って何ですか?」

「やっぱりモブは役に立たない。古代語を解読して王様に褒められるはずだったのに。やっぱり聖魔法の発現ね。魔物でも出たら驚いて発現するかしら。他の方法を探すしかないわ」


 ピンクの隣に図書館の司書が立ってじろりとピンクを睨んでいる。ピンクは気にせず立ち上がり走って図書館を出ていった。


「もう来ないと思います」とマロンは小さな声で司書に伝えた。司書は眼鏡越しに古代語の本を指さし「上手くいってる?」と問いかけた。


「この本は魔道具のことを説明しているようです。「魔法陣」と言う言葉が何度も出てきます。今の魔道具とは違うみたいです」


「古代語の時代の記録は少ないのよ。この本も古代の事をいつ書いたか分からない。でも夢は見れるわ。楽しみなさい。数年に一人は古代語にはまるわ。わたしは本が好きな人は幸せだと思う。何人もの人生や物語を知ることで、いくつもの人生を経験できることは素晴らしいと思う。あら、図書館はお静かにでしたね」


 そう言って、司書は受付の席に戻っていった。ピンクは「危険近寄るな」です。「母親が長生きしたのがいけない」なんてこと言うんだろう。この世界が自分が作り出していると思っているのだろうか?ロゼリーナの言いがかりが可愛く見えてきた。

寮に戻るとユキがワクワクして待ち構えていた。図書館の話をホワイトから聞いたのだろうか?


「マロン、面白い奴が現れたな。随分絡まれたみたいじゃないか」

「確かに面白いけど、人を不快にすることに長けているわ。今の所悪意はないみたいだけど、あれが本気なら大分困ったピンクちゃんになりそう」


 ユキは様子見だなと言いながら、コユキに何か指示を出していた。ホワイトはマロンの頬をすりすりしながら癒してくれていた。

 


お読み頂きありがとうございます。

読者様の応援が作者の何よりのモチベーションとなりますので、よろしくお願いいたします!

誤字脱字報告感謝です (^o^)


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