33 学園入学前 2
サービナ夫人の指導のもと、お茶会の目的に合わせ招待客を決める。招待状の準備、会場の準備として、野外か屋内かで大きく変わる。テーブル、椅子、飾りつけをする花などを決める。季節で使用する食器類も変わってくる。主催者は席順からお茶会の流れに話を盛ることも大切。ある程度慣れれば屋敷の使用人に任せてることもできるが、基礎は理解しておくことが大切であると言われて、エリザベスは悪戦苦闘していた。
エリザベスはいずれ婚姻して女主人として婚家を盛り立てねばならない。今なら失敗しても良いから人任せにせず自分でやってみることが大切らしい。マーガレットのお勧めらしく、サービナ夫人は厳しいが愛のある指導だった。本来は母親が補助に入るが、エリザベスにはいないので、マーガレットとマロンが入ることにした。
タウンハウスでのお茶会は使用人にしてもほとんどの者が初めてだったので、使用人一丸となって取り組むことになった。もちろん予算はマンローニから提示されている。マロンは一口大のサンドイッチ、焼き菓子、「ぷ・り・ん」のフルーツ添えの三品を調理長に提案した。マロンが作った物を試食してもらいお茶会に出せれるか判定してもらう。
筆記帳に書かれていた「魔法の黄色いソース」をまずは試作した。材料はそろっている。あとは腕力だ。卵黄と塩と酢をもったりするまでフォークを2本でよく泡立てる。そこに植物油を少しずつ追加しながらクリーム状になるまでよく混ぜる。野菜をつけて食べれば凄く美味しい。これをハムや卵に入れてサンドイッチを作る。焼き菓子は王都の味を知ってる調理長にお任せ。あとは「ぷ・り・ん」
調理長だけに「ヒート」での作り方を説明した。新しい食感に夢中になった調理長にマロンの失敗例を伝えると徹夜して「ヒート」での「ぷ・り・ん」に近いものが出来た。それに、砂糖の茶色いソースをかけて、果物を添えて出すことになった。調理長は魔石コンロの微調節で鍋の温度を管理したようだ。これで人数が増えても大丈夫になった。
侍女長のルリーニは侯爵家の次女であったので、お茶会を主宰する経験はなかった。いずれマーガレットが辺境領に帰った後を考えると重責に震えた。サービナ夫人に教えを受け、高位貴族の社交について学ぶことにした。準備に3か月かけたお茶会はエリザベスの努力で上手くいった。お土産に房飾りで出来た髪飾りを手作りして渡したのも喜ばれた。招いた令嬢の瞳の色と髪の色から房飾りの色を決め、刺繍したリボンと合わせたものだった。
もちろん、提供したお茶やお菓子なども、皆11歳以下の女の子、美味しい物には目がなかった。「甘くて柔らかいは正義」は何処も一緒だった。今回のお茶会に参加した方とエリザベスは良き友人になれたようだ。それからはエリザベスがお茶会に呼ばれることも増えていった。
「マロン、手土産に「ぷ・り・ん」を持って行っていいかしら?」
「いいわよ。調理長に相談して作ってもらいましょう」
「マロン、登録した?してないんでしょう。だめだからね。ちゃんと登録してください。マーガレットが言っていたわ。マロンはしっかりしているようで抜けている。「知識はお金」になるのよ。マロンのことだから養父母に迷惑かけないために学園に行ったら寮生活して、合間に働こうなんて考えているでしょ。お兄様に聞いたら無理だって。登録料をしっかり稼いで生活費にしなさいよ。進む分野では本代も高額になるから」
「、、はい」
「マロンはロバートさんやお父様からも言われてるよね。ちゃんと登録して利益を得るのは正しい事なの。反対に誰かが勝手に自分が考えましたと登録したら、マロンでさえ使えなくなるんだよ。おばあ様からの知識を大切にしないといけないと思う。それに「ぷ・り・ん」は最高の食べたいものです」
「そうね。ロバートさんと相談するわ」
「父やセバスさんも支援は惜しみなくするだろうけどマロンが気を遣うでしょ」
マロンは遠慮せず商業ギルドに登録することにした。ただ「陣取り」などと違い食べ物の登録はお店を出すなどしない限りそれほど広がらないので、収益にはならないと思っていたら、お茶会に参加した家からの問い合わせで、静かに「ぷ・り・ん」は広がっていった。
時間が空けばマロンはロバートさんのところで、商売について学ぶことにした。自分の登録したものがどこで作られ、商品をどこで売りさばくかも実際目にすると驚くことばかりだった。同じレシピでも使うもの、作り手により随分出来上がりが違う。
「マロンの手作りは高級魔蜘蛛の糸を使っている。まずそこから違う。買手にすれば魔蜘蛛の糸でできたもののほうが欲しいが、買えない場合だってある。また手軽に流行に乗りたいものもいる」
「糸はそれほど良くなくてもいいということ?」
「陣取りだって、丁寧に黒石と白石から作られたものが欲しい人もいれば近所の子供が遊びに使いたいものでは材料が違うんだ。これを見てごらん」
「ああ、そうなんだ。辺境で作ったものはそれなりのものを作っていたからそのままかと思った」
「辺境産は名品の産地扱いだ。良い材料で丁寧に作られている。ただこれだけでは買えるものしか楽しめない。だから街の工房が手軽に使える材料で量産品を作り、商会で売るより祭りや街の雑貨屋で売る。陣取りの楽しみを知れば、よい駒が欲しくなる。そうやって商品は売れていくんだ」
「一度買ったら終わりではないのね」
「終わりにさせないよう商売をうまく動かすんだ。これが楽しいんだ」
マロンは帳簿のつけ方を教わりお金の流れを知る。利益だけを追い求めてもそれだけで商会は大きくは成れない。人を育て、商売仲間との横のつながりに目を配り、支払う賃金は適正でなければならない。怠けている職人や従業員を見つけるのも仕事のうちらしい。
以前ロバートさんが辺境に行く羽目になったきっかけの商会の人は、「魔法の鞄」目当てに就職して、あの時鞄ごと逃げ出した。しかし、個人登録されているうえに「迷子探し」の魔法がかけてあったのですぐ見つかった。
犯人を雇ったのが現在の商会長、ロバートさんの息子だった、友達だからとよく調べもしないで雇い入れ辺境への重要な仕事を任したのが失敗だった。犯人の貴族家は散財の挙句借金が多く、犯人自体次男で遊び暮らしていたところに借金取りに追われることになった。
人のつてを借りて商会に入り込むことができたが、そう簡単に高給取りにはなれない。それなら、高級品を盗んで売りさばけばよいと「魔法鞄」に手を出した。すぐに見つかり、辺境への賠償金と商会への違約金等で鉱山送りとなった。
息子さんは父親の商会を継いで、順調だったのがいけなかった。父には怒られ、重役にはまだ商会長はまだ早い。ロバートに戻せと言われている。さらに隠居のはずのロバートが新しい商品を次々売り出す。「隠居などしなくていい」と言われるのも仕方ない。商売とは難しいものだとマロンは良い勉強をしたと思った。
秋の終わりにオズワルドがタウンハウスに訪れた。オズワルドは年に四度、王宮で開かれる重要な貴族院会議に参加している。貴族院会議にはエディン国の政務を司る宰相を中心とした大臣(王宮貴族)とオズワルド以外の四公爵と選ばれた八侯爵によって開かれる。
マロンにしたら雲の上の上のことだが、いつかはハリスがそれを担うのかと思ったら「陣取り」で負けたと騒ぐ姿からは想像できない。エリザベスは国を支える人ときっと婚姻を結ぶ。その人を支えるため、延いては国を支えるために多くの事を学ぶ。マロンは自分の身近なことしか見てはいなかったと反省した。おばあ様の言っていた「広い視野で考える」ことは学園で学ぶ目的になった。
忙しいオズワルドはそれでも、サービナ夫人からエリザベスの生活や学習の成果を確認していた。昼間出かけるも夜はハリスも呼び寄せ家族で過ごす時間を作っていた。
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