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30 王都へ

 雪解けと同時にマロンとエリザベス、訓練と討伐で充実した休暇を過ごしたハリスは王都に向かった。

その数日前にマロンはオズワルドとセバス、マーガレットと面談をした。


「ローガンと家庭教師からマロンは、王都の学園に入れる魔力と能力、学力があると聞いている。進学する気があるなら私が推薦状を書く。マロンはどうしたいか考えてみてくれ」


 オズワルドからの声掛けだった。王都に行って、商会で働くか他の仕事を見つけるか、学園に通うかマロンは悩んでいた。ロバートは働くのはいつでもできる。学園で学ぶことも良い刺激になる。シャーリーンは学園で自分の生き方を見つけた。マロンにも良い機会だ。支援金は出すからと言われていた。


「マロン、わたしたちの養子にならないか?わたしたちには子供がいない。領地なしの男爵位だが平民で入学するより学園では過ごしやすいだろう。来年一年エリザベス様の側にいるにも爵位はあった方が良い。負担なら学園卒業後離籍してもいい。俺の訓練にもよくついてこれた。自慢できる娘だ」


「マロン、この一年で辺境の暮らしを豊かにしてくれたわ。貴方は優しすぎるほどお人よしよ。とても心配なの。王都に行って世間を知るには学園の時間は有効よ。そのためにも貴族籍はあった方がいいわ」


 マーガレットはしばらく王都のタウンハウスにエリザベスとマロンの入学の準備を手伝うために留まることになっている。タウンハウスは基本辺境から王都にいる間の宿程度しか使用しない。それでも立場があるので王都に屋敷は構えなくてはならない。


 2年前にハリスとソフィーナが住むため使用人を補充してある。しかし、ハリスが学園の寮生活を始めたので、ソフィーナ一人しか住んでいない。そのソフィーナは本来は辺境領に戻るはずが戻らずにいた。

タウンハウスの細かい管理をマーガレットに頼むことをオズワルドが決めた。


 オズワルドは数回王都に短期に出向いていたので、それなりに様子は分かっているが、エリザベスが学園卒業までの最低6年はエリザベスが困らないようにしておきたいと思ってのことだった。マロンの外堀は確実に埋まり、学園にはいる前の1年はタウンハウスでエリザベスと学ぶことになり、そのまま学園に進学することになった。


「マロンがエリザベスと一緒に学園に通ってくれれば、3年間は学園で楽しく過ごせそうだ。「陣取り」みたいな楽しい物を発明してくれるとなお良いな」


「そうよね。マロンがいれば楽しいわね。新しい美味しい物がきっと食べれるわ」


 そんな会話でマロンは背を押され王都に出向く馬車に乗り込んだ。ハリスは学園の開始と同時に寮に戻る。休みの日はタウンハウスに戻ってくれるようだ。妹思いの兄である。二人の母親のことは誰も口にしない。マロンも口にはしないがタウンハウスにマロンが住むことに不満は出ないかと心配になる。


 侍女のメリーは結婚で王都に一緒に来れなかったが、カロリーヌが今回付き添ってくれることになった。カロリーヌは男爵家の次女でメリーと共にエリザベスの侍女として働いてきた。結婚のお年頃なのに王都に行ってみたいと親を説き伏せ志願した。今頃後ろの馬車の中で侍女の心得をマーガレットから学んでいるだろう。


 ハリスは得意げに馬車で通り過ぎる町や村について説明してくれていた。エリザベスは初めての街の風景に目が輝いていた。ロバートとの旅の時と違い、すべて食事つきの宿に泊まっていた。夜には新しい「数字札」を使って「魔物抜き」「数字合わせ」「絵合わせ」「数字並べ」などして遊んですごした。


 マロンの住んでいた町を通り過ぎるとそこからはマロンにとっても初めての風景だった。マロンの住んでいた街は王都のはずれなので、まだ農地や山や森が残っていた。しかし、人の行き来が多いせいか道もしっかりして見晴らしがよい。街は少しずつ大きくなる。民家は密集し建物は大きくなっていった。


 「王都は南にある王城を中心に作られている。王城の近くには政をする高位貴族が住む。大きな屋敷と庭を有している。その周りに中位、下位貴族が住む貴族街が形成されている。それらの周りに王都の中心的な商店などの賑やかな本通りが四方に走っている。王城から遠くなるほどに庶民や職人の住む庶民街が作られているんだ。

 学院は東の貴族街にあるんだ。エリザベス達は屋敷から馬車で通うんだよ。時間はそれほどかからないからね」


「歩いては通わないのですか?」


「たとえ貴族街でも女性が歩くことはないね。僕も最初は驚いたが、それが貴族の常識らしい。でも、お忍びで、護衛を連れて商店街に出かけるのはあるみたいだよ。俺たちは庶民服に着替えグランド商会に何度か出かけたことがある」


「男の人は結構自由に過ごしているのですね。エリザベスも出かけてみたい。マロンも行ってみたいでしょ」


「王都に着いたらグランド商会で働こうと思っている」


「「えっ、」」


「学院卒業したら平民に戻るかもしれないし、何か仕事に就くかもしれないから事前学習かな?不思議ですか?生粋の貴族じゃないから結婚とか考えていない。エリザベスを見ているだけで貴族令嬢は荷が重い上に貴族の奥様なんて出来ないと思うわ。でも、せっかくの学園に行くんだものしっかり学ぶわ。「知識は力」とおばあ様が言っていたもの。おばあ様の人生の転機は学園生活で迎えたらしいから楽しみにしている」


 ハリスとエリザベスがマロンの希望に満ちた顔を驚きの目で見ていることをマロンは気が付かなかった。

お読み頂きありがとうございます。

読者様の応援が作者の何よりのモチベーションとなりますので、よろしくお願いいたします!

誤字脱字報告感謝です (^o^)


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