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27 辺境領に雪が降る

 なぜ今地面に倒れているかマロンは分からなかった。目の前にいたセバスが一瞬の動きでこうなったのは分かった。気を使っているのか何処も痛くはない。横で立っているエリザベスも目を丸くしている。


「お嬢様方は淑女として優雅でなければなりません。しかし美しさは罪になります。どこに暴漢が居るか分かりません。そんな時も辺境の淑女は泣き寝入りなどしないよう、護身術を身に付けます。王都の輩など辺境の淑女の敵にはなりません」


 セバスの言っていることは分る。エリザベスが学ぶ必要は分かるが、なんでマロンが参加しなければならない。マロンは「辺境の淑女」ではない。「学友」とはそこまで付き合うのかとマロンは困惑した。


 「さあ、セバスにお二人でかかってきてください」


 セバスの言葉で二人で戦いを挑むもことごとく地面に転がされた。訓練場に居る兵士が「可愛そうに」と訴えている。さすがに初日1刻ほどで マロンたち二人は起き上がれなくなり、お茶の時間には手が震え紅茶のカップを持つことが出来なかった。それを見たマーガレットが怒り心頭でセバスのとこに向かった。


「お嬢様、大丈夫ですかね。相手はセバスさんですよ。家政婦長は怪我しませんか?」


「大丈夫よ。あの二人は夫婦ですから、今頃セバスがしごかれています。初めての訓練であれはないと思います。新兵訓練と同じだと言っていました」


「だから、周りの兵士が「可哀そうに」といった目をしてたのですね」


「きっと明日からの訓練は違うと思います」


 エリザベスが言う通り、まずは訓練場を歩きと走るを繰り返した。先ずは体力が無さすぎるからそこからだとセバスは説明した。1刻で起き上がれないのは情けない事らしい。それにひと月かけた。その後、ドレスを着ていても対応できる方法を選んで体術を学んだ。腕を掴まれた時の払い方やひねりを加え相手を動けなくする方法。淑女の武器である扇子を使った防御と攻撃。それに魔力を腕や足にに集めて力を強くする「身体強化」を学ぶことになった。


「身体強化」のスキル持ちは自由自在に各器官や四肢、体幹を部分的に強化できるうえに全身強化もできる。戦闘職には欲しいスキル。しかし、スキルがなくても訓練しだいで魔力さえあれば強化は出来る。逃げ足が速くなったり、相手の捕縛を外すこともできる。扇子を投げつけたり、相手を打ち付けるにも効果が高い。しかし、基本淑女はそんなことを習うことはない。この時は知らなかった。


 セバスは訓練に置いて「脳筋」だった。頑張るエリザベスとマロンに気を良くしてどんどんレベルを上げていった。ついにエリザベスに打ち身の痣ができた時点で訓練は終了になった。もちろんマーガレットの判断だった。マロンとエリザベスはほっとした。しかし二人は知らない。二人は10歳にして新兵などに負けない魔法の防御と身体強化を身に着けていた。


 しばらくセバスの顔を見ていないが、マーガレットに叱られたようで意気消沈していると聞いている。エリザベスは基本何処に行くにも護衛と侍女が付き添う。エリザベスは火球で相手を攻撃できる。本来街中で魔法は禁止されているが命に関わればそんなことは言っていられない。


 しかしマロンは一人で行動する。危険が多いいのはマロンだった。王都の治安が悪いのは路地裏やスラム街。しかし、特殊な才能でお金を稼げる少女など「どうぞ攫ってください」と言っているようなものだから、マロンはしっかり護身術を身に着けるようにマーガレットに言われていた。 


 辺境の秋が終わると寒い冬が来る。話でしか知らない「ユキ」の雪が見れる。魔道具の魔石暖房用の魔石とひざ掛け用の魔兎の毛皮が手渡された。ロバートさんからは冬用の厚手の服が送られてきた。雪が積もれば外に出て雪玉を投げたり雪人形を作った。髭をつけたダウニール、赤髪のオズワルド、細いセバス、似てはいないが誰が見ても分かる雪人形に仕上がった。


 マロンは雪を山のように集め中を掘って雪小屋を作った。入り口を狭くし、中に子供用のイスとテーブルを置いた。思いのほか中は温かく、お茶を中で飲むことを計画した。持ち運びの出来る魔石暖房機が大いに役立った。


 それを見ていたダウニールが雪小屋の快適さに気を良くして、訓練と称して領地の空き地に雪小屋を作り領民に公開した。雪の冬は家の中にこもりがちな大人でも子供と一緒に楽しむ雪小屋は「陣取り」でもにぎわった。ユキは喜ぶかと思ったら「寒いのは苦手」と言ってマロンの襟巻の中に隠れてしまった。


 マロンは四角いカードに四色の色で数字を1から10まで書き、一枚魔物の絵を付け加え、「数字札」を作り冬の時間を過ごした。「魔物抜き」に木札を裏返して、数字や色合わせる。「数字合わせ」「絵合わせ」「数字並べ」をして過ごした。


 夕食後の団欒に大人も混ざり楽しいものになった。これは簡単にできるので廃材で多数作り雪小屋に配布した。数字が分からない子は色で遊び、そのうち数字を覚えるようになる。遊びながらの学びとなった。


 新年になる前にハリスが帰ってきた。背が伸び少し大人になっていた。寒い玄関でエリザベスはハリスを迎え、お互いを抱きしめながら、悪戯をするような目でハリスはマロンに告げた。


「マロン、ただいま。「陣取り」すごい売り上げだよ」

お読み頂きありがとうございます。

読者様の応援が作者の何よりのモチベーションとなりますので、よろしくお願いいたします!

誤字脱字報告感謝です (^o^)


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