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24 魔法とお菓子作り

 美味しく「黄金のパン」を食べたエリザベスは元気になった。オズワルドとよく話し合ったようだ。貴族のことは分らないが、話し合うことは大切だ。来春には王都に行けば今のような時間を持つことが出来ない。マロンももっとおばあ様と話せばよかった。『シャーリーンはマロンに弱さを見せたくなかったんだ。だからユキに話したんだと思う』ユキが囁く。 


「ところでマロン、マロンは魔道具がないのにどうやってお水を温めたの?」


 夜中のことで思わず「ヒート」を使ってしまった。マロンは魔力が少し多いので「生活魔法」の使い勝手が良いと伝えた。エリザベスは父親と同じ「火魔法」のスキル持ちだった。魔力量は貴族としては多い。魔力暴走しないために早くから魔法学と魔力操作を習っている。


「とても便利よね。わたしにも出来ないかしら?今やったら部屋を燃やしてしまうわね」


「エリザベス様は出来なくて良いのです。自分でお湯を沸かすことはありません。屋敷を燃やすことの方が困ります」


 神妙にメリーが忠告をした。このままほって置いたらエリザベスは試してみるかもしれない。エリザベスは今は落ち込んでいるが、本来慎重派ではなく活発な方だ。マロンはエリザベスに次の課題を出すことにした。


「それより、お菓子を作ってみませんか?」


「わたしにも出来るかしら?」


 エリザベスは言いつつも、目がキラキラしてきた。美味しい「黄金のパン」を食べたばかりだ。気持は「お菓子」に向いたが、貴族令嬢が厨房に出入りすることではないかもしれない。


 エリザベスの気分転換にもなるし、皆に配ればきっと喜ばれる。厨房長と家政婦長に話をして、安全な工程に参加することにした。さすがに素手で小麦粉を練るのはダメだった。しかし、大小様々なカップで型を抜くだけでも初体験らしくフリルいっぱいの付いたエプロンをエリザベスは身に着け挑戦した。


 型抜きと言っても侮れない。均等の力で押しきらなければならない。そして型を抜いた焼き菓子の種に串で簡単な絵をかいたり、文字を書いてみた。本来は生地を手で丸めて平らにするのだが、均等の厚さにならなかった。エリザベスはワクワクしながら出来上がりを待った。その間に、贈り物用の小さな袋を作り、感謝を伝えたい人に手渡すことにした。形が崩れたり焼き過ぎたものは使用人のおやつに回るらしい。


 エリザベスからオズワルド、執事のハーマンや家政婦長のマーガレット、専属侍女たちに焼き菓子は手渡された。手渡されたお菓子を皆がとても喜んでくれた。「エリザベスの手作りのお菓子を食べるの勿体ない」と言って、オズワルドはハーマンの小袋から1枚貰って食べていた。それを知ったエリザベスがオズワルドに「自分の物を食べてください」といって、オズワルドの小袋から2枚取り出しハーマンに手渡した。


 この日からさらにエリザベスとマロンは姉妹のように共に学び色々なことを経験していった。エリザベスはマロンの「ヒート」を魔法学の教師ローガンに話してしまった。見本を見せることになり陶器のコップに入った水を温めて見せた。


「なんと繊細な魔力操作だ。生活魔法とはいえども、それも魔法。魔力が少ないから出来る技か。もっと繊細に魔力を絞ればできるかもしれない」

 

 ローガンは新しい刺激に火が付き、マロンは巻き込まれながら 魔力操作の訓練に参加することになった。ローガンは「業火のローガン」と言われる辺境騎士団の魔法師だった。エリザベスより「ヒート」に夢中になりいくつものカップを燃やし破壊していった。さすがに部屋の中で試さなかったので火事にはならない。「業火のローガン」は魔物に向けて火魔法を放つ後援職の仕事をするらしい。


 ローガンは最後まで「ヒート」は出来なかった。「生活魔法恐るべし」と言われたが「業火」の方が恐ろしい。エリザベスは「業火」の取得はせず魔力操作のために小さな火球を出し、動かす訓練をしていた。魔力を絞らなければ小さな火球は作れない。そのうち小さな火球を同時に2個出すことが出来た。それぞれを別々に動かすことは出来ないが、同じように動かすことができ、的に向けて放つまでできるようになった。


「お嬢様、このまま訓練を積めば魔物討伐にも出向けます」


 嬉しそうに話すローガンに、エリザベスとマロンは引き気味に微笑んだ。いくら辺境伯の令嬢でも、魔物討伐に参加するつもりはない。今の力があれば学園での実技は合格できるので、講義終了にしてもらうことにした。ローガンの報告にオズワルドでさえエリザベスの火球操作に驚いていた。オズワルドはエリザベスには普通の令嬢でいてもらいたいと思っている。ローガンは無事騎士団に戻ってもらうことが出来た。


 マロンは小さな火球を1個しか出せなかったが自由に動かせ、的に当てることが出来た。さらに火球は的の裏に回って的に当たった。的を壊すほどの力はない。夜になると「ライト」を動かす訓練をすることにした。悪戯をするには火球より「ライト」の小さな光の方が面白いからだ。いつかハリスとエリザベスを驚かせようと訓練を怠らないマロンだった。

お読み頂きありがとうございます。

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誤字脱字報告感謝です (^o^)


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