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20 美味しいレシピは秘密が多い

 ロバートの熱は3日ほどで下がり起き上がることが出来た。食欲が戻ってきたのでマロンは、以前からユキに催促されていたお菓子を作ることにした。筆記帳に書かれた物でポシェットの中にある物を使う。おばあ様が食べたいもの3番目だと書いてあった。


 エリザベスは家庭教師が来ているので、マロンは一人で材料をかごにいれて、作り方を紙に書き移して厨房に向かい中の人に声を掛けた。厨房はロバートの病人食の食器を片付けに行っていたので顔なじみになっていた。侍女に言えば片付けてくれるが、ロバートが侍女が側にいると気を遣い食事ができないので、マロンが進んで手伝いを申し出た。


「こんにちは。厨房長、魔石コンロを貸してください」


「何をするんだ?」


「ロバートさんにお菓子を作ろうかと思っています。でも、初めてなので上手くいくか分かりません」


「炊事の経験はあるのか?」


「はい、家では私が食事を作りました。パン屋でも働いてパン作りも経験済みです」


「ほほ、、必要なものはないか?」


 厨房長の言葉に甘え、卵とミルクをお願いした。先ずはあわあわの実を割り中身を磨り潰しミルクと卵と少しの砂糖とよく混ぜ合わせる。その後小麦粉を篩にかけざっくりと混ぜ合わせ種を作る。魔石コンロに魔力を流し、フライパンに油脂を薄く塗り、中火にして、種を平たく乗せて焼いていく。焦がさないように慎重に焼き具合を見る。マロンの頭の上で『マロン、良い匂いがする。焦がすなよ』『そろそろ引っくり返せ』ユキが煩い。


 お皿には薄茶色に焼けた薄焼きパンが1枚焼きあがった。あとは続けて焼き上げるだけ。ほっとしたところでマロンの周りに人がいることに気が付いた。


「マロンさん、試食分はあるかい?材料なければ準備するから作ってくれないかい?」


「いいですよ。あったかいうちに食べた方が美味しいそうです。バターを乗せたり、蜂蜜を垂らすともっと美味しいです。試食渡しますから蜂蜜分けてもらえませんか?」


「おお、じゃ、今できたものを貰っても良いか?」


 そう言うと厨房長は新しい皿を置いて1枚の薄焼きパンを皆で食べるようだ。一口食べれるかな?そう思いながら次を焼いていく。『ユキの分がなくなる』頭の上のユキが不貞腐れた。マロンは残りの種を全部焼いて3枚の薄焼きパンを仕上げた。バターを薄焼きパンに塗る。三枚重ねた上から貰った蜂蜜を垂らして出来上がり。とても美味しそうだ。


「マロンさん、作り方を教えてください」


 厨房長の言葉に驚いた。パンはパン釜で焼くものと決まっていた。このように薄焼きにするなど考えたことがなかった。パンは厚くふかふかが常識だった。それなのに簡単に甘くふかふかとして柔らかいパンが出来る事は画期的だった。バターや蜂蜜とも相性が良い。これなら焼き菓子以外のお菓子として、出せれると思うと言われた。


 とりあえず温かいうちにロバートさんに食べてもらいたいので、後程と伝え部屋に戻った。ロバートさんはとても喜んでくれた。お茶を淹れてくれたメリーさんにも遠慮したが食べてもらった。一口口に入れたロバートは珍しいものを見るように持ち上げ見つめた。


「これはマロンが考えたのか?」


 どうしよう。『そうだといった方がいい。筆記帳のことは秘密だ』ユキが囁く。


「おばあ様の」


「シャーリーンさんのレシピですか?」


「はい、おばあ様が作り方を教えてくれました。厨房長がレシピを教えて欲しいと言っています。教えてよろしいですか?」


「ああ、ただ他には広めないようにした方がいい。あとは任せなさい」


 マロンは良く分からないが、きれいにレシピを書き上げ、厨房長に届け、実演をして作り方の説明をした。そして夕飯の最後に薄焼きパンを2枚重ねたものを四つに切り分けた一つをお皿に乗せ、季節のカットフルーツと蜂蜜を掛けて見た目も美しく出してきた。


「これは?パン?」オズワルドが厨房長に尋ねた。


「これはパンではありますが、パン釜で焼いたパンではありません。マロン様のおばあ様のレシピから作った物です。食してみてください。デザートにも良いですし、丸ごとであれば軽食にもなります。手軽にできます。盛り付けを工夫すればお客様にも出せれると思います」


「お父様美味しいですわ」


「王都でも食べたことはない」


「あの堅物のシャーリーンのレシピとは驚きだ。ロバートは知っていたか?」


「いえ、全然知りませんでした。料理が出来る事も知りません。仕事を辞めてから覚えたのでしょう。元々頭の良い方でしたから」


 ロバートさんは知らない。おばあ様は家事がまるっきり出来ないことを。『このまま話に乗っておけばいい』マロンはユキに同意した。


「お父様、とても美味しいです。蜂蜜との相性も良いです」


「これなら2枚くらい食べれそうだ」


「ということでロバート、後で話をしよう。それに、子供らが遊んだ「白黒」とかいうのも相談したい」


 ロバートさんに「何だ」と目で問われた。あとで、マロンが作った「白黒」を見せて説明しなければならなかった。ただ、マロンの作った駒が黒と花の絵柄で出来ていたので、「白黒」ではおかしいのではないかと問われてしまった。その結果「白黒」改め「陣取り」に変わった。

お読み頂きありがとうございます。

読者様の応援が作者の何よりのモチベーションとなりますので、よろしくお願いいたします!

誤字脱字報告感謝です (^o^)


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