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19 王都遠ざかる 

 マロンはハリスとエリザベスに誘われ、夕刻の時間を過ごすことになった。マロンがエリザベスと同じ年で王都で働くと聞いて二人は驚いた。


「平民はそんな幼い時から働くのですか?」 可愛そうにとエリザベスが言った。


 マロンは5歳からパン屋で働き始めた。おばあ様の教えで読み書きを早くに覚えたのでとても役に立ったと説明した。平民の子供は7歳の「祝福の儀」で得たスキルなどから自分の勤め先を決めて、見習いから仕事を始めると説明した。


「自分の食い扶持をまかなえるようになって、やっと一人前です。修業はつらいでしょうけどそれは当たり前のことです。働くことで対価を得ることもできますがそれには責任が伴います。遣り甲斐がある仕事に就けることは、決して可哀そうではありません」


「すまなかった。そう意味ではない。平民の実情を知らないわけではない。騎士の訓練に「剣術」のスキル持ちの子供が入ってくる。訓練場の賄いやお世話する人の中には確かに僕らぐらいの子供もいる」


「でも侍女たちは、皆お姉さまだわ」


「お嬢様の所でお世話する方々は元々が貴族の方ではないですか?それなりの教育を受けたのちに侍女の仕事に就いたんだと思います」


 ハリスはさすがに色々見分を広げているようだ。エリザベスはマロンと一緒で世界が狭い。屋敷から出ることがないのだから仕方がない。マロンだって同じことだ。これからいろいろ知っていけばいい。マロンは暗くなった空気を換えるために遊びを提案した。


 筆記帳の「遊び」の中に掛かれていた「黒白」。紙に8かけ8のマス目を書き、白色の紙と黒く塗った紙をマスより小さい四角に切る。黒白に別れ小さな四角紙を順番に置いて挟むと挟んだ方に色が変わる。マロンも実際に遊ぶのは初めてなので、慎重に試してみた。最初はマロン対ハリスの戦いになった。


「マロンちょっと待った」


「お兄様、ちょっと待ったはいけません」


「しかし、そこに置かれると、、」


「ハリス様、諦めてください。勝負の世界は厳しいのです」


「そうです。訓練でも「待ってくれ」とは言いませんよね。お兄様?」


「マロンさんは、経験者だから少しは、、」


「わたしも今日初めてやりました」


「それなら単にお兄様が弱いのです」


「そこまで言うならエリザベスと勝負だ」


 マロンに負けたハリスは、エリザベスと勝負して負けた。勝ちに拘り過ぎてマス目全体を見ていない。かえって、気楽なエリザベスの早いてんぽに振り回されていた。しかし回数を重ねるとさすがにマロンでもハリスには勝てない。「これはなかなか奥が深い」とハリスは感心していた。


 エリザベスは黒色の代わりに赤く塗った紙でマス目を作り自分専用の駒を作った。何度かやっているうちに紙がよれよれになってきた。


「お兄様、木を使って色を塗ればもっと持ちやすくなるのではないですか?」


「木も良いけど石を削るのもいいかもな。持ちやすいいなら丸の方が良いな」


「お兄様、お互いにお気に入りを作りましょう」


 二人は色々な案を出し明日は「黒白」を作ることになった。マロンは王都に向かうので二人が楽しんでくれればよいと思った。楽しく過ごした時間はすぐに就寝の時間になった。子供たちはそれぞれの部屋に戻り、それぞれの明日の計画を楽しみに寝ることにした。


 しかし翌朝、マロンは王都に帰ることが出来なかった。ロバートが旅の疲れか熱を出した。医者に診てもらったら「疲労」とのことだった。おばあ様のことで気疲れした上に、商品の手違いで辺境への無理な移動が体に堪えたらしい。無理がたたったようだ。商会のロブさんと護衛の冒険者はそのまま帰ることになった。10日後にはハリスが王都に向かうので、それに同乗させてもらうことになった。マロンもそのまま辺境に留まることにした。


 マロンはエリザベスと共に庭師の所に行き、駒の説明をして木端を貰受けようとした。しかし、お嬢様にナイフは使わせられないと言われ、庭師が希望の駒の形を仕上げてくれた。マロンとエリザベスは少し残念だったが仕方ないと諦めた。その代り木の駒は希望通りの丸い形と均等な厚さで作られた。


 マロンたちはそれを細工物に使う目の細かい布やすりで磨くことにした。その後エリザベスの好きな赤色と白色に塗った。マロンは片面黒で、もう一面を花模様を書き込んだ駒を作ってみた。


 ハリスは石を磨いた駒を仕上げてきた。石職人に黒っぽい石で駒を作り、片面に白い色を塗ったようだ。「お兄様はずるい」「エリザベスだって、庭師が手伝ったんだろう。その上、マロンさんを味方にして。可愛くできているぞ」言い争うが楽しそうだ。


 そして寝るまで侍女達も交え、「勝った者にはお菓子を進呈」とエリザベスが言えば皆で楽しく過ごすことが出来た。しかし今度は紙の台紙が破れてしまい。次は台を作る羽目になった。


 翌日さすがに石で作るのは大変なので、庭師に頼んで木目のきれいな板を選んで台を作った。庭師が尖った道具で、マス目をほってくれたので、そこに、ハリスは白い絵の具を流しいれた。エリザベスは赤と白色が目立つよう黒にした。マロンは花模様が映えるよう緑にした。


 夕食後にはダウニールとオズワルドまでが参加し、賑やかな夕べを過ごした。ダウニールとオズワルド親子の戦いは楽しむを越して激戦になった。先を読むための訓練になるとマロンたちとは違う楽しみ方だった。

お読み頂きありがとうございます。

読者様の応援が作者の何よりのモチベーションとなりますので、よろしくお願いいたします!

誤字脱字報告感謝です (^o^)


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