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マロンが台所で料理していいるところにユキが現れた。


「マロン、ジルが逝った。ジルが小さな光に囲まれたと思ったらジルが白い石に変わった」

「ジルは天寿を全うしたんだね。長い時を一人で生きるのは大変だったと思う。今頃ライさんやリリーさんに会えたでしょうね」

「それは分からん。俺たちにとって死は特別ではないからな。ただ俺はマロンに出会えた。ジルたちはライに出会えた。それが特別なことなんだ。心に刻まれた思いはずっと残るんだ」


マロンはユキとともにジルが寝ていたソファーに向かった。そこには白い石を抱いたスネの姿があった。人の生は60年も生きれば長いほうだ。だからこそ人は人との繋がりを大切にするし、人によって傷つくこともあるが喜びも多い。人よりずっと長く生きるユキたちが心を傾ける存在を持つことはかえってつらいのではないかとマロンは思った。だって大切な存在は必ず先に逝ってしまう。


「マロン、ジルたちはライに出会えたことを後悔しているどころか魔物として死んでいかなかったことを喜んでいるよ。ユキだってマロンやシャーリーンに出会えてよかったと思う。それにマロンの駄々洩れの魔力がなければユキは死んでいたから・・まぁ命の恩人だな。俺はマロンが逝くまでそばにいるからな」


ユキの声にマロンはホッとするのと同時にユキはマロンがいなくなった後はまたどこかに旅に出るんだろうと思った。ジルの姿が石に変わっただけで部屋の中が広く感じられた。ジルの寝ていたソファーの前のテーブルには木彫りの人形やそれを彩る建物や木々がさらに増えていた。


リリーが守ったこの家には不思議なことが時々起こるがマロンはそのまま受け入れることにしている。ユキに出会えたことだけでも十分不思議なことだから、そしてホワイトにジルにスネに出会えた。

さらに長い時が過ぎても消えることのなかった熱い思いを込めたリリーの家だものほかにも妖精や精霊がいたとしても不思議ではない。


マロンはこの家をこのまま辺境に残すことにした。リリーの保護がいつまで有効かは分からないが、今はここに住む人外たちのためにマロンがここを守ると決めた。最初はジルの様子で一時的に辺境にいるつもりだった。王女の侍女をしながら錬金術の補助講師になること考えていた。


ここで義両親と薬草を育て工房で錬金薬を作りながら過ごすことがマロンには一番しっくりくるような気がした。ジルたちと過ごす時間があまりに温かく愛しい時間だったせいだろう。残りの一年弱を学園で過ごしたら辺境に戻ると王女宮のカリルリルやプーランク先生に伝えようと決めた。


「ホワイトは大丈夫?ずっとジルとずっと一緒に居たんだから・・ユキは?」

「俺らは大丈夫。いつかはどこかで逝くんだ。それは人も同じだろ。良い思い出を持つものなどほんの一握りだ。その分俺たちは幸せだから悲しくなどない。本来俺たちが喜びや淋しさを持ち合わせてはいないんだ。ジルはライに出会って、ユキはマロンに出会って進化しただけだ」

「・・・ここの暮らしは穏やかでいいね。私はここで暮らしたい」

「いいんじゃないか。マロンの好きにすればいい」


ホワイトとスネはマロンがいない間この家ジルたちの残した石を見守ることになる。スネは今まで通り時々学園の寮に転移してもらうことになる。ユキが元気を取り戻すまでもうしばらくマロンは休学を申請する


「スネには迷惑かけるけど時々私とユキを辺境と学園の寮の移動をお願いしたい」


ジルたちの石にを抱えてふさぎ込んでいたスネが頭を上げた。


「俺、此処に居ていい?」

「当たり前でしょ。ずっと居ていいのよ。もしかして追い出されると思ったの?」

「・・・うん」

「洞窟のほうが良いなら・・」

「ううん、此処がいい。俺の転移はマロンの役に立つ?」

「とても助かるわ。学園だけは卒業したいと思っているの。でも、スネが元気になってからでいいの。これでも成績優秀者だからね」

「スネ、良かったな。お前は必要とされているんだ。マロンがいない間はこの家を守るのはお前だ。俺たちを王都に転移できるのもスネだけだ。お前しかいないんだ」


ユキの言葉にスネはブルリと白い体を震わせた。スネのお腹の虫が鳴いた。


「現金な奴だな。マロンが作った食事を食べろ。ホワイトも今度はスネを頼む。年はとってもスネはずっと子供だ。ジルのように老成した落ち着きはない奴だ。手間がかかるだろうけどジルからも頼まれているだろう」


スネたちとともにテーブルにつき食事を開始した。マロンはジルたちの石をどこに置こうか思案した。あの石は単なる石ころではないだろう。ユキも初めて聖獣の石を見たようだ。卵?ではないかと聞いたら「そうかもしれないし単なる石ころかもしれない」と言っていた。石からは魔力を感じることはできないらしい。


マロンは一番日当たりのよい窓際に森の蔦で編んだ籠にジルの使っていた毛布を敷いて古竜のじいさんとジルとリリーの石を並べて置くことにした。


新学期が始まって二ヶ月過ぎたころに転移のハンカチの上に青い封筒が乗っていた。エリザベスは優しい薄ピンクの封筒、ロバートや学園のプーランク先生は仕事用の白い封筒だ。マロンが封筒の裏を見ればそこには「ハリス」と書かれていた。学園にいないことを知ったハリスがエリザベス経由で手紙を届けてくれた。




お読み頂きありがとうございます。

誤字脱字報告感謝です (^o^)


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