100 小さなお茶会?
マロンは寮の食堂で小さなお茶会を開こうと錬金仲間のカーナリーとクロールと移動した。マロンがお茶やお菓子の準備に席を外している間にお騒がせ男子生徒の3人がちゃっかり椅子に座って居た。
「カーウインさんとオイゲンさんはお二人とお知り合いですか?」
「マロンさん、オイゲンは領地が隣同士で子供の頃はよく遊んだの。その頃のままでほんと残念」
「何だよ。今はすましているけどカーナリーは木登りも駆け足も俺より凄かったんだ」
「オイゲンは運動神経が鈍いの。まさか錬金科に来るとは思わなかった」
「その通りで騎士には向かないからな。他で手に職付けないと困るんだ」
「わたしの母とカーウインの母が姉妹です。ほんとお調子者だから嫌になっちゃう」
「それはないだろう。クローレだって今はすましてるけど」
「それ以上話すとうちに泊まった時の話するわよ」
「お前な、3才の子供の頃の話を出すな」
「エアロンさんはそんな二人に振り回されてここに居るんですね」
「まあ、そんなとこです。マロンさん、お手伝いします」
マロンは魔石ポットでお湯を沸かしティーポットに茶葉を入れ蒸らしたのち陶器のカップに紅茶を注ぎ5人に差し出した。お皿には色々なクッキーを並べた。
「そのポットって?」
「魔石を使った携帯用ポットです」
「市販していないよな。凄く便利そう」
マロンは義父がマロンのために開発してくれたことを話した。さすがに男子たちは魔道具の話に熱が入る。他にはどんな魔道具があるのかなど色々質問してきた。男子三人の騒がしい声にカーナリーが声をあげた。
「そんなことは街の魔道具商会に行けば分かるでしょ。私達のお茶会の邪魔はしないで」
「おお、悪い事した。マロンさんは錬金術は経験あるのか?いつも「B」取ってるだろ。コツを教えて欲しい。俺は後継ではないから資格が欲しいんだ」
「お前はまだいい。次男ならスペアとして領地の代官にでもなれるだろ。俺なんて三男だからな、ほんと自分で食い扶持探さないとな」
「男性は大変よね」
「女性たちは家の格さえ考えなければ嫁に行けばよいんだから気が楽だよな」
「そういう考えが古いのよ。だからもてないのよ」
「「ほんとだろ?」」
幼馴染の気安さかお互い言いたい放題だった。マロンは黙って聞いていたらふいにマロンの方に男子たちが同意を求めてきた。
「わたしは結婚とか考えていない。自分がやりたいから錬金科に進んだ。それではいけない?」
「「えっ?」」
「だって、やりたいことが山ほどある「誰かのため」と言う目的で生きるのは無意味だわ。「誰か」なんて不確かな人に人生賭けられない」
「ほーーー」
五人の不思議なものを見るような目にマロンは慌てた。マロンは貴族として生きてきたことがない。辺境の義両親もそんなことは望んでいなかった。学園に通う手段として男爵家の籍を与えてくれたとマロンは思っている。学園卒業後男爵家の籍を抜いても良いと義父から言われていた。マロンは婚姻で家を繋ぐ必要がなかった。それよりマロンは他の方法で直接義両親を支えたいと思っていた。
「わたしは今の両親が学園に通うために男爵家の籍に入れてくれたの。学園は平等と言っても色々あるから貴族籍があった方が良いと言って、辺境伯も進めてくれたの」
「マロンさんはSクラスでしょ」
「「Sクラス!!」」
驚きの声が食堂に響く。夕食前なので人の数は少ないが注目を浴びてしまう。
「声は控えて」
「「ごめん」」
「だからか」思案顔のエアロンにカーナリーが問い詰める。
「何が「だからか」よ」
エアロンは最初からハリソンがマロンに当たりがきついことを不思議に思っていた。ハリソンは侯爵家の次男、いずれは叔父の薬種商会に入ることになっている。何の憂いもないはずが、何かにつけてマロンに当たることが多い。皆も感じていたんだ。マロンの思い過ごしではなかった。
今の所錬金科ではマロンの成績の方が良いのは誰が見ても明らかだった。まだ錬金科は始まったばかりそこまでイラつくことではない。これからもっと進めばどうなるかなんてわからない。
「マロンさんは1年からずっと「Sクラス」、さらにステップで錬金科の講義を受けるということは結構上位の成績だよね」
「講義の取り方によるんじゃない」
「そこは素直に認めた方がいい。ハリソンは負けず嫌いなんだ。俺は子爵の三男だから親の期待は高くない。決して蔑ろにはされていないよ。ただ、生き方の自由がある代わりにいずれは子爵家の籍を抜くことになる。ハリソンは兄がいるんだ。成績優秀で見た目もいい男だ。だからこそ兄に比較されても負けないように頑張っていた」
「良く知ってるね」
「まあな、俺の姉がその兄と婚約しているんだ。もちろん姉は侯爵家の養子になって嫁ぐんだけど」
「大変ね。同格の家でもしきたりや何だこうだと煩いのに」
「まあな、でも姉は俺と違って頭が良いんだ。元から親戚の伯爵家から養子に欲しいと言われていたくらいだ。ハリソンの実家でも姉は良くしてもらっている。婚約者は姉と同級生なんだ」
女子二人は恋の話に目がランランとしている。話しているエアロンは淡々としていた。貴族では珍しい恋愛結婚らしい。兄たちが共に「Sクラス」ということでハリソンの中で「Sクラス」は特別だったようだ。
そこにぽっと出の男爵令嬢が「Sクラス」に在籍していることが許せなかったようだ。女など学など必要ないと思っているようだ。マロンはハリソンの苦々しいものを見るような目の理由が分かった。
「女性に何かしてくるとは思わないけど、プライドの高い上に錬金には思い入れが深いあいつのことだから気を付けた方がいい」
「辺境の低位貴族など相手にしていないわ」
「そうでもないわよ。わたしマロンさんの事知っていたもの」
「同じく、「陣取り」だろ。それに「火球」だよ」
「えっ、それってこのマロンのこと?」
「今頃気が付いたのか?」
何だか4年の一年間も騒々しくなりそうだとマロンは感じた。男子三人はお菓子が美味しいと皿の物をすべて平らげて帰った。
「男子は騒がしいから嫌よね」
「でも良い情報も手に入るわ」
「オイゲンは要領がいいからどこでも上手くやっていける質なの。口は悪いけど」
「それより、このクッキーマロンさんが焼いたの?」
マロンは実家の父が寮の簡易キッチンで使える道具を作成してくれるのでとても楽に作れることを説明した。お菓子は普通の料理と違い計量は基本。勝手に砂糖や塩を追加すると基本不味くなると説明した。
「だから何度も計量器を使っていたのね。ついつい面倒で目分量で魔力水淹れたせいで煮詰まらなかったのね」
「マロンさんはお家で料理などしていたの?」
「ええ、両親とも辺境伯家に仕えているから・・」
「薬草刻むのも凄い上手いから驚いたわ」
「何が役に立つか分からないけどお菓子作りは美味しいから良いと思うよ。婚約者に手作りのお菓子なんてポイント高くならないかしら」
ワイワイとお菓子作りの話をしたのちお茶会はお開きとなった。マロンは学園の門まで二人を送った。部屋に帰ればユキがマロンの肩に乗った。
「友人ができたみたいだな」
「そうだね。錬金科は女子が三人しかいないから仲良くなれて良かった」
「マロンはリリーに手ほどき受けたから講義など受けなくても良いだろう」
「そうはいかないわ。ちゃんと作れているか心配じゃない。リリーから受けた教えの復習ができて良かったと思うわ」
「マロンは生真面目だな。そういうとこシャーリーンにそっくりだ」
ユキと話していたら机の荷物に気が付いた。
「もしかしてスネ?」
「おお、スネが・・セバスから頼まれた物を運んできた」
「ええ、どうしてスネがお義父様からの荷物を届けるの?」
「お、俺は良く知らないが・・転移がばれたらしい。人は運べないと言い訳したらしい」
ああああ!! やっぱりこうなったか。スネは何かやらかすとは思ったが二月持たなかった。荷物の中には手紙ときれいな花柄のピッチャーが入っていた。魔力を込めると水が湧き出るピッチャーだった。試作品だと書いてあった。魔石で動かせるようになれば魔力がない者でも便利かもしれない。
辺境では使っていないが貴族の家の中には大型の魔石でお風呂のお湯を貯める。大型の魔石は高価だから一般的ではない。今マロンが使っている魔石ポットと合体すればもっと便利になる。
義父は男だから水汲みやお茶を淹れることがないから道具を個別に作ってしまう。合わせ技を身に着けたら最強だ。
マロン元気にしてるか
辺境の雪が溶けて春がやっと来た。
新しい「水の湧くピッチャー」を試してくれ
マーガレットには喜ばれた。
スネのことは誰にも言わない。
でも時に荷物を送るときに利用させてもらう。
スネを怒るな。
スネは悪気がないんだ。
父が賢いだけだ
元気で過ごせ 父より
義父は魔法剣士として有名な人。人望もある上に気働きができる。スネたちを守ってくれる一人だ。仕方ないかもしれないとマロンは納得することにした。
「マロン、冷蔵庫に入っていた「ぷりん」スネに渡したから」
「えーーー、食べるの楽しみにしていたのに」
「だって、帰りのお菓子がなかったから」
「ユキのを持たせればよかったのに」
「それはないだろう。これからはいつもお土産用のお菓子を別枠で用意しておけばいい」
マロンは講義で使う錬金釜より先にお菓子用の錬金釜を早々に使うことになった。その横でユキが粉だらけになったのは仕方ないことだった。
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