ラマンドラとオカルト
◆マイ・フェア・アクシア
今、アクシア もフレッドもこのオペレート室にはいない。
私ことラマンドラ・アシュグレイ宙佐は決意した。
アクシアを蛮人同然に放置するわけにはいかぬ。
アクシアとコミュニケーションをせねばならない、と。
「ということで、アクシアに星際連合共通語をレクチュアしろ」
決意を口に出しては、HAL9へのこの指示となる。
この人格型コンピュータは思いついたことを形にしてくれるということでは、当代において非常に優れている。
ただ、言わないことは、一切やってくれないが…。
「了解しました。
当船の装備ではレクチュアスピードは最大52から最低1となりますが、どこに設定をしますが?」
「無論最大の52だ」
「かしこまりました。では、遺書の執筆を推奨します」
なぜだ。
「アクシア に言語メモリをインプラントするには外科手術が必須となります。
注液による麻酔導入は苦痛をともないます。
なので、貯蔵した電磁エネルギーを解放される可能性が大きいので」
「つまり、注射が嫌で大暴れというわけか。
なら、穏当な方法だ。多少、遅れても構わない」
忘れてた、アクシア は光子魚雷が直撃しても無事なのだ。
そんな相手にどういう方法で外科手術をできるというのだ。注射も無理だろう。
「了解しました。では、これで」
出されたのは穴の開いたコインに紐を通したものだ振り子か? それと、『誰でもできる! カンタン催眠術』と銘打たれた冊子であった。
「案外、アクシアにはシンプルな方法がいいだろう」
そう私は自分に言い聞かせるのだった。
「だが、本当に効くのか?」
「ならば、自分で試されては」
HAL9が鏡の上のガイドランプを点灯させる。
向き合う鏡の中の自分と私自身。
冊子を開く。
「 Lesson1、自分を眠らせてみよう__なになに、振り子を揺らして、それに意識を集中する。1! 2! 3!! 眠れ」
揺れる振り子に視線を向けると、意識がブラックアウトした。
次の瞬間、足下に倒れた私がいた。
ヘソと頭頂に、銀色の紐のようなものがつながっている。
どうやら眠りを通り越して霊体離脱したらしい。
「あれ? アクシアか倒れた私にナニをしている」
倒れた音を心配してやってきたらしいアクシア 。彼女がマジックのキャップを外すと、額に肉と書いている。やめろ! 教育プログラムやりなおしだ!
ニコニコ笑って、私の自慢の髭を油性インクで黒く染め始める。
止めろ、やめるんだ!
その時、頭の中に声が響く。
「おや宙佐」
目の前に金色の後光を背負ったフレッドがいた。全裸で臍と頭頂から銀色の紐が伸びている。
「ついにアストラル界に参入? 超能力を使った感想はどうかな」
「それよりアクシアを止めろ!」
「どうしようかな」
「だから、子どもはイヤなんだ!」
「『頼む』っていったら、やめさせるよ」
「む、むう」
「じゃあ、自慢の髭がどうなるかな」
「分かった。
『頼む!』
これでいいな。ぐぬぬぬ」
「アクシア、イタズラはその程度にするんだよ」
フレッドの思念が届き、でアクシアがマジックを動かす手を止めた。
「じゃあ、肉体にお帰り」
続いてフレッドが私の肩に手を置く。そして、トンといった、軽い感じで肉体に向けて押し出した。
そして、私の霊体と肉体が結合した。
二日酔いのような、混乱した感覚が肉体から還ってくる。
ひとつお怒りがあった、フレッドは テレパシーか何かで、アクシアと意思疎通できるのか!
「だから、子どもはイヤなんだ!」