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頑丈少女あらわる

◆明かされる原罪

 私が冷凍睡眠に入る前にに、HAL9により、フレッド事件の顛末が明かされた。

 フレッドは、クラッキングにより、HAL9のメインフレーム内に仕込まれたデータであり、それが人工子宮をクラッキングし、メインフレーム内で演算した、自分が宿るべき肉体を製造したというのであった。

 まったく飛んだ天使もあったものだ。


◆八十二万三千五百四十三回のノック

 亜光速で宇宙を進む、ホーガン号の進路上に、障害物が発見された。

 障害物が人の手が加えられた小惑星の一部分ではないかという仮説のもと、私、ラマンドラ・アシュグレイ宙佐にして船長が冷凍睡眠から覚醒したのは、針路清掃のため、発射された光子魚雷が障害物を対消滅させたというレポートが、船の人格型管理プログラムである、HAL9が打ち出してから、五分と経っていなかった。

 そのレポートの添付画像では中東系の少女が、Tシャツにハーフパンツという軽装で宇宙を漂っていた。

 

 世の中は新鮮な驚きで満ちているように彼女には思えた、のだろう。

 だが私、ラマンドラ・アシュグレイにしても、航路維持用の光子魚雷の直撃を受けていた。

 それでなお、ホーガン号の船殻に取り付くアラブ系少女というのは初めての体験であった。

「船長、亜光速で移動するもの同士が接触すれば、互いの見かけ上の質量により、破滅的な結果を生じるはず。

 少女に仮説ですが、質量のコントロールを行なう意志体の可能性が二番目に大きいです。

 もちろん、一番大きな可能性は既に破滅的な事態が起きており、ここは死後の世界だというものです」

 人格型管理プログラムのHAL9が戯言をほざき出す。

 とうとうプログラムまでが、死後の世界と宣いだすか。

 船殻をノックし始める少女、四回、数十回__二十七回。それから、乱打が続く、今は千回を超えている。

「こちらからも船殻をノック仕返せ、素数回ずつだ。

 これに反応すれば、知性体の可能性が大きい。

 少女の意図は、多分素数の素数乗回だろう。ならば次は五の五乗の三千百二五回にちがいない。  さすがに七の七乗である八十二万三千五百四十三回叩くまで待っていられない。

「ぼくがやってみようか?」

 頭痛のタネの先行者、自称人工自我のフレッドが申し出る。

 地球時代の宗教画から出て来た天使のような子どもだ。

 自認は怖くて聞けないが、男女どちらの生殖器も持ち合わせない。 

 子どもを好きといえない私としてはなぞの少女もろとも対消滅して欲しい。

 その間も殴打音は耐え間なく続く。

 一体、あと何万回続くのか。

 私はため息と共に承諾した。 

 

◆ファーストコンタクトは突然に

「でさあ、アクシアがさあ__」

 船外に出た、フレッドの声が私の脳内に響く。

「私はテレパスには慣れていない。それに故意の超常能力発現は星際連合が厳に禁止している」

 やろうと思えば、船長はテラフォーミングした惑星の全入植者を超能力者にすることも可能なのだ。

「教条的かもしれないな。

 しかし、故意の超能力を発現し得る遺伝的要素の付与はみとめられないい。

 生の淘汰、生命の尊厳を固辞していく観点から見てだ」

 なにか、おかしいことを感じる。

 振動がやんだのだ。

「ところでアクシアとは?」

 多分人名だろうが知らない名前だ。

「彼女のことだよ。

 TシャツにAXIAとあったから。

 それでネーミングしたんだ。

 彼女、名前なかったしね」

 フレッドが無線で返してきた。

 テレパスに対する私の複雑な感情を悟ったのだろう。

「アクシアだけど、彼女は、自分の扱いに関するテキストト記したメモリを持っている。

 どうやら、彼女も超能力の研究素材だったみたい」

 あの小惑星も亜光速で宇宙を行く、恒星間宇宙船だったのだろうか

 決してUPが認めない禁断の研究素材を詰め込んだ飛んだ宝船だ。

 私は久々にコーヒーを飲みたくなった。

 これから、アクシアのメモリを解析するのだから。

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