表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/160

85. あぶない夜。

目があった俺は何故か愛莉から目が逸らせなくて、指先に感じる舌の感覚に集中してしまう。


(いやいや…、何だこの状況……!!)


どう考えても絵面的にヤバい。

早く離れねーと…と思っていると、愛莉が俺の指に思いっきり噛み付いた。


「…いっ……!!!」


その直後、身体が動いた。

愛莉を押さえ込んでいた手を離して床に座り込むと、噛まれた指を見る。

…歯形がくっきりだ。


「か…噛むか普通…!!」


「アンタが変な事するからよ!」


「変な事って何だよ、する訳ねーだろ!!」


「押し倒したじゃない!」


「転んだんだ!!」


そう言い合いながら顔を突き合わす。

だがお互い事故である状況は分かってて、どちらからともなく息を吐いて顔を逸らした。


「アホらしい…」


「こっちの台詞よ、人の胸見ておいて…」


「だから見てねーってんだろ」


「ホクロ見たんでしょ?ホクロは胸にあるのよ!胸を見たのと同じじゃないのよ!」


「お前が無防備に寝てんのが悪いんだろうが!!人ん家に来る時はちゃんと服を着ろ!!」


「キャミだって立派なファッションの一つですー!!」


こうなったら止まらない。

昔から口喧嘩が始まるとお互い謝ることはなく、いつの間にか元に戻るまでこの状態だ。


だったら一緒にいても面倒なだけだ。

俺は立ち上がるとソファから離れて、冷蔵庫からビールを取り出す。

飲みながら時計を見ると、いつの間にか時間も遅い。


(これ飲み終わったら寝るか…)


スマホでギリギリ当日分のログボを手に入れて、ビールを飲んでる間少しだけ遊んでいると、ソファから愛莉の姿が消えていた。


(………?)


鍵はまだ預けてあるよな、部屋に戻った?…にしては、玄関の音が聞こえなかった。


(…まさか…!)


慌てて空になったビール缶を流しに放ると、寝室へと向かった。


寝室のドアを開けると、案の定、愛莉がベッドサイドのルームライトを付けてベッドでスマホをいじってやがる。…やられた。


(だが悪いな愛莉…、最初に言った通り、ベッドは譲らねえぞ)


少し前なら気を使ってリビングで寝た所だが、今はもう少し歩けば隣に自分の家があるんだ。気を使う必要はない。


俺は愛莉を無視してベッドに入ると、ルームライトを消して横になった。


「ちょ…颯斗!?」


「何だよ?」


「わ…私が先に寝てたのよ…!?」


「知るか、何度でも言うぞ?ここは俺の部屋で、これは俺のベッドだ。お前がリビングに行け」


「女の子をリビングで…」


「それはもう効かねえぞ、すぐ隣はお前の家なんだからな。リビングが嫌なら自分の家に戻りゃ良いだろ」


「…う…」


どうだ、ぐうの音も出まい。

俺は愛莉に背中を向けて目を閉じる。

すると愛莉は少しの間ベッドに座っていたが、諦めたようにベッドから降り…、…ん?


(降りない…?)


いや降りないどころか、愛莉は俺の隣に横になった。

…ッ?!正気か…?一緒のベッドで寝る気か!?

いくら何でも、ガキの頃とは違うんだぞ??


だが耳を澄ますと、愛莉は動揺する事なく落ち着いた呼吸でいる。


(動揺してんのは俺だけか…?クソ、落ち着け!愛莉は女だが幼馴染だ、妹みたいなモンだ…落ち着け…!!)


女だと思うから身の毛がよだつんだ。

コイツは女じゃない、愛莉だ。

ガキの頃から知ってる妹だ…。


(そうだ…顔を見よう)


後ろで寝てるのが女じゃなくて、よく知った愛莉だってちゃんと頭で理解すれば、この冷や汗も止まるはず…。


そおっと寝返りをうち、背後で眠る愛莉へと身体を向ける。

愛莉を見ると目はしっかりと閉じられ、(そもそもさっきまで寝てたからな)既に夢の中へ旅立っているらしい。


「………」


無言で愛莉の寝顔を見つめる。

何だかガキの頃みたいで安心するな。

顔に掛かった前髪を払ってやろうとすると、たまたま指先が愛莉の唇に触れた。


そのプニッとした柔らかさに、みゆりの唇を思い出し、俺は愛莉に背中を向けると強く目を閉じた。


すると愛莉が俺の背中に抱きついてくる。


「────ッ!?」


な…何だ!?


「お…おい…!?」


急に何なんだと首を後ろに向けると、愛莉は眠ったままだ。

…抱き枕と勘違いしてんのか?


(つーか…)


あたってる…。

せ…背中に柔らかいモノが…!!

ぎゅう…と強く抱き付いてくる腕の力に比例して、背中に押し当てられる胸も密着してくる。


(は…吐きそうだ…)


逃げ出したいが、もし動いたせいで愛莉が起きたら、絶対に俺のせいにされて変態扱いだ。


正直また騒がれるのはマズイ、もう深夜だし雷雨も止んでるから悲鳴を上げられたら、絶対に近所の住民が起きる。


通報されたとしても説明すれば誤解は解けるだろうが、近所から白い目で見られる事間違いなしだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ