84. ノーブラは油断大敵。
#颯斗side ────
風呂から出ると、リビングは真っ暗だった。
…?風呂場はついてたよな、電気…。
スイッチを見てみると、愛莉が消したのかオフになっている。
(勝手に消しやがって…、……?まさか…驚かそうとどっかで待ち構えてたりしねぇだろうな)
どこから愛莉が大声あげて出て来ても大丈夫なように用心しながらリビングに入ると、何の事はない。愛莉はソファで寝ていた。
(寝るから消したのか、自分勝手なやつだ)
まぁさっきから停電が繰り返されてるから、消えてても良いんだけどな。
部屋の電気は消したまま、持ち運び用のルームライトを用意してソファに行くと、愛莉は気持ち良さそうな寝息をたてて寝ている。
規則的な呼吸と合わせて上下する胸が、持っているルームライトに反射して汗で光り、何故か俺は目を逸らした。
(暑いな…、停電でエアコンが止まったのか)
リモコンを操作してエアコンを入れると、涼しい風が吹いてきて、風呂上がりの火照った身体が冷まされていく。
ルームライトの明かりで愛莉を起こさないように注意しながらソファの端に座ると、重みで沈んだソファに愛莉が身体を捩った。
「……?」
その瞬間、愛莉が来ているタンクトップ(キャミソール?)の胸元からホクロがチラリと見えた。
(………ん?ホクロ?今のって…)
ガキの頃に一緒に風呂に入ったりしたから覚えてるが、愛莉は胸元にホクロがある。
ずっと気にしていなかったが、もしかしてコイツ…下着付けてねぇのか?
ブラ付けてたら、あの位置のホクロは見えねえよな…??
胸元のホクロは乳首に近い所にあったはずだ。
(はぁー……、警戒心なさすぎだろ…。俺は良いけど他の野郎の前で、こんな無防備な姿見せてねーだろうな)
我が妹(いや、正確には幼馴染だが)ながら心配になる。
(俺だけなら…)
こんな無防備な姿を見られるのが、俺だけの特権だったら…。
何故かふと、そんな自分らしくない考えが頭をよぎった。
愛莉が目を覚ましたのは、俺が風呂から出て30分くらいしてからだった。
眠そうな目を擦りながらソファの上で身体を起こすと、愛莉はググーッと伸びをする。
そのしなやかな姿体は猫を彷彿させた。
「あ…れ、電気ついてる…?…そっか、いつの間にか寝ちゃったのね」
愛莉は眠そうにそう言うと、またドサッとソファに身体を寝かせる。
「ふぁあ…ねむ…」
「…おい愛莉、あまり口うるさい事は言いたくねぇが、下着は付けろよ」
「…は?下着?急に何の話…?このキャミのことなら、ちゃんとブラトップで…」
そこまで言って、愛莉はふと自分の姿を見下ろし、顔を真っ赤にさせた。
…そう、ブラトップ付きのトップスだとしても、横になっている時は胸の肉は重力のままに流れて、形の決まっているカップの中に収まらない。
今も、愛莉の言うブラトップキャミの胸元からホクロが見えている。
つまり、海の家でのみゆりじゃないが、後一歩でポロリの状態だ。
「さっきもだったが見えるぞ?」
「きゃあああああ!!!!!」
これは悲鳴というより絶叫だ。
外から聞いたら殺人事件で通報されるレベルの絶叫だ。
「お…おい…!!何時だと思っ…」
「馬鹿!!変態!!信じらんない!!!」
「アホか…!たまたま見えただけだ!」
「見たんじゃない!!」
「不可抗力だ!見ようと思ったワケじゃ…」
「颯斗の馬鹿!!!」
「良いから黙っ…」
「黙ってられるワケないでしょう!!」
いくら外は雷雨とは言え、この声量じゃ近くの部屋に聞こえて、このままじゃ通報される。
おいおい、冗談じゃねぇぞ!!
俺は愛莉を黙らせようと片手で口を押さえ込む。
「静かにし…」
だが暴れる愛莉のせいで体勢を崩し、俺はそのまま愛莉の上に倒れ込んだ。
その瞬間また停電が起きて、部屋が真っ暗になる。
(な…んだ、この状況…)
真っ暗な中、ソファの上に女を押し倒して片手で口を押さえ付けている。
さっきの愛莉の悲鳴で誰かが駆けつけて来たら、俺は完全に強姦魔だ。…問答無用でお縄になる。
だけど状況に焦りすぎた俺の頭はパニックで、身体が動こうとしない。
…先に動いたのは愛莉だった。
愛莉は何故か口を開けると、押さえ付けている俺の手…いや、指を咥えたのだ。
「……ッ!?おい…!?」
ざらついた舌先がぬるりと指をなぞり、背筋がゾッとした瞬間、愛莉の視線が俺と交差した。




