71. 告白は突然に。
電話を切った後、俺はぼんやりと聡太の記憶を思い出す。
やっぱり新見には俺はいじめられている様に見えたのか。
…確かにスクールカースト上位に囲まれて、からかわれたり馬鹿にされたりしている陰キャの姿はいじめに見えるんだろうな。
(だけどそれがきっかけで教師になろうと…?)
そんなに俺…いや、聡太の事を気にしてくれていたんだろうか。
それなら何で、告白した聡太にあんな軽蔑したような態度を取った?
気にかけていた理由が恋愛感情じゃない事は分かってるが、それでもあれは、いじめられているのでは?と気に掛けている相手に取る態度じゃないだろ?
逆に自分が酷い態度で傷つけてりゃ世話ねーぞ?
(それにあのクラスメート達はどんな奴らだったっけ…?2人か3人…、いたよな。名前は…?顔は…)
思い出せない。
…あれ?この間は思い出せなかったか?
いや、元々…覚えてなかったか?
俺が覚えていた聡太の記憶は、どんな事だった?
思い出そうと頑張って当時の事を思い浮かべてみるが、何故か新見晴子以外の顔が思い出せないし、教室内の様子も思い出せない。
(…ん?違う…、そもそも聡太は死んだ時は働いてたよな。確か…高校卒業後は進学せずに地元で就職したんだ)
何で学生の頃の事は思い出せるのに、もっと最近のはずの就職後の事は思い出せないんだ?
(待て…違う違う…、そもそも思い出せるのは新見関連の事だけじゃねーか?学生時代の事を覚えてる訳でも、就職後の事を覚えていない訳でもない…)
当時仲良かった友達や家族の事なんて、特別思い出す事もなかったが、そもそも覚えてねぇんじゃねぇか?
…って事は、聡太の記憶で颯斗覚えているのは、新見晴子に関することだけ…?
(…はぁ…、分からんなぁ)
考えても答えの出ない事にイライラする。
溜め息を吐いてソファに横になると、またスマホが震え出した。
大和だろうと思い、名前の確認をしないまま電話に出る。
「どうした、何か言い忘れたことでもあったか?」
『…え?』
「……ん?」
大和の声じゃない、…この声は…。
「千代音…?」
しまった、千代音からだったか。
タイミング悪すぎだぞ。
『あ…、ごめんなさい、こんな時間に…でも、出るの早かったね。もしかして電話待ってた…?』
「…はぁ?…あ…、いや…それより何だよ?」
『あ…、あの…途中からメッセージも既読にならなかったから、何かあったんじゃないかと思って…』
「…だとしても、それはお前が心配する事じゃねーだろ。いくら何でも着信履歴とメッセの数がゾッとしたぞ」
もともと苛ついていた事もあって、つい当たりがキツくなる。
電話の向こうで息を飲む気配がするが、俺は無視して言葉を続けた。
「それで?用は何だ?」
『あ…いえ、その…えっと…』
…こっちも煮え切らねーな。
何なんだ?
「用がないなら切るぞ」
そう言うと、千代音は慌てて「あります!」と大きな声を出した。
続きを遮らないようにそのまま黙って聞いていると、千代音が深呼吸する音が聞こえる。
「……に、なって…下さい…」
…ん?
よく聞こえなかったな。
だがもう一度…と聞き返す前に、今度は大きな声でハッキリと聞こえた。
「か…彼氏になって下さい…!!」
「………はい?」




