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66. 図書館は鬼門?

連絡すると、愛莉の親父さんは「いやー、やっぱり可愛い一人娘を都会に一人で…となると、不安で不安でなぁ…。颯斗君の近くに住まわせれば安心だし、…だけどあのマンションは高いだろう?かなり迷ったんだが、おじさんは愛莉の安全の為に頑張ったよ!」と笑っていた。


…いや、頑張りどころ間違ってねぇか?

俺へのその、無条件信頼はなんとかならねぇのか。


(…おじさんの俺への信頼って、実は結構キツいんだよな)


夢で見た昔の…いや、本物の俺は、確かに(ナルシストではあったが)努力家の優等生だった。

親父さんからすれば、信用に値する少年だったろう。


だが今の俺は、親父さんがずっと見て来て信頼した颯斗じゃない。

俺は親父さんがガキの頃から信頼している颯斗とは、性格も考え方も違うからなぁ…。


(まぁ確かに、間違いなく同一人物ではあるんだが…)


ふと、旅行先で聞こえた声と夢の内容を思い出す。


颯斗は努力家で自信家でナルシストで女好き…。

聡太は友人もいなくて、惚れた女にはいじめっ子達に言われるまま、なし崩し的に告白するようなクズ野郎…。


全然違うのに、俺はいまだに…颯斗と聡太の境界線ボーダーラインが分かっていない。


そして、せっかく大和が教えてくれたのに、聡太()が颯斗として目を覚ましてから今までの間に、少しずつだが考え方や性格が変わっている事にも、俺はまだ気付いてなかった。



♢♢♢♢♢♢



海バイトから帰ってから数日。

さすがにそろそろレポートの続きでも進めるか…と、俺は大学へ来ていた。

目的地は図書館だ。


ウチの大学の図書館はかなり広い。

静かな場所が好きな俺は、以前から暇があると図書館に来ている事が多かった。


(…ココで新見晴子に会ってからは少し足が遠のいてたけどな)


二度あることは三度あると言うが、前回あれだけ冷たくしたんだ、もしまた見かけても今度は話し掛けて来ないだろう。


飽きたら直ぐに帰れるように、出入口付近の席でノートパソコンを広げて、まだ途中までのレポートを見る。


(…はぁ、めんどくせー)


正直やりたくないから、画面の中のレポートは随分前から遅々として進んでいない。

だがこうしてパソコンを開いておかないと、それこそ絶対にやらねぇだろうからな。


小説家や漫画家ってこんな気持ちなのかな、と相変わらず真っ白い画面を見つめていると、出入口のドアが開いたらしく、生温い空気が入って来た。


出入口付近に座ったから仕方ないが、外は暑そうだな…と、何となく出入口を見た俺は、出入口に設置してある椅子に座った女を見て首を傾げた。


(…ん?あの眼鏡女…見た事ある気がすんな。誰だっけか)


知り合いか?と記憶の網を辿ってみるが、思い付かない。

まぁ同じ大学なんだ、何処かで見ていたとしてもおかしくねぇよな。


直ぐに興味を失ってパソコンに視線を戻した時、同じく出入口の方から見慣れた顔が姿を見せた。


(…みゆり…!!)


慌てて席を変えて、出入口に背中を向けて座り直す。


(…図書館なんて似合わないトコに来てんじゃねぇよ…)


太陽が眩しい外から入って来たなら、暗順応で離れた場所にいる俺の姿は気付いてないだろう。立ち去るなら今のうちだ。


パソコンの電源を落として閉じると、さりげなく立ち上がって、俯き加減に(二人から離れたルートで)出入口へと向かう。


チラッとみゆりを確認すると、みゆりは眼鏡女と話していた。


(…思い出したぞ、みゆりに誘われて行った飲み会に参加してたな)


名前は覚えてねぇが、終電逃して一緒にホテルに泊まった地味女。

どうやら飲み会参加は()()()目的だったらしく、最終的に俺が男漁りを邪魔したオチになった女だ(三話〜五話参照)。


(そういや、みゆりの知り合いだったな)


しかし、改めて見ても接点のない二人だ。

通りすがりながら二人を見ていると、眼鏡女が俺に気付いて会釈をしてくる。


(…ッ…!)


当然だが、それに気付いたみゆりが振り返り、俺に気付いて笑顔を作った。


「…真城クン!」


「…うるせぇぞ、ここは図書館だ」


関わりたくなくて白い目を向けると、みゆりは慌てて口を閉じて、テヘペロばりに自分の頭を小突いた。


無視して外に出ると、予想通りというか何と言うか…みゆりともう一人の女も一緒に出て来た。


「ちょっと待ってよー」


「…何だよ、俺は帰るんだ。お前ら来たばかりだろ」


「急ぎじゃないでしょ?それにここへは待ち合わせで来ただけだしー。私達これからカフェに行くの、ね?一緒に行きましょ!」


「悪いな、急ぎの用があ…」


断ろうとする俺の言葉を最後まで聞かずに、みゆりは俺の腕に自分の腕を絡めてくる。


「さっ!行こー!!」


「…ッ…おい!!離…」


当然だが、離せと言って離す女ではなく、俺は半ば引き摺られるようにして図書館を後にした。


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