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63. 愛莉の新居[1]

駅に着いた後、まだ寝てる3人を起こして電車を降りる。

観光地とはまた違う、都会の喧騒が何だか懐かしい。


「いやー…、帰って来たなぁ…。ビックリするほど空気が不味い…」


大和が感慨深そうに深呼吸する。

地方から東京に近づくにつれ、電車の中はぎゅうぎゅうの押し寿司状態だったからな。

こんな排気ガス混じりの空気でも、深呼吸したくなる気持ちは分かる。


「旅行って帰って来てからが面倒なのよねぇ、汚れ物とかお土産とかの片付けやりたくないわぁ…」


みゆりがゲンナリした様子で自分の荷物を見下ろした。

…まぁ考えてる事は皆んな同じだな。


ここからはそれぞれ帰宅方法が違う。

このまま俺のマンションへ行ってみたい!と騒ぐみゆりを断固拒否して、(俺が呼んだ)タクシーに無理矢理に押し込んで出発させる。


愛莉と一緒に暮らしている事は話してねぇんだ。まさかとは思うが、万が一にも後を付いて来られても困るからな。


「…さて、お前もタクシー呼んでたよな?」


辺りを見回してみるが、駅前に停まってるタクシーはほとんどが迎車だし、タクシー乗り場は列が出来ている。


…俺らはマンションまでそんな遠くねぇし、歩きで良いか。

大学行く時だって駅まで歩いてんだ、大丈夫だろ。


「うん、俺も呼んだから大丈夫」


「…そうか、じゃ俺らはこのまま歩いて帰るし、これでやっと解散だな」


ぐぃーっと伸びをしながら言うと、大和は笑顔でスマホから顔を上げた。


「あぁ。二人とも今回のバイト、マジでありがとな!今度飯でも奢らせてくれよ」


「バイト代はちゃんと貰ったんだ、気にすんじゃねーよ」


「そうですよ。楽しかったですし、今度はお客としてサムさんのお店に行ってみたいです」


「あはは!じゃあ来年はそうしようぜ!」


そんな事を去り際に話しながら、俺と愛莉は大和と別れた。


ようやくか…、長かった…。

楽しくない訳じゃないんだが、やっぱり疲れるな。

帰って一人でゆっくりしたいが、愛莉もいるから残念だがベッドは取られるだろう。


(とにかく帰ってから考えるか…)


一刻も早く自分の家で休みたくて、大和と別れてさっさと歩き出すと、愛莉が焦って追いかけて来る。


「ちょっと待ってよ…、歩くの早い…」


「…あ?別に俺に合わせる事ねーだろ、ゆっくり帰って来りゃ良いじゃねーか」


俺は早く帰りたいんだよ。

振り返ると、愛莉は重そうな荷物を両手に持っていた。


(…ちッ、そういやコイツ…コッチに知り合いなんかいねぇくせに、駅で土産やら何やら買ってたな)


それでなくても小柄な愛莉が、両手に大量の荷物を抱えてフラフラ歩いている姿はどうにも人目を引く。


…これじゃあ一緒に歩いてる俺が、まるで人でなしだ。

仕方なく俺は愛莉の荷物を半分奪い取った。


「…遅ぇ、早く帰って休みてぇんだよ。トロトロ歩くな」


ったく、こんなに大量の土産モン、どこに置く気…。

…ん?

俺はふと、隣の愛莉に顔を向ける。


「…おい愛莉。そういやお前、いつ新しい部屋に行くんだ?」


新しい部屋が決まった事は聞いたが、いつ移動するのか聞いてねぇな。


荷物運んでやるって言っちまったし、まさか今日明日とか言わねぇだろうな?

そう思いながら聞くと、愛莉は少し考えてから「2、3日後…?」と答える。


…そうか。

何故かは分からんが、今すぐじゃないと聞いて少しホッとする。

言い訳じゃないが、これは愛莉が居なくなるのが嫌なんじゃなくて、疲れてる所、引っ越しの手伝いをするのが嫌なだけだ。


「…はぁ?さっさと行けよな、俺がベッド使えねーだろが」


ホッとした事を隠すために乱暴に言うと、愛莉は不機嫌そうに唇を尖らせた。


「何よ、そんな邪魔扱いしなくてもいいでしょ、少しは寂しいとかない訳?」


「ない」


一瞬だけ…マジで一瞬だけだが、愛莉がマンションからいなくなる事を想像して、寂しいと思った事は間違いない。


だけど愛莉にそんな事を気付かれたら、勝ち誇った顔で突っ込んでくるに決まってる。


俺は本心に気付かれないように、努めていつも通りに返事をした。


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