49. 男の本能、颯斗の葛藤。
#颯斗side ────
結局、ジャンケンもどき(ぐーとパーを全員で出して、同じ手を出した奴と組むアレだ)でコンビ分けをした結果…。
俺とみゆり、そして大和と愛莉。
このメンツで肝試しに向かう事になった。
大和は愛莉の怖がりを知らないし、何とか愛莉と組もうと思ったんだが、そんな器用な真似は出来なかったな…。
肝試しの開催時間まで自由時間になり、愛莉の様子を見に行こうとすると、ベランダにみゆりの姿を見つける。
「…ん?」
つい足を止めると、みゆりは笑顔で振り返り、俺は仕方なくベランダに出た。
「…何してんだ?」
「んー?星見てたぁ」
そう言って夜空を見上げるみゆりにならって、つい俺も夜空を見上げる。
「…東京みたいに人工的な明かりがないから、よく見えるわよね」
「そうだな」
確かに東京では、なかなかお目にかかる事が出来ない星空だ。
つい星に見惚れていた。
無防備になった俺の胸へ、みゆりがさりげなく抱きついて来る。
…またか!
発情期の猫かお前は!!
「ねー…、この間の続き、する?」
「は?」
何の事だ?とみゆりを見下ろすと、みゆりは大きな胸を俺の胸へと押し付けている。
(…ッぐ…!この女…!!)
俺に色じかけは通用しねぇって、何回失敗すれば気付きやがる。
「やめろって言ってんだろ?何回言わせんだ」
少しでも離れようと、みゆりを引き剥がすと、みゆりはバランスを崩して仰向けに倒れそうになる。
「…ッ!?」
(しまった、つい乱暴に振り払っ…)
気づかなかったが、昼間のビーチサンダルと違って、今のみゆりは高いヒールのサンダルだ。
このバカが、砂浜で踵の高い靴なんか履く奴があるか!
どうやら足首が変な方向へ曲がったらしい。
踏みとどまる事なく、みゆりの身体が倒れる。
「みゆり…!!」
転びそうなみゆりの腕を引き寄せようとするが、俺もバランスを崩してしまい、そのままみゆりの上に馬乗りになるように倒れ込んだ。
「……」
時間が止まったような感覚だ。
俺の真下にはみゆりが倒れていて、パッと見は俺が押し倒しているように見える。
慌てて立ちあがろうとすると、みゆりの両腕が俺の背中に回された。
「……ッ」
昨日の昼間を思い出す。
じんわりと汗ばんだ肌と、しっとりと潤んだ目。
細い首筋と、そこからつながる柔らかそうな二つの膨らみ。
(嘘だろ、やめろ…)
いつもと違う感覚が身体を支配する。
…これは駄目だ。この雰囲気に飲まれたらヤバい。
「真城クン…」
甘く名前を呼ぶみゆりの声に生唾を飲み込む。
(…ッ?頭が痛ぇ…)
…──── 目の前の、白くなめらかな肌に舌を這わせて、唇を押し付けて、自分の痕を残してやりたくないか?
…?何だ?
頭の中で俺じゃない誰かの声が聞こえる。
…──── 邪魔な服を剥ぎ取って、乳房を掴んで、噛みついて、硬くなった乳首にしゃぶりついてやりたいだろ?
…違う違う!思ってない!
誰だてめぇ!!
…──── 迷うなよ。てめぇのモンをぶち込んで、体力がなくなるまで突きまくって、喘がせてやれよ。
…誰の声だ!?喋るんじゃねぇ!
…──── その指で、唇で、舌で、存分に味わえ。
その喘ぎ声も涙も、…その女はお前のモンだ。
本能のままに腰を振れよ。…男だろう?
だから誰だよ!?
黙ってろ!このゲス野郎!
…──── チッ、女一人抱けねぇ腰抜けが。
「…うるせぇ!!」
「…ッ!?」
つい本当に声を出しちまった。
みゆりが驚いた顔で俺を見上げてる。
「……ぁ…。ら…乱暴にして悪ぃ、大丈夫か?」
立ち上がってみゆりの手を取ると、みゆりも素直に立ち上がった。
「あ…、私もごめんね。ちょっと調子にのりすぎ……」
そう言ったみゆりの様子がおかしい。
「…?どうし…」
どうした?と聞こうとした俺は、みゆりの足を見て言葉を止めた。
…足首が晴れてる。
間違いない、さっき俺が乱暴に振り払った時に、足を捻ったんだ。
「悪いみゆり…!!大丈夫か!?」
クソ、何やってんだ俺は。
「…歩けるか?正直に言え」
「……多分、痛い」
…だろうな、仕方ねぇ。
俺はみゆりの背中と膝裏に腕を回すと、そのままみゆりを抱き上げた。
みゆりが、ものすっっっごく驚いた顔をしてるが、怪我の原因は俺だ。
俺は構わず、みゆりを抱いたまま部屋へ戻った。




