42. 美少女登場。
花火の後、民泊に戻ると、大和の叔母さんがスイカを切ってくれていた。
皆んなで縁側に座ってスイカを食べながら、バイト初日の感想を話す。
「予想より混みましたね。海の家って、あんなに混むんですか?」
「…さぁ?俺もイワオ兄さんの店を手伝ったのは、今日が初めてだしなぁ」
愛莉の疑問に、大和も首を傾げる。
「でも綺麗なお店だったよねぇ、海の家って聞いてたから、もっと古くさいのかと思ってたけど…。来て良かったぁ、良い夏の思い出になりそうだもん」
「そう言ってくれると兄さんも喜ぶよ、店のデザインとか設計とか、全部兄さんがやったんだ」
お世辞ではなく、素直な言葉らしいみゆりの感想に大和がそう答えると、冷たい麦茶を持った、大和の叔母さんが後ろから会話に加わって来る。
「巌男は若い頃、建築士の仕事をしてたのよ」
…なるほどな。
もともと専門的な知識があるなら、そりゃ完全に自分好みの店を作れるだろう。
隅々まで拘っただろう海の家を思い出す。
アメリカンなデザインで作られてはいたが、細かいところは神経質な日本人向けになっていた。
「これから来るって言ってたから、直接言ってあげて。きっと喜ぶわ、舞禀も来るって言ってたし」
「え、マリン来るの!?」
「…舞禀?」
初めての名前に聞き返すと、大和は笑顔で頷く。
「イワオ兄さんの娘さん…。つまり俺の姪っ子だよ、可愛いんだ」
そう言った大和の顔は、デレデレしている。
その顔を見れば、その舞禀って子が美少女であろう事は予測できる。
「先に言ってくれれば、花火せずに待ってたのに」
大和がそう言うのと同時に、玄関の方から「ただいま」と言う声が聞こえて来た。
…サムの声だ。
パタパタとスリッパの足音が近づいて来て、縁側にサムと女の子が姿を見せる。
小学校低学年だろうか?
(…あの子が大和の姪っ子…?嘘だろ?)
本当にサムのDNAを継いでるのか?と問いただしたくなる美少女だ。
母親はどんだけ美人なんだ?
父親のDNAは全く感じられねぇぞ。
サラリとした髪と、真っ白い肌。そして日本人離れした大きな茶色い目をしている。
薄暗い縁側から、室内の明かりが届く場所まで来た女の子を見た俺は(ん…?)と首を傾げた。
まさか?と思っていると、女の子は、俺達の食べてるスイカを見るなり、嬉しそうに駆け寄って来る。
「スイカ!マリンも食べる!」
「え…、あぁ…」
何となく一番近くにいた俺がスイカを取って渡してやると、女の子はスイカを受け取りながら俺の顔を凝視する。
(…う…、何だ?)
キラキラした視線に堪えられず、思わず少し離れると、女の子…マリンは満面の笑顔で俺の膝の上へと乗って来た。
「…!?お…おい…」
正直、子供や動物はあまり得意ではない。
別に俺でなくても大和もいるし、愛莉やみゆりもいるだろう?
どうしたものかと思っていると、マリンは俺の膝に乗ったまま、俺を見上げる。
「あなたイケメンね!」
「…は?」
予想外の言葉に戸惑っていると、大和がつまらなそうにマリンを手招きする。
「マリンー、お兄ちゃんトコへおいでよぉー」
「いや!ヤマトはシツコイ!」
…可哀想に、女に縁がないのは知っていたが、姪っ子にも嫌われてるんだな。
ショックを受けて、燃え尽きたあした◯ジョーみたいになってる大和の隣にサムが腰掛ける。
「どうだ、颯斗!俺の娘は可愛いだろう?いやぁー、歳を取ってから出来た娘だから、可愛くてなぁー!!」
「…っすね、…ホントに血ぃ繋がってんすか」
「ハハハ!嫁がアメリカ人でな!完全に嫁似だ」
やっぱりか。
この鳶色の目や、日本人の色白とは少し違う、真っ白な肌の白。
彫りの深さや鼻の高さなど、完全に外国人だ。
(……良かったな、完全に母親似で)
まぁ父親に似た女の子は可愛くなるって言うし、サムも決してブサイクじゃねぇ。
サムに似てたとしても、違う系統の美少女になる可能性高いんだけどな。
「兄さん、3度目の結婚なんだよね」
「さ…3度目…!?」
「ハハハ!!前の嫁は、2回とも逃げられてしまったんだ!ハッハッハ!!」
…よく笑えるな。
2回も嫁さんに逃げられるとか、実は性格に難ありなんじゃねぇのか?
「…ん?」
膝の上でスイカを食べていたマリンは、食べ終わったスイカを俺に差し出してくる。
(…何で俺が…)
と思いつつも、子供が相手だ。
とりあえず食べ終わったスイカを皿に置いて、新しいスイカを取ってやると、マリンはスイカを受け取った後、俺の頬へキスをして来た。
「ありがとう!」
一瞬の事に固まる。
いや、ガキのする事だし、そんなに気にする事ないんだが、日本人は挨拶でハグしたりチークキスしたりしねぇんだから、動揺するのも仕方がない。
ここは大人の対応として、激しく動揺せずに笑顔を返すのが正解だ…と思っていると、俺以上に動揺した声が聞こえて来た。




