表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/160

24. 素直になれない距離。

それから高校の時に使っていた、汚れた自転車を出して来て神社へ行き、祭りの準備をしてる実行委員のオッサン達に挨拶する。


今日はもう、テントまで張り終えてるから、後は祭りの前日…つまり明日だな、最終的な確認をするだけらしい。


「それでもやる事は沢山あるからな、動きやすい格好で来いよ?暑いからってサンダルで来たら怪我するぞ」


どうやら雨が降った時の事を考えて、機材関係はまだ設置してないらしい。

本格的な準備は、明日の天気予報を見てからだとか。


「了解っす、じゃあ明日」


ぺこりと頭を下げて神社を出ると、ちょうど鳥居の下に愛莉が立っていた。


「愛莉、どうしたんだ?」


「飲み物の差し入れをしに来たの。アンタと帰ろうと思って待ってたのよ」


「そうかよ」


既に辺りは夕暮れて、オレンジ色だ。

さすがにまだ明るいが、歩いて帰るとなると、途中で真っ暗になるだろう。

なにしろこのド田舎には、電灯すら無いに等しい。


オマケ程度にポツンポツンと設置された電灯や、今は余り見なくなった公衆電話のボックスに、無数の虫が集まる様子を思い出して身震いする。


「自転車で来てるから、後ろ乗ってけよ」


「えへへ…、知ってるー。だから待ってたのよ」


「…ったく、ちゃっかりしてやがんな」


自転車に跨ると、愛莉は後ろに乗って、俺の腰に腕を回して来た。


「子供の頃を思い出すわね、小学生のときは、よくこうして颯斗の自転車の後ろに乗せて貰ってたっけ」


「…覚えてねェな」


「……そう」


それ以上は何も話さず、俺は背中に感じる愛莉の体温に、どこか懐かしさを感じながら、自転車を家へと走らせた。



#愛莉side ────



どうして素直になれないんだろう。

待っていたのは、純粋に一緒に帰りたかったからなのに。


颯斗の顔を見ると、いつも素直に慣れずに憎まれ口ばっかりになっちゃう。


無言で自転車を漕ぐ颯斗の背中に、強くしがみ付く。

苦しかったのか、颯斗は小さく「ぅげ…ッ」と言ったけど、文句は言って来なかった。


(明後日のお祭り…、一緒に行きたいけど…)


颯斗は祭りの準備の手伝いに来てるだけだし、もしかしたら祭りに参加せず、準備が終わった土曜の夜に帰っちゃうかも知れない。


(その前に誘わなきゃ…)


でも勇気が出ない。


(しっかりしろ愛莉!一緒に暮らしてるうちに、落とすって決めたんじゃない!少しでも今回のお祭りで、なんとか距離を縮めるのよ…!)


そう自分に叱咤して、私は深呼吸する。


「ねぇ颯斗?」


「あー?何だ?」


「あ…あの…」


…ぅああー!やっぱり言えない!!

子供の頃とは違うの!

簡単には誘えない。意識しているせいか、余計に誘えない!


「…何でも…ない…」


結局何も言えずに黙ると、颯斗は少しだけ首を動かして私を見た。


「…?なによ?」


「…お前太ったか?」


「…………は…、はぁ!?」


「いや、なんか…。背中に当たる肉が、記憶にあるより肉肉しいっつーか…」


「覚えてないんじゃなかったの!!…って言うか、肉肉しいって何よ!太ってるって言いたいワケ!?」


信じられない!

人がセンチメンタルになってるところを…!


…ん?背中に当たる肉…?

それってまさか…。

今私は、颯斗の背中に抱き付く形で自転車に乗っている。

つまり颯斗の背中に当たっているのは…。


(…胸!?)


そう思い至った私は、顔が真っ赤になるのが分かった。


「…馬鹿!!変態!!」


「はぁ!?急に何言い出すん…、っておい!暴れんな!!」


颯斗の背中から身体を離して、その背中を力任せに叩く。

…あぁ、ダメだ。

こんな事で動揺してるようじゃ、幼馴染以上にはなれない…。


(でも無理ィー!恥ずかしすぎる!!…って言うか、颯斗デリカシーなさすぎ!)


私は真っ赤になった顔がバレないように、顔を颯斗の背中にくっ付けた。



#颯斗side ────



愛莉の家まで送って行くと(っつーか、すぐ隣だけどな)、愛莉は不機嫌そうに自転車から降りる。


「…おい、何をさっきから怒っ…」


「怒ってないし!」


…いや、怒ってるじゃねーか。

ったく、コイツの不機嫌スイッチは何なんだ?


「…あ」


そこで帰ろうとした俺は、愛莉を振り返った。


「お前、祭りは行くのか?」


「…え?」


「せっかくだから祭りに参加して帰ろうと思ってんだが、一緒に回るか?」


わざわざこんな田舎まで帰って来たんだ。

祭りに参加せずに帰る理由がない。


だが一緒に回る友人もいないし、一人で回るのも味気ないもんな。


実は既に地元に残ってる奴らに連絡したが、ほとんどが予定ありか、祭りの手伝いに駆り出されていて捕まらなかった。


(でなきゃ、幼馴染とは言え、女なんか誘わねーがな)


断られる前提で誘ったんだが、意外にも愛莉は満面の笑顔だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ