ソーラーキャッスル構想 3
ソーラーキャッスルについて考えだしてから何日も経った。そろそろ居住地区についての考えをまとめてみよう。
居住地区にも店や工場はあって、商業地区や産業地区よりも家に近いというのがメリット。だから生活に身近なものを扱う店やたくさんの人が必要な工場は居住地区にあるべき。
プロトキャッスルは建設作業のための街だけど、ソーラーキャッスルは暮らすための街だから、もっと憩いや娯楽の施設がたくさん必要になるし、様々な年齢層のための施設が必要になる。
地下1階は太陽熱発電所。それと、グランドシャフトで集めたごみをごみ処理場に運ぶベルトコンベアーがある。ごみの分別など、発酵させる前に必要な作業もここでやったほうがいいだろう。
1階は公園。木が植わっていて安らげる空間になっていてほしい。植物園があってもいいね。一部が動物園や水族館になっていてもいいかもしれない。
2階と3階は道路と駐車場。道路は碁盤の目状に立体交差していて、カーブした坂道で右折や左折ができる。
4階は駅と、道路に近いからバスターミナルと……他に道路に近い必要があるものって何だろう? 自動車学校とか自動車販売店とか、車の修理工場とかかな? それだけだと場所が余るから、倉庫は物流地区だけじゃなくてここにもあってもいいかもしれない。
5階から14階が工場。ロボット工場や食品工場を中心に、色々な種類の工場がある。
15階は卸売り市場と、お店のバックヤード。
16階はクラブ活動やスポーツの練習のための施設。学校の部活動みたいだけど、学校ごとじゃなくして、年齢に関係なく参加できるようにしたい。頑丈な低層階に配置する理由は、音楽の練習もできるように壁を厚くしたいし、プールも欲しいから。
17階から19階が中学校と高校。17階は体育館になっている。
20階から26階がお店。食料品とか、服とか、生活雑貨とか。
27階がフードコートで、28階がレストランや喫茶店。フードコートはほとんど機械化された大量生産でセルフサービス。レストランのほうはシェフやウェイターがいて、高級料理もある。フードコートが無料になったとしてもレストランは有料だね。
29階は集会場。即売会や展覧会のような催しもできるし、冠婚葬祭と宗教の施設もある。
30階と31階は動く歩道。動く歩道以外は吹き抜けになっていて、集会場を上から眺めることができる。
32階はオフィスの窓口。銀行、郵便局、市役所、警察署、他にもいろんな企業や組織に窓口が必要だろう。それから、美容院やエステなんかのサービス業もここにしよう。
33階は病院。診療科ごとに別々になっている。
34階から45階はオフィス。普通の企業のほかに市役所などの公共機関もあるし、楽園の本社もある。放送局とかもあるだろう。あと、大学はソーラーキャッスルに1か所必要だから、このフロアのどこかにあるといい。
46階は予備スペース。将来何か広い施設が必要になったときのために空けておきたい。
47階は空調設備。空気を取り込んで温度や湿度を調整する設備と、風力発電所がある。
48階は貯水槽と、下水を中水にする処理場。すごく重量があるので、大きなピコパイプを使うことで床だけでなくフロア全体を大きなトラス構造にしたい。
49階から98階が住居。コンビニ、ドリンクバー、小学校、こども園、児童公園もある。
99階は復水器と貯水槽。ここもフロア全体を大きなトラス構造する。
100階はスポーツ公園。16階よりも広々とした空間で球技などを楽しめるようにしたい。
ここまでの考えを文書にしてアップロードした。
翌日、会議でこの考えを説明すると、委員長が質問した。
「動く歩道のある30階と31階は人通りが多い栄えた場所になるわ。そのすぐ近くに集会場を配置した理由を説明してもらえるかしら」
もちろん、それは考えてある。
「基本的にはグランドシャフト内のエスカレーターで移動するだけで日常生活ができるようにしたいので、日用品や食料品のお店ならどのグランドシャフトの近くでも同じ商品が手に入るような品ぞろえにしたいです。フードコートも、どの場所でも同じメニュー。それなら動く歩道を使う必要はありません。集会場は、目当ての即売会や結婚式はソーラーキャッスルの中で1か所ですから、動く歩道を使って移動する必要があります。それに、催しの内容は毎日違いますから、動く歩道から見えると楽しいと思います」
「なるほど。レストランやオフィスの窓口も動く歩道に近いわね」
「個性的なレストランもあちこちにあるということを想定して、動く歩道を使って遠くのレストランに行くのもありかと思いました。オフィスの窓口も、ソーラーキャッスル内にたくさんある窓口もあれば、1つしかない窓口もあるでしょう。病院も1か所しかない診療科があるでしょう」
サフィーヤさんが口をはさんだ。
「集会場にはいろんな宗教の施設があるのデスネ」
「うん、仏教・キリスト教・イスラム教と、神道の神社もあるといいと思うな」
「マホさんは女神様にお会いしたことがあるそうデスが、その女神様にお祈りする場所はあるデスカ?」
「残念ながら、あの女神様を祀る宗教はこの世界にはございませんことよ」
「だったら新しく宗教を作るデス」
「面白そうなのー! マホを転生させてくれた女神様にお祈りする宗教なのー! 転生のアフターサービスってことでねー、お願いくらいは聞いてくれそうなのー!」
宗教ってそんな軽いノリで作っていいのかわからないけど、実際に神に会った人なんてそういるものじゃないからいいのかな。
「なんて名前の女神様なのー?」
「お名前は伺っておりませんわ」
「だったら適当に名前を付けるのー」
さすがにノリが軽すぎる。拾ってきた猫じゃあるまいし。
「今すぐ決めることじゃないよね」
「ではわたくしが考えておきますわ」
宗教施設についてはそれで異論無さそうだ。
「16階のクラブ活動の施設には、ぜひeスポーツに取り組める設備を充実させてほしいぞ」
「それってゲームセンターですよね」
「そうとも言うぞ。だが侮るな、eスポーツで高みを目指すことは己の精神の鍛練にもなるし、仲間との絆を深めることにもなるぞ」
「べつにゲームセンターに反対してるわけじゃないですよ。ゲームセンターもこの16階にしておきましょう」
「そこが居場所になる人も多そうだぞ」
「わたくしはドリンクバーで近所の方々と語らって過ごしたいですわ」
「そうだね、ソーラーキャッスルのどこが一番居心地いいかは人によって違うと思う。チアだとスポーツ公園にいるだろうね」
「あたしは29階で催し物を見てまわりたいのー。でも1階の公園にいる人も多そうなのー。どんな所なのー?」
「木がうっそうと茂っていて、散歩したりベンチに座ったりしてリラックスする場所かな。動植物に触れ合える場所も必要だと思って」
「猫を撫でられるといいぞ」
「そうですね、猫の放し飼いとか、いいですね」
「アザラシも撫でられるといいのー」
「うん、アザラシの放し飼い……いやそれはおかしい気がする」
「ウサギもいるといいですわね」
「あー、それもいいね、かわいくて。マホはウサギが好きなの?」
「ええ、なかなかわたくし好みのお味でしてよ」
「食べるために放し飼いにするんじゃないよ!」
「たぶん猫が食べるぞ。食べ残した死体が時々転がってることになるぞ」
「そんな殺伐とした公園にはしたくないな……。猫とウサギの両方は放し飼いにできないか。あと、公園に熱帯魚とサンゴの水槽があると落ち着けていいと思うな。熱帯魚を眺めながら座ってたら、すごくリラックスできそう」
「ピコさんはこういう静かな場所が居心地いいデスカ? ソーラーキャッスルはそれぞれの好みに合った居場所が考えられていて素敵デスネ。私は16階でのクラブ活動に惹かれるデス」
「私は確かに静かな場所が好きだけど、一番居心地いいのは自分の部屋かな」
「せっかく色々造っても自分で使わないなんてもったいないデス! もっとおしゃべりするデス!」
「人と話すことでストレス解消するって人もいるけど、私は人と話すことはストレスなんだよね」
「じゃあ何とお話しするデスカ?」
「話さないってことだよ! あー、ストレスたまる!」




