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都市が丸ごと収まる建物の設計を任されたので好きにしちゃう件  作者: 黒魔
2章 ベンチャー企業の技術責任者
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建設会社と専門家たち 4

 この後、委員長によるプロトキャッスルの設計が本格化した。私の書いた案をベースにして、まずは骨組みから決めていくそうだ。各施設の内部の設計については、その分野に詳しい人が入社してから設計するという。私の案に対する質問や設計方針の相談などのメールが委員長からたくさん来て、対応するのに苦労した。


 後日作られた人材募集広告では、太陽熱発電とか光ファイバーとか空港など様々なジャンルの専門家を募集することが打ち出されていた。


 そして七月。合同会社楽園のあるビルのすぐ近くのビルのフロアを借りて、合同会社楽園建設が本格的にスタートした。といってもよそから建設の仕事を受注するわけではなく、プロトキャッスル建設の準備を進めるのが仕事だ。


 建設作業員として入社した人たちに対して魔法の訓練が始まった。まずはチアたちによる基礎訓練。2か月ほどしたらマホが高度な錬成魔法を教えるという。錬成魔法を使いこなして品質の良いものを作り出せるよう、訓練には全部で5か月くらいかけることになった。


 システムエンジニアも集まり、フィオさんたちと一緒に仕事のルール作りに取り組みだした。


 以前ピコパイプの研究をしていた材料工学科の学生も楽園建設に入社することになった。ピコパイプの改良の研究に取り組むという。


 プロトキャッスルの設計をするのも委員長だけではなく、何人もで手分けして進めだした。でも全体の方針を考えるのは私の仕事のままらしく、質問のメールが来る頻度はさらに上がった。返事を書くのに何時間もかかる日もある。負担が大きいのでナノに訴えてみた。


「私は建築の専門家じゃないのに、なんでみんな私に設計方針を聞いてくるかな? 毎日返事を書くだけで大変だよ」


「プロトキャッスルの全体像を一番たくさん考えたのがピコなのー。だからピコの持っているイメージに合わせるのが一番なのー」


「私は専門家がそれぞれベストな方法を自分で考えて、それを組み合わせるのが効率いいと思うけどな」


「それだと方針がバラバラなのー。組み合わせるとちぐはぐになっちゃうのー」


「まあそれはそうだけど」


「ピコには負担が大きいけどねー、ピコが理想像を考えてくれたらみんなそれに合わせるのー。だからねー、プロトキャッスルとソーラーキャッスルの設計はピコの好きにしちゃっていいのー」


 あの超巨大なソーラーキャッスルが全部私の考えた通りになるってことだよね。やってみたい。なんか心の奥底で、野心に火が付いたような気がする。


「わかった、頑張ってみるよ」


 翌日、工場フロアの設計担当者からメールがあった。「6階にあるごみ集積場へのごみの搬入方法をご教授願います」とある。少しは自分で考えてよ! ごみ収集車で集めてまわることくらいすぐにわかるはず……


 ……いや待てよ。住居フロアの通路は狭いから、車は通りづらいし、ごみを置いておく場所もない。ごみを置くスペースを確保するならグランドシャフトの前だろう。作業員は車よりもエレベーターでごみを集めてまわったほうが効率的かな? 6階の図面を開いてみると、集めたごみの集積場はグランドシャフトのすぐ前だ。グランドシャフトの中のエレベーターを使うのが良さそう。いや、エレベーターを作業員が長時間占拠するのは問題があるかな? もっと楽に集められる方法は……


 44階から6階まで、ごみを投げ捨ててみたい。ふと、そんな遊び心が頭をよぎった。私の好きにしちゃっていいんだよね。こんな提案しても、みんな形にしてくれるのかな? そんな案を返信してみよう。


「9本のうち中央のグランドシャフトに縦穴があり、各階から6階までごみを投げ捨てます」


 後日、グランドシャフトとごみ集積場を改良した図面が送られてきた。縦穴については「ダストシュート」と書かれている。「ダストシュート」とはごみを投げ捨てるための縦穴だそうで、実際に使われていたけど安全面や衛生面の問題であまり使われなくなっているとのこと。そしてその問題を解決するために、子供の進入を防ぐ装置や内部を清掃する装置の案が書かれていた。


 ほんとに私の思い付きを形にしようとしてくれてる! なんか面白くなってきた。ソーラーキャッスルの設計をするときはもっと色々盛り込んでみようか。


 その後のやり取りで、9本のグランドシャフト全部にダストシュートが付くことになった。グランドシャフトからごみ集積場まではベルトコンベアでごみを運ぶのだ。


 翌週、インフラの設計担当者からメールがあった。「海水を()かして淡水化するのは『多段フラッシュ法』という方法が主流です」とあり、資料が付いていた。気圧の低い部屋で低い温度で沸騰させることでエネルギー効率を良くするという。「ただしこの方法だと、海水を沸かした蒸気のうち、タービンを通して発電に用いるのはほんの一部だけになります」と書かれている。それでも水と電気の両方を十分に(まかな)えるそうだ。


 私の知らない技術も調べて提案してくれる。私の設計が不十分でも、みんなでいいものに改良してくれそうだ。なんか気が楽になった。


 水を得るのに多段フラッシュ法を使うことはOKしておいた。

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