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都市が丸ごと収まる建物の設計を任されたので好きにしちゃう件  作者: 黒魔
2章 ベンチャー企業の技術責任者
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建設会社と専門家たち 3

「エスカレーターや動く歩道も社内で造りたいですね」


「機械も自分たちで作るとなると、さすがに私も想像つかんぞ」


「楽園ロボティクスの人たちに相談するといいのー。あと、公共施設もうちで運営するのー。駅に港に空港、公園や清掃工場もなのー」


「そっか、駅員さんとかも必要なんだ」


「もはや何の会社かわからんぞ」


「魔法の会社ですわ」


「納得したぞ」


「いや、そこで納得されても困ります」


「おっきな建物を造ってねー、そこに住む人たちの生活基盤を提供する会社なのー! 造るまでが合同会社楽園建設でねー、運営は合同会社楽園なのー。新しく『合同会社楽園交通』を作ってもいいのー」


「じゃあ外注するのはどんな仕事かな?」


「洋服屋さんとか、ホテルとかなのー。よその企業を誘致するのー。社員食堂以外にもレストランとかあっていいのー」


「銀行とか美容院とか、他にも貿易会社とかもあっていいね」


「市役所や警察署の職員はどうするのかしら?」


「公務員はモーリタニア政府の管轄(かんかつ)なのー。必要な人材を派遣してくれるって話になってるのー」


「市長は?」


「選挙なのー」


 ほとんどの公共施設や住宅をうちの会社が管理する都市で、市長や市役所の権限がどれくらいあるんだろう。


「学校はどうかしら?」


「政府からは何も言われてないのー」


「私立学校を誘致すればいいんじゃないかな。病院も誘致するのかな?」


「そういう公共性の高いものは微妙なところなのー」


「植物工場もどこかの企業を誘致できたらいいんだけど」


「植物工場に本腰入れて取り組んでる企業は少ないぞ。来てくれるか疑問だぞ」


「いくつかの企業にあたってみてねー、だめなら自分たちでやるのー」


 楽園として行う仕事とよその会社を誘致してやってもらう仕事との区別がだいぶついてきた。他に自分たちでやったほうがいい仕事は無いかな?


「そうだ、システムエンジニアもうちで雇ったほうがいいかな」


「どうしてなのー?」


「こんなにいろんな人たちが一斉に仕事を始めるんだよ。それに住人の生活の隅々までうちが面倒を見るんだよ。仕事の管理や連携に必要なシステムも生活の基盤になるシステムも、いろんな会社のシステムをつなぎ合わせるよりも、うちの会社専用の大きなシステムを作ったほうが効率がいいかなと思って」


「それはぜひ欲しいぞ! 書類にハンコを押すような昔のやり方には戻りたくないぞ」


「仕事の管理方法を決めるのはシステムエンジニアだけだと足りないわね」


「システムエンジニアも含めて、仕事のサポートをする仕事にもっと人員を充てるべきだぞ。たくさんの仕事を外注するのなら、その仕事のお膳立(ぜんだ)てをして進捗(しんちょく)管理する仕事がたくさんあるぞ」


「会社に必要な人材がわかってきたのー。募集をかけるのー。企業も誘致するのー」


「うー、こんな幅広い人材を集めるのは大変だぞ」


「広告出しまくるのー。でもねー、駅員さんとか清掃員さんとかを雇うのはねー、プロトキャッスルがある程度形になってからなのー。今必要なのは設計する人と建設作業員なのー」


「建設作業員はなぜ今必要なのかしら?」


「建設作業員には今から魔法を覚えてもらうのー。念動魔法とか錬成魔法で造っていけばすごく早く出来上がるのー」


「建設方法からして未経験のものなのね。安全性の確保が大変だわ」


 委員長とフィオさんが眉間(みけん)にしわを寄せている(かたわ)らでナノが能天気な笑顔を見せている。ナノのポジティブさは「向こう見ず」と表現したほうがいいよね。先行きに不安が(つの)る。ナノに警鐘を鳴らすためにも委員長に賛同しておこう。


「そうですね、安全性のためには慎重に進めていきたいところですね」


「そうね。ピコさん、このとても巨大で特殊なプロトキャッスルの安全を守るためには、どのような災害に重点的に対応すべきかわかるかしら?」


「地震、でしょうか」


「大きな建物の構造を考えるときは、まず地震に耐えられるかどうかが思い浮かぶわよね。でも、地震に耐える設計にするのは当たり前だわ」


「雷」


「雷は避雷針があれば平気よ。でも建設作業中は雲の高さで作業するから雷に気を付ける必要があるわね」


「火事」


「そう、火事よ。プラスチック素材のスカスカの床はあっという間に燃えるわ」


「おやじ」


「だから火事って言ってるでしょ! 正解は火事よ! 安全のためにおやじ災害に重点的に対応するって、どんな建物よ!」


 委員長にツッコまれた。堅物(かたぶつ)な感じの委員長が真剣になってツッコむのは面白い。そしてフィオさんは再びうとうとしている。人材集めについて悩むのはもうやめたようだ。


「よく燃えて空気の通りがいい床が垂直方向にたくさんあるから、まさにキャンプファイアーよ。上昇気流がすごい勢いで発生して、消火どころではなくなるわ。住民のほとんどは逃げる間もなく亡くなるわね」


 ふざけてる場合じゃなかった。人口400万人のソーラーキャッスルで起きたら未曽有(みぞう)大惨事(だいさんじ)だ。


「火事を防ぐためにどんな対策が考えられるのー?」


「そうね、トラス床に使うピコパイプは難燃性の素材にする必要があるわね」


「そうですね、素材をもっと研究する必要がありますね。それとは別に、天井裏にあらかじめ消火剤を()いておいてはどうでしょう? 天井が燃えたら消火剤が降ってきますよ」


「面白い発想ね。普通ならスプリンクラーを使うわよ」


「消火栓を全部の家に配置するのー! ものすごいポンプで海水を()み上げてねー、消火栓からすごい勢いで放水するのー!」


「その近くの家は海水で水浸しになって、たまったもんじゃないね。そんなすごい勢いじゃなくても、消防士が遠隔操作して消火栓から放水出来たら、消防車が到着するまで待たなくていいね」


「念動魔法で動かすのでして?」


「モーターを使って電動で制御するんだよ。カメラも付けておく必要があるね。スプリンクラーより、この消火栓を部屋ごとに設置するべきじゃない?」


「カメラから私生活が丸見えになるわよ」


「それは緊急時しか映せないようにしないといけませんね」


「どのようなときが緊急時でして?」


「マホの着替えなのー」


 今マホの大きな胸を堂々と見ているのに、さらに盗撮もしたいの?


「こんな人がハッキングするかもしれないから、カメラはすごく感度の低い赤外線カメラにして、炎しか映らないようにしないといけないね。あ、カメラじゃなくて赤外線センサーだけでもいいかも」


「遠隔操作できる消火栓、なかなかいいアイデアね」


「赤外線センサーを使って放水するんだったら、いっそのこと全部自動のほうがいいかも」


「他にはどんな対策が考えられるのー?」


「口から火を()く動物を飼うのは禁止ですわ」


「禁止する前に、そんな動物いないから! マホの世界にはいたかもしれないけど!」


「自分で口から火を吐くのも禁止ですわ」


「そんなことできるも人いないよ!」


「先日、口から煙を吐いてらっしゃる方を見かけましたわよ」


「それはたばこ! 葉っぱに火をつけて煙を吸ってるの!」


「火事の原因で多いのはたばこの火よ。たばこを禁止するのも効果がありそうだわ」


「なるほどなのー。誰もいない所に新しく作る都市だからねー、住人はたばこを吸わない人だけを集めればいいのー」


「火を使わなければいいんだから加熱式たばこならいいんじゃない? 加熱式たばこ専用の喫煙所を作ろう」


 それにしても、ナノは最近たくさん質問するようになったな、と思う。以前のナノならこんな会議は開かずに全部自分で即決していた。自分で判断する前に他の人のアイデアを集めたほうが結果としていい方向に進む、ということがわかってきたようだ。

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