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都市が丸ごと収まる建物の設計を任されたので好きにしちゃう件  作者: 黒魔
2章 ベンチャー企業の技術責任者
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建築の骨組み 2

 私はナノに報告した。


「そういうわけで、太さ1メートルの鉄骨4本で太さ5メートルの柱を作って、それを15メートルごとに配置すれば大丈夫だよ」


「そしたら柱と柱の間は10メートルしかないのー! 床面積の9分の1が柱なのー!」


「まあそうだけど、柱は中空だから柱の中に部屋を造ることができるし、問題ないんじゃない?」


「それだと広い空間を確保できないのー! 野球をやるなら柱と柱の間は最低100メートル必要なのー!」


 それってプロ野球の球場サイズだよね。まさか建物の中でそんなことをやる前提だったとは。なんか脱力した。でもまあ広い空間が欲しいというのは同意する。


 そんなに柱の間隔が広かったら、床はどうなるんだろう? 私は鉄骨で縦横1メートルの床を1枚作り、その四隅を柱で支えてみた。そして重力を強くすると、簡単に崩れた。やはり重すぎるのだ。


 柱で支えないなら()り橋みたいに上からワイヤーで支えようか? いや、100階ぶんの床を支えるだけの数のワイヤーを斜めに張ったら人が通る場所も無くなっちゃう。


「やっぱり無理だよ、野球場が収まるような柱間隔なんて」


「あら。野球場の屋根には柱がありまして?」


「え。そういえば柱が無いね。どうなってるんだろう」


 ネットで調べてみると、柱の無い広い空間にかける屋根の構造は「トラス構造」といって、細い棒を立体的に組み合わせてたくさんの三角形にしているそうだ。ピラミッド型をたくさん並べた形らしい。


「これなら中身スカスカだから軽量化できそう。それにしても屋根つきの球場なんてよく知ってたね」


「いえ、野球場というものもどのようなものか存じ上げませんわ」


 知らないで言ってたのか。ひょっとしたら、「野球場に屋根なんて無いよ!」というツッコミ待ちだったのかもしれない。


「でも、細い鉄の棒で床を造ったら上に重い物を置けないね。すぐ壊れそう」


 圧縮にも引っ張りにも強くて、それでいて鉄より軽い棒が必要だ。


「そうだ、ピコパイプだ! あれなら軽くて丈夫だから、トラス構造の床にするのにぴったりだよ!」


「ピコパイプ? ああ、石芯炭素繊維強化プラスチックのことですわね」


 私の名を冠した「ピコパイプ」のほうが名前として印象が強すぎて、つい自分で使ってしまったけど、それをマホに指摘されるのはなんかイラッとする。マホはカーボンファイバーのことを「カーバンクルファイター」とか言ってたよね。


「ピコパイプでしたら大学に在庫がたくさんありましてよ。わたくしが頂いてきますわ」


 マホは大学まで飛んでいき、1メートルほどのピコパイプ20本を持って帰ってきた。


「これを太さ1ミリ、長さ1センチのパイプにできるかな?」


「よろしくてよ」


 マホが魔法を使うと、ピコパイプはみるみる長く細く引き延ばされて空高く伸びていった。それを短く切り刻み、また引き延ばすのを繰り返して、針金のようなピコパイプがたくさんできた。


 今度はそれを空中で小さなピラミッド型に組み合わせ、たくさん並べていった。魔法で一気にたくさん作れるとはいえ、8万本もの細かいパイプを組み合わせるのはさすがに根気がいる。1メートル四方のトラス床を1つ作るのが限界だった。

挿絵(By みてみん)

 出来上がったトラス床の見た目は金網のようだ。その四辺を鉄骨で囲い、四隅を鉄骨の柱で支えた。そして重力を強くすると、多少たわみはするけど壊れはしない。次に、コンクリートの(かたまり)をトラス床の上に置き、再び重力を強くしてみた。たわむ。でも持ちこたえている。重力が100倍を超え、300倍になってもまだ耐えている。


「すごいよこれ! 床はこれでばっちりだよ。次は柱だね。柱もピコパイプにしてみようか」


 ピコパイプを縦に3本つないで3メートルにして、それを1メートル四方の正方形の四隅に立てた。その間を鉄骨で横につなぎ、斜めにも棒をつないで筋交(すじか)いにすることで補強した。床と同じ重さを柱にかけるために、鉄の塊を柱の上部にくっつけた。そして重力を強くすると、持ちこたえた。揺らしてみると……柱がパキッと折れた。


「あらあら。さすがにこの重さには耐えきれませんでしたわね」


「もっと太い柱にしないと。もっと石を多めにしたピコパイプを作ってみようか」


 試行錯誤を繰り返し、最終的には太さ10センチの柱になった。下のほうはほとんどコンクリートでできている。トラス床を囲む水平の鉄骨もピコパイプに取り換えた。これを600倍の重力で揺らしても耐えた。


「よし、これなら大丈夫。100メートルといわず、150メートル間隔でもいけるよ、これ」


 私はナノに報告した。


「よくやったのー! 柱の間隔は150メートルにするのー!」


「そうだね。これで建物の基本構造を考えることができそう」


「よろしくなのー。そういえば、この建物の名前ってねー、ピコは考えてあるのー?」


 以前考えたことはある。でも単なる思い付きで、べつにかっこいい名前じゃない。


「うーん、考えたことはあるけど……」


「ピコがこの建物の話の言い出しっぺなのー。だからピコが考えた名前をつけたいのー」


「そう? でもなあ……」


「言わないと、『ピコランド』になっちゃうのー」


「そんなの恥ずかしすぎる!」


「そんなこと言ったらテーマパークに失礼なのー」


「テーマパークじゃなくて都市なんだよ。全然違うって」


「アニメのヒロインの名前を冠した『ソマリランド』って国もあるのー」


「ソマリランドはアニメと何の関係も無いよ!」


「ほらほら、早くピコの考えた名前を言うのー」


「わかった、言うよ。『ソーラーキャッスル』。太陽熱発電が産業の根幹だから」


「どうしてキャッスルなのー?」


「威圧感のある大きな建物だから」


「なるほどなのー。じゃあ、これからはソーラーキャッスルと呼ぶのー」


 それでいいんだ。


「ところで、実験に使った鉄とコンクリートはいかがなさいましょう?」


「好きな形にしていいのー」


 そのあと、駐車場に鉄骨コンクリート製のアザラシ像が鎮座することになった。

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