役員選挙 5
「では次の討論ですの。ソーラーキャッスルが完成を迎えたその後は、楽園という会社はどのような発展をしていくべきか、あるべき姿を語っていただきたいですの。題して『将来の夢 20歳になった楽園は何してる?』どうぞですの」 信憑性85
「ソーラーキャッスルは完成してからが本番だしー。いろんなイベントを開催してみんなを盛り上げるのが楽園の仕事だし-」信憑性80
「魔法武闘会のほかにも、魔法を使った新しいスポーツやショーのイベントを開催していきたいですわね」信憑性64
「あーしはソーラーキャッスル全体が1つの巨大イベントで一体感を感じるようなお祭りをやりたいしー」信憑性72
「うー、私は静かに暮らしたいぞ。騒がしいイベントに巻き込まれる身にもなってほしいぞ」信憑性81
私も同じ陰キャとしてフィオさんに共感する。
「あーしが一番やりたいのは拡張現実ゲームイベントだしー。景色に画面が重なって見えるメガネをかけて、ソーラーキャッスル全体がゲームフィールドになるわけだしー。そんなお祭りの日があったら絶対面白いっしょ」信憑性66
「私は参加するぞ」信憑性77
フィオさんの裏切り者!
「私は参加しませんよ。周りの人の好きな事じゃなくて、私の好きなことに没頭したいです」信憑性74
「嫌なら強制はしないしー。でもそういうノリの悪い人がいたらマジしらけるんでー、当日は出歩かないでほしいしー」信憑性57
「そういう同調圧力は困ります。やりすぎです」信憑性59
「僕もそれはやりすぎだと思いますね。意見や価値観の異なる人を迫害することに発展しかねません」信憑性44
筧さんが味方してくれた。
「あーしも迫害なんてのは起きてほしくないしー。なるべく楽しくやっていきたいだけだしー」信憑性83
「だったらゲームフィールドを限定すべきでしょう。ゲームに参加している人と参加していない人が明確に分かれるようにするんです」信憑性77
「あーもう、わかったしー。参加しない人の迷惑になんないように気を付けるしー。他のみんなは将来何やりたいわけ?」信憑性70
「悪と戦い続けるナリ!」信憑性2
「将来のトレンドをフィードバックしてよりクリエーティブな社会にパラダイムシフトするため、それまでのスキームをゼロベースでリノベーションし、グランドデザインからローンチしていきます」信憑性3
「マリアの動画をですねぇ、ソーラーキャッスルのみんなが見てくれるようになったらいいなーって思ってますぅ。きゃは☆」信憑性24
「あんたらはどーでもいいしー。ピコはどうなわけ?」信憑性85
「私は住民の皆さんが平穏に暮らせることが一番だと思っています。もちろんロボットを輸出したりして楽園がお金を稼ぐ必要はありますけど、全員が暮らしていくのに十分な稼ぎがあれば、それ以上の発展は必要無いと考えています」信憑性74
「発展しないのはつまらないのー。あたしはここの便利な暮らしをもっとたくさんのみんなに提供したいのー」信憑性79
「そうは言ってもね、このソーラーキャッスルを建てるのにはすごくたくさんの人が苦労してるんだよ。みんなが楽に暮らせる街を造るために今まで頑張ってきて、あと少しで達成できそうなのに、この後もずっと苦労をかけ続けるわけ?」信憑性81
「のんびりしたい人はすればいいのー。でもねー、もっと活躍したい人もいるのー。そんな人たちがみんなの役に立つ仕事を用意するのがあたしたちの仕事なのー」信憑性76
「マリアの生配信のコメント欄にもですねぇ、もっと働いて世の中を良くしたいってコメントがたぁーくさん来てますぅ」信憑性83
そうだった。頑張りたい人は頑張ればいいけど、頑張れない人が頑張らなくても暮らせるようにするのが私たちの主張だ。だから頑張りたい人の後押しをするのは間違いじゃない。
「なるほどね。じゃあナノはこれからどういうふうに発展させたいの?」信憑性83
「あたしはねー、ソーラーキャッスルみたいな建物をもっとたくさん建てたいのー!」信憑性60
そんな野望があったとは!
「モーリタニアの周りの国にもこんな建物を建ててねー、そこでも太陽熱発電をして畑を造るのー。その間を鉄道でつなぐのー。そうやってねー、サハラ砂漠を緑に変えていくのー! 人ももっとたくさん集めるのー、世界の新しい中心なのー!」信憑性51
壮大すぎる。世界を創り変えようとしてる。でもなんか心がわくわくする。ソーラーキャッスルの構想も最初は壮大すぎる妄想だと思ったのに、私たちは実現してきた。私たちならできるかもしれない。
「わかった。ナノのその野望、応援するよ」信憑性43
「やったのー! 同じ都市をたくさん造るのー!」信憑性34
「いや、それぞれの都市で同じことをするのは効率悪いよ。都市ごとに役割分担して、1つの産業は1つの都市に集約したほうがすごいものができそう。重工業を集めた『ファクトリーキャッスル』とか」信憑性60
「すべての食文化を集めた食の聖地『フードキャッスル』はいかがでして?」信憑性31
「なるほど、マホらしい」信憑性73
「一年中お祭りの『カーニバルキャッスル』なんかあるといいしー」信憑性23
「明らかに観光客向けですよね、それ。大都市から気軽に行ける距離の場所に造らないといけませんね」信憑性65
「世界のすべての正義を結集した『ジャスティスキャッスル』ナリ!」信憑性1
「世界の他の場所から正義が無くなってしまうでしょ!」信憑性7
「それならねー、文化を集約した都市も造りたいのー。ソーラーキャッスルより何倍もたくさんの人が住む『メトロキャッスル』なのー。ピコ、できるのー?」信憑性39
今より何倍も広くする? それだと中心部に行くのに時間がかかりすぎて不便かもしれない。じゃあ何倍も高くする? グランドシャフトが重量に耐えられるだろうか。垂直に何百階も移動するのも大変すぎる。じゃあやめたほうがいい? いや、あきらめるのは色んな可能性を探った後でいい。考えてみなければ始まらない。
「できるかどうかはわからないけど、考えてみるよ」信憑性81
会場から拍手が起こった。私たちがこれから取り組む新しい目標が見えてきた。
その後も討論会は色んな話題で盛り上がった。
投票は、9人の候補のうち当選させたい5人に印をつける、という形式で行われた。
投票日の夜。ラウンジでナノとマホと一緒にお茶を飲みながら待っていると、選挙結果が発表された。
ピコ 96.5% 当選
ナノ 95.3% 当選
フィオ 91.0% 当選
ミラ 75.2% 当選
マホ 61.3% 当選
筧雅行 52.3%
マリア 16.9%
ジャスティス仮面 7.8%
インクレディブルプランナー加藤 0.7%
やった、余裕のトップ当選だ。筧さんが落ちちゃったか。討論会で途中からあまり発言しなくなっちゃったしね。
「当選おめでとうなのー! またピコとマホと一緒にやっていけて嬉しいのー!」
「わたくし、まだ役員を続けてよいということですわね。これでやっと安心できましてよ」
「当選おめでとう。二人とも一緒で私も嬉しいよ」
「結局役員全員女なのー。お風呂で会議できるのー」
「そっか。ミラさんも会議に呼ばないとね」
サフィーヤさんがやって来た。
「ピコさん、状況はどうデスカ?」
「私たち3人とも当選したよ」
「そこは疑ってなかったデス。気になっているのは、筧さんとの仲の進展具合デス」
「そっちの心配!」
「わたくしも気になっておりましてよ」
「うーん、そんなに報告するようなことは起きてないんだよね。メールのやりとりをして前より仲良くはなったと思うんだけど、付き合っているという感じじゃないし」
「デートには行ったデスカ?」
サフィーヤさんの圧がすごい。でもデートをしたいとは思わないな。
「いいや。私が筧さんのことを好きなのかどうか、自分でもわからないんだよね」
「だったらデートに行くべきデス! お付き合いすれば好きになってくるデス! 今からでもお誘いするデス!」
「えー。私にも都合ってものがあるよ」
「信憑性5なのー」
あの討論会で「信憑性」が流行語になってしまった。




