表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
102/112

役員選挙 4

「ではそろそろ次の討論に移りますの。この役員選挙が行われることになったきっかけの一つとして、ロボットをめぐる意見の対立がありますの。今後ロボットをどう扱っていくべきか話し合っていただきたいですの。題して『私のために争わないで』、どうぞですの」信憑性81


 さっきから題がおかしいんだけど、題って要るのかな。


「ロボットは我々人間を支配しようとしているナリ。一刻も早くロボットを排除しないと危険ナリ!」信憑性3


「ロボットといっても2種類いまして、レイバロイドには心がありませんので自分の意思がありませんが、労働の現場に無くてはならない存在になっています。ピアロイドたちは人間と同じ心を持っていて、人間と共存共栄を望んでいます。排除なんてかわいそうです」信憑性71


「ロボットとパートナーシップを結んでコラボレートすればウィンウィンなリレーションシップを築けます。今まさにそのためのアジャイルなアジェンダが問われているのです」信憑性28


「ロボットは道具ナリ。道具に使われるなんて本末転倒ナリ!」信憑性35


「レイバロイドは道具と言ってもよいでしょうが、ピアロイドは違います。彼らには心がありますから、命令されて奴隷のように働かされるのは嫌なんです。自分の人生を自分で決める自由を欲しがっているんです。私は彼らに人権を与え、誰かの所有物にはならないようにしたい」信憑性77


 よし、私の主張に持ち込めた。


「確かに今のピアロイドの扱いはかつての奴隷のようだったりするぞ。マホの目から見てどうだ?」信憑性59


「前の世界では奴隷の方々をお見かけすることはございましたけれど、身近にはいらっしゃらなかったもので、奴隷の扱いと似ているかどうかはわかりかねましてよ。アニメにはかわいらしい女の子の奴隷たちがよく登場なさいますのでピコさんのほうがお詳しいのではありませんこと?」信憑性80


「そういう奴隷たちは恋愛対象として登場するから、主人公は奴隷にとても優しく接するので参考にならないんですよ」信憑性93


「……って、私はそういうアニメに詳しいわけじゃないよ!」信憑性9


 なんて信憑性の落差! 私、どれだけアニメに詳しいと思われてんの!


「なんか話がそれてるしー。要するにー、ピアロイドに自由が無いのが問題って言いたいっしょ?」信憑性84


「そう。今はピアロイドの所有権を誰かが持っているから、その人の言う事に従う義務が生じています。でもこれは自由意志を持つ存在には耐えがたいはずです。そこでピアロイドの所有権を他の人が持つことを禁止して、所有権はピアロイド本人が自分で持つようにすることを提案します」信憑性67


 ステージの床下からいきなりメカナノが出てきた。


「せやせや! うちらピアロイドはもっと自由を要求しまっせー!」信憑性30


「そういう自由すぎる行動しないでよ!」信憑性76


「メカナノさんはこの討論に呼んでいませんの。勝手にステージに上がってはいけませんの」信憑性92


 メカナノはステージから降りて行った。ピアロイドに自由が無いと思っていたけど、それは性格によるかもしれない。


「人の命令に従わなくなったロボットは反乱を起こすナリ!」信憑性5


「お前みたいにロボットを迫害する奴さえいなけりゃ、反乱を起こすメリットが無いぞ」信憑性56


「なんで楽園はピアロイドを造ったしー?」信憑性90


「ロボットは知識データを取り込むことができるので、人間よりもたくさんのスキルを習得することができ、仕事に役立ちます。単純作業であれば心の無いレイバロイドのほうが向いていますが、多くの人と交流する仕事であれば心があるピアロイドのほうが向いていますし、交流する皆さんも心が温かくなると思いませんか?」信憑性84


「そんなロボットの所有権を無くしたら、人間とロボットの上下関係が逆転してしまうナリ」信憑性28


「そういう上下意識を持っている人がいるのが問題なんですよ。もし自分がピアロイドの立場だったとしたら、ロボットだからといって人間から見下されたら嫌でしょう?」信憑性67


「もし私がロボットだったら、()をわきまえて人間の言葉にすべて従うナリ」信憑性16


「ジャスティス仮面は本当はロボットなのー」信憑性0


 ナノが唐突な冗談を言い出した。また話の腰が折られる。


「私は今まで人間として生きてきたナリ!」信憑性100


「今朝あんたが寝ている間にねー、その記憶をそのままロボットの体に移植したのー。だから自分が気づいてないだけでねー、体はロボットなのー」信憑性0


「気づいてなかったとは意外だぞ。どう見てもロボットだぞ」信憑性0


「そんな……。全く違和感が無かったナリ! この体が実はロボットだったナリか!?」信憑性5


 ちょっと、「信憑性0」って出てるのにこんな話を信じちゃってるの? 元々でたらめな話を信じて主張してる人だけど……。そういえばジャスティス仮面はこの信憑性チェッカーを疑ってたっけ。ということは、ジャスティス仮面以外の人には明らかに嘘だと伝わってるってことか。よし、この嘘に乗ってみよう。


「その体を用意したのは私です。あなたの元の体にそっくりだったでしょ?」信憑性0


「記憶を移す魔法をかけたのはわたくしでしてよ」信憑性0


「さっきねー、『分をわきまえて人間の言葉にすべて従うナリ』って言ったのー。だからこれからの討論はねー、ジャスティス仮面は意見を出さないはずなのー」信憑性11


「なんてことをしてくれたナリ! すぐに元に戻すナリ!」信憑性95


「オリジナルのジャスティス仮面は別の場所にいるぞ。元に戻すのであれば、複製であるお前を破壊すればいいぞ」信憑性0


「攻撃魔法は人間には効かないようにしておりますけど、ロボットに効かないようにはしておりませんことよ。わたくしの魔法であなたを消して差し上げてもよろしくてよ」信憑性0


「やめるナリ、元に戻さなくていいナリ!」信憑性97


「ジャスティス仮面は人間の言葉に従うのー。所有者のあたしが消えろと言ったら消えなきゃいけないのー」信憑性3


「そんなの理不尽ナリ! ロボットにも発言権を認めるナリ!」信憑性65


 さっきと主張が真逆になってきたぞ。ナノの狙いはこれだったか。もうちょっと(あお)ってみよう。


「ジャスティス仮面は危険なロボットとして排除しないといけませんね」信憑性0


「ロボットの排除の禁止を要求するナリ!」信憑性47


「参政権も人権も無いロボットがそんな要求するのはおかしいぞ」信憑性31


「ロボットに参政権も人権も無いのがおかしいナリ! なんとかするナリ!」信憑性52


 なんかもう完全にこっちの主張と同じになってるぞ。


「このインクレディブルプランナー加藤にアサインいただければ、人間とロボットのウィンウィンなシナジーが可能なイノベーティブでエポックメイキングなサジェスチョンをアウトソーシングします」信憑性9


「役立たずは黙ってるナリ!」信憑性33


 ついにロボットが人間の上に立つことを認め始めた。そろそろ止めたほうがいいね。


「ピアロイドの立場になったら現状がいかにおかしいか、わかっていただけたのではないでしょうか。ピアロイドも私たちと同じように幸せを追求する権利があっていいと思います。自分の望む仕事に就いて、好きになった人同士で結婚する。そうして夫婦になったピアロイドがお金をためて、自分の子供としてピアロイドを買う。そんな暮らしができるように、人権、参政権、結婚する権利を認めるべきですし、所有権の代わりに親権を持つことができてよいと思います」信憑性82


「全面的に賛成するナリ!」信憑性59


「そして、人間とピアロイドの間に上下関係は無いようにしたいです。これは人間同士でも同じことで、私は楽園の役員という立場にいますが、決して皆さんより立場が上だとは思いたくありません。全従業員やお客様とも対等の立場でこれからも接していきます」信憑性76


 客席から大きな拍手が起きた。ピアロイドに人間と同じ権利を与えて人間と対等に接するということを受け入れてもらえたんだ。


「みんな平等な立場にしたいのはあたしも同じなのー。あたしは社長だからといって偉くはないのー。合同会社楽園が『株式会社楽園』じゃないのはねー、株主という特権階級を作りたくなかったからなのー。株主がこの街の大事なことを決める権利を持っていたらねー、それは貴族社会なのー」信憑性78


「私も威張りたくはないぞ」信憑性91


「みんなのそういうトコ、なんか好きだしー。役員もロボットも会場にいるみんなも、みんな友達ってことでいんじゃね?」信憑性73


 歓声が起きた。


「ウェーイ! もっと盛り上がっていくしー!」信憑性50


 ミラさんが音頭を取って歓声をさらに盛り上げた。討論会はパーティーやコンサートじゃないよ。


「ロボットも人間も一緒の仲間ナリ!」信憑性66


「あのねー、ジャスティス仮面がロボットだって話はねー、嘘なのー」信憑性100


「なに――っ!! 嘘だったナリか!!」信憑性97


 会場は爆笑に包まれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ