役員選挙 3
「では最初の討論に移りますの。合同会社楽園が立ち上がって6年半、ソーラーキャッスルに住み始めて1年8か月ですの。その間に皆さんがどのような実績を残してきたか語っていただきたいですの。題して『楽園とソーラーキャッスルの思い出』、どうぞですの」信憑性92
「わたくしたちがプロトキャッスルに引っ越した日、皆さんでバーベキューを楽しみましたわね」信憑性95
「いや小学校の作文じゃないんだから、ほんとに思い出だけ発表してもしょうがないでしょ。実績を言わないと」信憑性78
「お肉を12串いただきましてよ」信憑性86
「食べた実績じゃなくて、私たちがどれだけソーラーキャッスルの実現に貢献したかの実績!」信憑性82
「バーベキューのせいで火災報知器が作動して水浸しになったぞ」信憑性93
「そういう失敗の実績は言わなくていいです! いいですか、私の実績は、まずこのソーラーキャッスルの構想をしました。ナノとマホと一緒に楽園の立ち上げに奮闘しつつ、魔力検知回路や知識データなど、今のロボットの基礎になる技術を研究開発していきました。さらに、ピコパイプ、トラス床、螺旋エスカレーター、動く歩道といった私の成果物を用いてソーラーキャッスルの基本設計を行いました。モーリタニアに来てからは、ソーラーキャッスルやプロトキャッスルの全体の設計を行い、各施設の配置や細かい図面のチェックまでトータルで関わり、さらにスキルレベルなどの評価システムも私が手がけました」信憑性35
「えーっ!! なんで本当のことしか言ってないのにまたこんなに信憑性が低くなるのよ!」信憑性30
「ピコは最初はソーラーキャッスルを妄想しただけでねー、実現するとは思ってなかったのー。あたしが会社を立ち上げてもねー、ピコは本気じゃなかったのー。ピコパイプとか螺旋エスカレーターとかはアイデアを出しただけで自分は研究しなかったのー。ソーラーキャッスルの全体設計をしたのは委員長でねー、ピコは方針を決めただけなのー」信憑性74
「委員長がやったのはつじつま合わせであって、大枠を決めたのは私だよ! アイデアを出して終わりじゃなくて、開発者と何度もやりとりして頑張ったよ!」信憑性55
「それじゃ自分の成果物とは言えないしー」信憑性84
「全部自分の成果とは言わないけど、方向性を決めたのは私だと言いたい。そう言うミラさんの実績は?」信憑性78
「あーし? あーしの仕事はねー、いろんなこと企画してー、計画が動き出すまでのお膳立てをする事だしー。フードコートの『週替わり世界の料理フェア』を考えたのもあーしだしー、在庫の消費期限からフードコートのメニューを提案するシステムもあーしがアイデアから仕組みまで考えたしー」信憑性89
「『焼き鳥フォンデュ』は楽しかったですわ。あれもミラさんでして?」信憑性62
「それもあーしだしー。たまにはぶっ飛んだ企画も面白いっしょ。あーしが入社する前にはメニューをルーレットで注文するなんてバカな企画があってー、フカヒレ野菜炒めオレンジラーメンを食べたかわいそうな客がいたらしいしー」信憑性80
「それ食べたの私だよ!」信憑性97
ここでそんなハイスコアをたたき出さなくていいよ!
それからナノ、マホ、フィオさん、筧さんもそれぞれ自分の実績を語った。みんな自分の成果を盛ることなく、そこそこの信憑性を得ている。
「皆さん凄すぎますぅ。尊敬しちゃいますぅ」信憑性18
べつに尊敬してないのならそんな事言わなきゃいいのに。
「貴様らの実績は全てまやかしナリ! アイデアや技術はスパイが盗んできたものナリ! 貴様らは住民を洗脳して支配し、世界征服をする陰謀を巡らせていたナリ!」信憑性0
「ついに出たぞ、信憑性0」信憑性100
「こんな信憑性に意味は無いナリ! 貴様らが開発したシステムナリ、貴様らの都合のいい数字が出るに決まってるナリ!」信憑性5
「さっきから私の信憑性が低いんですけど」信憑性88
「ピコさんかわいそうですぅ」信憑性12
心にも無い事なら言わないでよ、傷つくから!
「もし奇跡が起きてマリアが当選したらぁ、マリアなんかが皆さんの中に入っていけるかドキドキですぅ。皆さん仲はよろしいんですかぁ?」信憑性8
「仲はいいですよ。ナノもマホもフィオさんも、大好きな仲間です」信憑性21
「信憑性が低いのー。大好きなんて思ってないって事なのー」信憑性77
このシステム、気を使うと裏目に出る! なんかもうやだ!
「ピコさんはいつも私たちに怒ってらっしゃいましてよ」信憑性55
「それはツッコミだよ! 怒ってないから!」信憑性84
「ピコはよく嘘をつくのー。この前ウォータースライダーを裸で滑った時もねー、『大事故を防ぐためにお湯を流していてうっかり流された』なんて言ってたのー。ほんとはお風呂で波を起こして遊んでたら壁が壊れたのー」信憑性82
今それをばらすかー! しかも信憑性が高い!
「波を起こしたのはマホだよ!」信憑性89
「あのときは恥ずかしい目に遭わせてしまい申し訳ありませんでしたわ」信憑性86
「ナノだって、一人の時は居酒屋でビール飲んでるのを隠してたよね」信憑性87
「あの日はたまたまなのー! あたしがビールを飲むことなんてめったにないのー!」信憑性13
ナノは顔を真っ赤にしている。童女キャラのイメージを崩したくないんだろうけど、そのイメージは年齢的にもう限界だよ。ナノが怒って何か言おうとしたとき、筧さんがさえぎった。
「まあまあ。二人とも、このままだとお互いにイメージを下げてしまいますよ」信憑性84
確かにそうだ。つい感情的になってしまったけど、これだとお互いに損してしまう。
「筧さんはピコさんのことをどう思ってるんですかぁ?」信憑性93
筧さんはびっくりして取り乱した。
「えっ!! ……あ……その、……鴨川さんのことは……とても頼れる仲間だと、思っています」信憑性29
何だろう、様子がおかしいし信憑性も低い。
「あら、信憑性が低いですわね。ピコさんのこと、お嫌いなのかしら」信憑性40
そういうことを他人が掘り下げるのはやめてほしい。
「いえ、好きですよ。……一緒に仕事をする仲間として」信憑性18
ほら、こういうことになる。私から直接言おう。
「私は筧さんのことを結構好意的に思ってたんですけど、筧さんは私のことを内心は嫌ってたんですか?」信憑性75
「そんなことないって!」信憑性92
「『好き』というのは本当ですけどぉ、『仲間として』というのが嘘ってことですかぁ?」信憑性80
筧さんは顔を真っ赤にした。
「鴨川さん! あなたが好きです! 女性として!」信憑性95
「ええっ!!」
どうしよう! さっきは筧さんのことを好意的に思ってるって言ったけど、付き合いたいとかいった発想は無かった。断る? いやこういうときにすぐ拒否するのは私の悪い癖だ。もっと恋愛に積極的にならなきゃって、前に決めたよね。でもその相手が筧さん? そんなに頼りになるわけでもないし、見た目も普通。恋愛するならもっと素敵な人としたほうが……ってそんな人いる? 筧さんなら、少なくとも仕事についての話なら私と同レベルで話せる。それより上の男性を求めることが現実的だろうか?
そんなことを考えていたら、私に視線が集中しているのに気付いた。候補者たちも観客たちも、みんな私をじっと見ている。
「え……あの……アキコさん、議事を進行して」信憑性30
「今は筧さんの告白をピコさんが受け入れるのか拒否するのかという判断を待っているところですの。これは皆さんが今最も関心を持っている最重要議題ですの、先送りはできませんの」信憑性69
何と言ってごまかそう? いや信憑性チェッカーがあるからごまかしは通用しない。率直な話をしよう。
「あの、筧さんのことを恋愛対象として見たことは今まで無くて、その、急にこんな事言われて戸惑ってます」信憑性84
「急すぎたね、ごめん、こんな事言って」信憑性53
「いえいえ。なので筧さんを恋愛対象として見たときにどう感じるかはまだわからない、というのが正直なところです」信憑性81
「わかった。返事はしなくていいよ。この後の二人の距離感をどうするかは、その場その場で考えていこう」信憑性72
その通りだ。付き合うかどうかは今決められない。色々試してみなきゃわからない。
「はい。そうしていきましょう」信憑性85
客席から拍手が起きた。私と筧さんを祝福してるようだけど、これって討論会だよね?




