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自殺

作者: 葉月

電車に揺られながら考える。どうやって消えよう。切符を買うためのお金は行き分しか持っていない。帰りのお金は必要ない。

 私は佐藤美琴、中1だ。私は自分が大嫌い。特に名前。親がつけてくれたんだから文句なんか言っちゃいけないことくらいわかってる。でももっとカッコいい名前が良かったな。母は「可愛い」が大好きらしくて、私の服も可愛い物が多い。正直に言うと着たくない。動きにくくて、ふわふわしたスカートなんかよりも、動きやくて、カッコいいズボンの方がよっぽどいいと思う。この名前に縛られたまま生きていきたくない。でも、改名なんかしたら、絶対に親に色々言われてしまう。それに、絶対に悲しむ。だから、できない。人が悲しむのはもう見たくない。だから消えてしまいたい。消えたら悲しむ人はいるかもしれない。でも私は悲しむところを見ないで済むんだ。無責任なんて言われてもいい。所詮人間なんて自分が一番大切なんだから。そうだ、あの昔父がいた頃に三人で行った海に行こう。あそこなら誰にも見つからずに消えられる。今は冬だ。海になんか来る人は少ない。しかもこんな田舎の海に来る人なんていないだろう。そんな思いつきの考えで行きの電車のお金だけ持って飛び出してきた。でも、田舎ということが裏目に出たらしい。意外と景色を見にきている人がたくさんいた。これでは、誰にも見つからずに消えられない。どうしよう。消えるならこの海が最善だと思って来たから、ここからもうどこにも行くお金はない。一番上手く消える方法は何?誰か教えて。そんなことに答えてくれる人なんていないよね。自分で言っておいて、すぐに諦めた。だって私には心の奥底を話せる相手なんていない。いつも、誰に対しても、作り笑顔で誤魔化すんだ。そうでもしないと、誰も私と話してくれない。悩みなんて相談してもウザいと思われるだけ。だからせめて何も思われない、目立たなくて、害のない人間でいるんだ。でも相談せずにいると心の中がぐちゃぐちゃになってよく分からなくなってきてしまった。自分が一番自分をわかってるはずなのに分からない。なら、誰もわかるわけない。個性がないことを望んだはずなのに個性がなくなるとそれが嫌になってしまう。きっと人間なんてそんなふうに欲が満たされると、また新しいよくが出て来てしまうんだ。もしかしたら、それは私だけかもしれないけど。だとしたら、さらに私は消えた方がいいだろう。そうだ、今は昼だから人が多いのかもしれない。夜になるまで待ってみよう。人がいなくなるのを待っていると、意外にも夕方には人がいなくなった。ここは夕方の夕日が一番綺麗なのに。そうだ、人がいなくて、綺麗ならむしろ都合がいいじゃないか。私がこの海を選んだのは家族の思い出の場所だから。そういえば前にここに来た時も夕日を見たじゃないか。楽しかった思い出と共に消えてしまおう。もう母は可愛くない私には興味ないのだから。父も二年前に事故で死に、祖父母も遠くにいるため頼ることはできない。楽しかったことを思い出せる限り、思い出しながら私は冬の冷たい海に飛び込んだ。冷たい、苦しい、でもこれで消えられるんだ。冷たい海の中は夕日に照らされているからか暗くは無かった。妙に心地よい。さようなら。無責任でわがままな私だけど、私なりに考えた結果が自ら消えること。辛いわけでも、親に愛されていないわけでも、クラスでいじめられているわけでもない。ただ自分が嫌いなだけなんだ。意識が薄れていく。もう何も考えられない。ごめんね、ありがとうみんな。みんな大好きだよ。


 

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