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第6話 ベルナル公爵家訪問

 昨夜は頭の中がグルグルしてなかなか眠れなかった。眠ったのはとっくに日付が変わっていた頃だろう。今朝は頭がボーッとするがボヤッとしてはいられない。私は昨日馬車に積み込めれていた新しいエプロンをつけ気合いを入れ直した。


ちょっと気まずい感じで昨日はルーカス様たちと別れたけれど、朝食のときはいつものルーカス様だった。


「おはようローラ!今日は違うエプロンにしたんだね。それも似合っていてかわいいよ。オーダーメイドしたかいがあるね。さあ今日からスタートだ!頑張ろうね。ローラよろしくね!」

ルーカス様は笑顔で食後のコーヒーを飲みながら笑顔で話した。


何だか拍子抜けしてしまった。でも、いつもと同じでよかった!さり気なく褒められた気もするけど。よし!私も頑張らなくちゃ!

「ルーカス様、昨日は冗談が過ぎてごめんなさい。今日から頑張りましょうね!」

お互い微笑み合って仲直り?だ。



予定通りに馬車は宿を出発した。

ベルナル公爵家は王都寄りなので、馬車で1時間ほどだ。

チョコレイの街から王都へ続く道なので道は整備されており揺れも少なく快適だ。


「ルーカス様、この間いただいた手紙に書いてあった〈ハルト〉とはもしかして前世の名前なんですか?」


ルーカス様は嬉しそうに目を細めた。

「そうだよ!前世の名前なんだ。この世界で呼ばれるのは初めてだよ。なんだか新鮮だね!〈テシガワラ ハルト〉だよ。ローラの前世の名前は何て言うの?」


「ん〜、笑わないで聞いてくれる?」


「笑わないよ!」


「絶対に?」


「絶対に!」


私は無言でエプロンを外し、ルーカス様に身体を向け笑顔で言った。

「アメリです。キサラギ アメリ」


「えっ!本気で?アメリなの?」

ルーカス様は驚いている。そうだろう!この世界でルーカス様にしかわからない驚きだよね。


「前世の母がね、好きな女優さんの名前を付けたんだって。別に〈魔女っ子アメリ〉じゃないからね(笑)」

言っている私の方が笑ってしまった。


「そんなことってあるの!?ハハハ(笑)」

ルーカス様はついに笑い始めた。


よし!ウケた!エプロンをそそくさと付けた。


「やっぱり面白いよね。前世のアメリが、今じゃ〈魔女っ子アメリ〉だもの。でも、ルーカス様と一緒に笑い飛ばせてよかった」


「笑わないでと言ったのはずるいなぁ。笑わせる気満々だったくせに」


馬車の中は笑いに包まれた。もちろん、キョトンとしているノア様への解説はルーカス様がしてくれる。この時間がどうしょうもなく恥ずかしく感じるのは気の所為ではないはずだ。


昼食は公爵家のある街で評判のレストランに行った。

もちろんノア様がリサーチしてくれている。

名物料理を食べることも()()だからね!

私はそんなことを考えながらも美味しい鶏料理を頬張ったのだった。




――――――――



 ベルナル公爵家に馬車が到着した。

大勢の使用人たちに迎えられさっそく応接室に案内された。


応接室にはベルナル公爵と夫人が待っていた。

「殿下、ようこそいらっしゃいました」


ルーカス様も笑顔で答える。

「急な訪問で申し訳ない。ルーカス・リンガールだ。よろしく頼むよ」


「ご無沙汰しております。ローラ・ドットリーでございます。今回ルーカス様御一行の案内役を務めております。よろしくお願いいたします」


「殿下、こちらこそよろしくお願いします。ロバート・ベルナルでございます。ローラ嬢は以前にアンティークの購入で世話になったね。よろしく。

さて、殿下には最初に娘たちを紹介いたしたいと思います。さあ、入っておいで」


さっそく来たか。婚約者候補に押すつもりね!なんて思っていると……


ドアが開き、5歳ぐらいの小さな女の子が2人手を繋いで立っていた。


「アリス・ベルナルです」

「リリア・ベルナルです」

ペコリと可愛らしいお辞儀をした。


「この通りまだ幼い娘たちで婚約者候補には難しいことはわかっております。実は殿下がアンティークにご興味があるということをお聞きして、ぜひともお話したいと思いまして名乗りを上げた次第でございます」

ベルナル公爵はハハハと笑っていた。


そうだ!ベルナル公爵はアンティーク好きの公爵様でお子様は小さいのだった。

こちらも婚約者候補など余計なことを考えずにアンティークに触れることが出来てラッキー!ルーカス様と顔を見合わせてニヤリと笑った。


「公爵はローラ嬢のご実家の商会からもアンティークを購入したことがあるという事だったね。それも見せていただけるかな?」

王子様スマイルでルーカス様はご機嫌だ。


「もちろんです。まずは私の自慢の展示室へどうぞ!」

公爵様もルーカス様に負けずといい笑顔だった。


……


……



 かれこれ公爵家の展示室に4時間は居ただろうか。公爵様のアンティーク愛が止まらない。展示室に来てから収集したアンティーク品の説明や入手方法などを話している。ルーカス様は微笑を浮かべたまま頷いている。さすが王族、表情に色々出ないのは流石だ。


そして、ようやくドットリー商会から購入したという小箱が登場した。

「最後になりますが、これがリンガール王国のアンティーク小箱になります。素材が変わっておりまして、この国にはないギリの木から作られております。木目も美しく触り心地も良いのですよ。どうぞ殿下も御手に取ってみて下さい」

公爵がルーカス様に小箱を手渡した。


小箱を受け取るとルーカス様は表情は変わっていないが心なしか眼が開きキラキラしている。


もしかしてアタリ??


「うん。素晴らしい小箱だな。我が国で100年ほど前に作られたものだろう。今はギリの木は希少になっていて特別な許可がなければ伐採することが出来なくなっている。この小箱は大変貴重なものだ。これからも大事にしてくれ。さて、日も暮れて来たようだしそろころ宿へ帰るとしようか」


「殿下、我が家でぜひディナーを。ご宿泊も出来るようお部屋もご用意しております。ぜひ、ワインなど飲みながらアンティーク品のお話を」

ベルナル公爵はニコニコと上機嫌だ。


公爵様、これ以上アンティークについてまだ話したいことがあるのだろうか。ドットリー商会としてはいいお客様ではあるけど、そろそろ聞き疲れました。私は貼り付けた笑顔がもう取れそうになってます。


「いや、訪問する家の負担になるといけないので最初からどの家でも食事などはしないことに決めているんだ。あくまで旅行がてらなものでね。公爵のお気持ちだけ受け取っておくよ」

有無を言わさぬ王子様スマイルが炸裂して、私たちは無事公爵家を脱出することができた。



――――――――



 馬車は公爵家を出発し、宿に向かって走り始めた。


「疲れた〜!公爵様アンティーク好きすぎて大変だったね。ルーカス様はさすが王族よ!疲れていたのが表情には出ていなかったわ。そうそう、小箱をいただかなかったということはハズレたったの?」


「うん。今回はハズレだったよ。美しいものではあったけれど、ただの箱だね。ちょっとホッとしたようなガッカリしたような感じかな」

ルーカス様はちょっと困ったような表情で頷いた。


「1つ目から見つかるとは思っていないわ。この調子で頑張りましょう!でも、例えば探しものが見つかったらどうやってルーカス様の手元に戻るようにするの?今回の公爵様のようにアンティーク好きな方、もしかして手放さない事もあるかもしれないわ」

そんなことになったらどうしよう。娘の婚約と引き換えなんてことになったら!私はハッと口元を押えた。


「それは大丈夫。差し支えがない程度の事情を説明すれば返却してもらえるだろう。ローラがどんな妄想をしたか分からないけど、そんなことにはならないと思うよ。流石に他国の王族を脅すような貴族はいないだろ?王命が下って取りあげられる前に僕に恩を売ったほうが賢い」

ルーカス様はニヤッと笑った。


「そうですね。他国の王族とのパイプは社交界でも武器になりますからね」

ノア様もウンウン頷いている。


そうか。それならよかった〜。私は胸を撫で下ろした。

「ノア様、明日も訪問の予定はありますか?」


「はい。明日はチョコレイの街の侯爵様ですので、今日より移動がない分疲れが少ないかと。明日訪問するのはスピアーズ侯爵家です。ただ、侯爵家には例のアンナ様がおりますのでそちらの方は面倒にならないといいのですが」

ノア様が心配そうな顔をしている。


例のアンナ様とはなんだろう


「面倒なこととは、何か王都であったのですか?」


ルーカス様が渋い顔をしている。

「例の肉食獣だよ」


そういえばルーカス様は

〈夜会では令嬢たちがキラキラでゴテゴテしたドレス着てるし、何よりも目がギラギラしていて怖かったよ。あれは獲物を狙う肉食獣の目だね〉

なんて言っていたっけ。


「つまりアンナ様はキラキラでゴテゴテでギラギラだったという訳ね!」


「そういうことだよ」


たしか前に調べたときにアンナ様は婚約者が居なかったはず。この国では私達ぐらいの年齢で婚約者がいないのは珍しい。私みたいに婚約破棄されたパターンも無くないけど。



週末にまた更新します!

読んでいただきありがとうございます。

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